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<これまでタブー視されてきた
賢治論に、果敢にいどむ!>
臨床心理士の立場からカウンセリングの現場を踏まえ、賢治の生涯と作品を読み解く。世界がひらかれる瞬間にひらく「いのちの不思議」に打たれた著者畢生の宮沢賢治論。
<目次>
第一章 賢治の生涯
第二章 賢治とトシ
第三章 他者のまなざし
第四章 まことのさいわい
第五章 「やまなし」
―「いのち」がひらかれ、
息づき、育つまで―
第六章 「銀河鉄道の夜」
―「ほんとうの自分」を追い求めて―


白石秀人(しらいし・ひでと)
臨床心理士。横浜国立大学、同大学大学院修士課、中京大学大学院博士課程において、臨床心理学を学ぶ。その後、中京大学文学部助手、愛知みずほ大学専任講師を務めながら、心理相談室や学校のカウンセラーを兼務。2001年より、「白石心理オフィス」を開業。2002年1月、死去。
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師匠・安原顯さんから「好きな日本の作家」3人あげなさい、と、いわれたことがある。
宮沢賢治、夢野久作、中里介山の3人をあげた。安原さん、言下に、「みやざわけんじだ〜〜〜!?」といわれた。波長が合わないのだそうだ。
ぼくは逆に、とても波長が合う。たとえば、「フランドン農学校の豚」で、豚が前足をキクッと折るシーンを読むと、ああ、たしかに、豚が前足を折るときはキクッとやるよなあと感心してしまう。
ということで、わたくし、賢治大好き人間としては、興味津々でこの原稿を読み始めた。すると、多くのいわゆる<賢治本>と異なり、この著者は、賢治を遠くから眺めて評論するというよりも、賢治を、生き、走っている、という姿がくっきり眼に浮かんだ。だから、タイトルを『異次元夢旅行―宮沢賢治のリアルをはしる』とした。
著者の白石さんは、惜しくも、2002年1月、交通事故で亡くなられた。
(シャッチョー)


「神奈川新聞」
(2004.05.30)
―臨床心理学から宮沢賢治論―
副題に「宮沢賢治のリアルをはしる」とあるが、宮沢賢治文学の評論である。ただし、数多い賢治に関する本に加わる一冊として特異なのは、臨床心理学の立場から見ていることだ。
まず賢治の育った風土と時代を検討している。東北で貧困と飢餓におびえる土地柄だが、賢治は裕福な家で育った。しかしムラ社会として、居づらくなる環境もある。一方、近代化の波が岩手にも押し寄せ、賢治は農林学校で合理的科学精神を学んだ。このことは文学にどう反映したのか。
妹トシはスキャンダルの犠牲になって東京に出るが、兄の賢治に多大な影響を与えることになり、二人は兄弟以上の間柄になったのではないかと著者は見ている。
賢治童話の特徴の一つは“他者のまなざし”であり、動物が主人公の作品では、その動物になったように描き、その深い透明な明るさに触れ、生き返った人は多いという。
二作品を論評しているが、落葉高木の実を題名にする「やまなし」は川底の小蟹の兄弟の話。もう一つは「銀河鉄道の夜」。
著者は横浜国立大学、中京大学の大学院で学び、臨床心理学専攻。後に開業臨床心理士になるが交通事故死。本書は関係者が遺稿などを編集。
「北海道新聞」
(2004.04.18)
臨床心理士の立場から宮沢賢治研究を続けていた苫小牧出身の故白石秀人さんの遺稿集『異次元夢旅行―宮沢賢治のリアルをはしる』が出版された。父の幸男さんは「生まれ育った苫小牧の人の手に取ってもらえれば」と話している。
秀人さんは苫小牧東高から横浜国立大に進学。大学院で臨床心理学を学んだ後、中京大講師などを務めながら名古屋市近郊の事務所で心理相談などに応じていたが、2002年1月、交通事故で50歳で亡くなった。
出版準備は秀人さんの妻淑江さんの発案で進められ、中京大などの卒業生も協力した。
本は遺稿や市民講座での講義をテープに起こしたものを編集した。「賢治の生涯」「銀河鉄道の夜 ほんとうの自分を追い求めて」など6章で構成。カウンセリングの経験などを踏まえ、賢治の内面や作品に込めたメッセージを分析している。
幸男さんは「小さいころから本や星が好きな、おとなしい子だった。自然豊かな少年時代の苫小牧の風土と賢治の精神風土とがつながっているのかもしれない。将来、賢治の研究本を出版したいと話していた秀人を思い出しながら、何度も読み返している」という。
「静岡新聞」臨床心理士が見た賢治
(2004.04.11)
「宮沢賢治のリアルをはしる」という副題が付き、臨床心理士という立場から賢治の生涯と作品を感動的に解説している。賢治が宮沢家の浄土真宗を捨て、日蓮宗の一派国柱会へ入信した道程を1つ違いの妹トシとの関係に見ようとする。トシへの強い愛情を抑えるため、禁欲に対する姿勢を明確にする国柱会の信仰に求めた。
トシが亡くなった翌年に書かれた童話「フランドン農学校の豚」は人間の好みに合った豚肉にされ、殺される豚の気持ちを描く。ベジタリアンを選んだ賢治の心情などを紹介していく。
著者は大学講師を辞して、開業臨床心理士として活動を始めた矢先に交通事故で不慮の死を遂げる。30代後半から取り組んできた賢治研究をまとめた本書が遺稿集となった。享年50歳。
「苫小牧民報」
(2004.03.29)
苫小牧出身で宮沢賢治研究に情熱を注いだ故白石秀人さんの遺稿が横浜の出版社から刊行された。『異次元夢旅行―宮沢賢治のリアルをはしる』。白石さんは名古屋で大学講師と学校カウンセリングを務める傍ら、臨床心理士の立場から賢治の素顔に迫る研究を行い、賢治ワールドを現代によみがえらせた。
A5判、220頁の長編は六章で構成。第一章は賢治(1896〜1933)の生涯を、第二章以降は賢治を取り巻く人間模様と作品研究を取り上げた。また、第二〜四章は名古屋で白石さんが講師を担当した市民講座の講義録音を文章化、他章は遺稿を充てた。
賢治の人間関係をめぐっては多くの研究者からさまざまな研究がなされてきたが、白石さんは心理学的視点から賢治の内面にアプローチ、24歳で他界した才媛の妹トシとの関係を重視した。兄妹愛を超えて「二人の間に生まれたエロスを、個を超えた世界へ昇華し詠いあげようとしたのではないか」と分析。トシに対する思いが「銀河鉄道の夜」など不朽の名作童話を生み出す精神的土壌になったと見る。さらに臨床心理士としての立場から最愛の妹の死以後の賢治の生き方を「引きこもり」と対比させ、今日的問題として描いているのも興味深い。
白石さんは苫小牧東高校から横浜国立大に進み、同大大学院修士課程、中京大大学院博士課程を修了。中京大助手を経て愛知みずほ大専任講師に。しかし、2002年1月、交通事故で50歳で亡くなった。
妻の淑江さんと苫小牧在住の父親幸男さんが奔走。遺稿の編集に携わった。志半ばで世を去った長男の労作を一冊の結晶にした幸男さんは感慨深そう。「子供のころは野原で遊んで育ちました。少年時代を過ごした苫小牧の風土が賢治の精神世界とつながっていたのかもしれません」と語る。
「産経新聞」
(2003.03.29)
副題は「宮沢賢治のリアルをはしる」。臨床心理士であった著者(故人)が、カウンセリングの経験を踏まえながら、賢治の生涯と作品をリアルに読み解こうとする。
一般的には聖人君子的なイメージに覆われている賢治だが、一歳違いの妹トシとの性愛関係におののきその悩みを克服するために、家の宗教(浄土真宗)ではなく、戒律の厳しさで知られる日蓮宗の一派国柱会に入信しているのだ。
「妹トシと一体になりたいという激しい欲求があるにもかかわらず、自分の力では、どうすることもできない」賢治が、国柱会の幹部に諭されて、童話を書くことで「トシとの間に生まれたエロスを、個を超えた世界へ昇華し詠いあげようとしたのではないか」という著者の分析は新鮮だ。
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