浅草十二階、心霊研究、映画「メトロポリス」、同性愛、山猫など多様なキーワードを手がかりに、二〇年代日本を「科学・幻想・文学」の視点から捉え直す気鋭の論考集。

せいぜい多角的視点でなどと言ってよしとしてきた従来の方法論に、この本の執筆者たちは一撃を喰らわせている。痛快である。
井上晴樹
(作家、ロボット・ウォッチャー)





吉田司雄(よしだ・もりお)
工学院大学。

奥山文幸(おくやま・ふみゆき)

熊本学園大学。

中沢弥(なかざわ・わたる)
湘南国際女子短期大学。

松中正子(まつなか・まさこ)
評論家。

會津信吾(あいづ・しんご)
評論家。

一柳廣孝(いちやなぎ・ひろたか)

横浜国立大学。

安田孝(やすだ・たかし)

東京都立大学。

 

 

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吉田司雄
奥山文幸
中沢弥
松中正子
會津信吾
一柳廣孝
安田孝

2002年12月

ISBN
4921146632

定価
(2800円+税)

A5判変形美麗函入
280頁



装丁は日本を代表するデザイナー、ミルキィ・イソベさん。電話すると、「みるきぃでぇす
(ハート)」とハスキー&セクシイボイス。そのミルキィさん渾身の豪華装丁。自信作とのこと。(内)


●「第37回造本装幀コンクール」
審査委員会奨励賞受賞





SFマガジン
(2003.4)

 アトムの誕生日を目前に控えて、ロボット関係の出版物が眼につくが、『妊娠するロボット』はそんな時流的出版物とは一線を画した重厚で濃厚な一冊だ。「1920年代の科学と幻想」という副題を持つ本書は、科学の隆盛とデザインの革命期にして社会体制の変動期でもあったこの年代を、多角的な視点から読み解く。本書は7人の著者による6篇の論考からなっているが、いずれも意外な事物・現象の関連性のなかから、これまでは見落とされていた20年代日本の未来性、ロボットの深い浸透ぶりを炙りだす魅力的な研究だ。

 吉田司雄「妊娠するロボット」は、たとえば芥川龍之介の「不安」とチャペックの「不安」の同時代性を指摘し、奥山文幸「アンドロイドは銀河鉄道の夢を見る」は、『注文の多い料理店』の山猫像の起源として、プリニウス『博物誌』から日本領有化の樺太庁博物館に実在した山猫の剥製にまで思いを巡らす。さらに中沢弥「帝都復興の花嫁たち」は、関東大震災後の浅草風俗を活写した川端康成のバックボーンを明らかにする。川端「人造人間讃」の背後に、女優ブリギッテ・ヘルムの存在があったとは……。松中正子&會津信吾は「メトロポリス伝説」で丹念な資料調査を一個のタペストリイに織りあげ、一柳廣孝「霊界からの声」は疑似科学の時代でもあった当時の、心霊学的科学主義を分析し尽くす。安田孝「女が女を愛するとき」は、谷崎文学を絡めながら、生科学や賛辞調整運動が与えた真理的な効果にまで論が進められるといった具合。全篇にSF的興奮が満ちている。

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