世紀転換期文学の思想空間
明治文壇のニーチェ熱と宗教の季節
- 清松大(著)/2024年3月
- 4000円(本体)/四六判上製314頁
- 装丁:矢萩多聞
急速な近代化がもたらす矛盾やひずみが表面化し、近代日本宗教学の確立期でもあった明治30年代(1900年前後)。過渡期の思想的混迷に焦点を当て、「惑乱」に揺れる文学空間の実相を多様な角度から照射する。外来思想の移入と受容、宗教という視点から世紀転換期の文学空間を見渡す。
(ISBN 9784861109560)
目次|contents
序章
第一部 外来思想の移入と文学空間―ニーチェ受容を視座として
第一章 戯画化されるニーチェ―「滑稽」と「諷刺」の模倣
第二章 「衒学」をめぐる帝大閥と早稲田派の応酬
第三章 〈劇薬〉としての外来思想と宗教―ニーチェイズムとモルモン教の奇妙な結合
第二部 〈宗教〉の季節と文学―せめぎあう信仰と懐疑
第四章 明治期ハンセン病文学と「信心」のゆくえ
第五章 宗教の「理想」と勧善懲悪―中村春雨のキリスト教小説を中心に
第六章 「無信仰の文壇」からの(再)出発―中江兆民『続一年有半』と「宗教」のロマン化
第三部 明治・大正の時代精神と永井荷風
第七章 「地獄の花」の同時代受容とニーチェ熱
第八章 錯綜する神秘主義と自然主義―洋行期荷風の音楽論生成をめぐって
第九章 仮構される日露戦後空間―「父の恩」と〈民衆〉の問題系
終章
初出一覧
あとがき
著者|Author
清松大 (きよまつ・ひろし)
1988年福岡県生まれ。
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程所定単位取得退学。博士(文学)。
学習院高等科・慶應義塾大学文学部非常勤講師を経て、2021年4月より宮崎産業経営大学法学部講師。
共著に、『『文藝首都』——公器としての同人誌』(小平麻衣子編、翰林書房、2020年)、『大沼枕山と永井荷風『下谷叢話』——新視点・新資料から考える幕末明治期の漢詩と近代』(合山林太郎編、汲古書院、2023年)など。
論文に、「〈従軍記〉の拡散と変容——戦時下メディアにおける池田さぶろの漫画作品」(『跨境 日本語文学研究』第6号、2018年8月)、「〈癩文学〉の大衆化と科学——北條民雄神話の形成から小川正子『小島の春』へ」(『社会文学』第55号、2022年3月)など。