信仰の美學

  • 阿部仲麻呂/2005年2月
  • 9500円(本体)/A5判上製・710頁

「美」を手がかりにした新しい福音理解。カトリック信仰と西田哲学を軸に古今東西の思想を読み解き、西欧的理性主義を超えた「日本的霊性の神学」構築を試みる。
日本図書館協会選定図書
(ISBN 4861100283)

推薦の言葉

カトリック司祭であり、若手神学者である阿部仲麻呂師のエッセンスを凝縮した膨大な論集である。玉手箱のような多岐にわたる論説の数々は、著者の関心の広さを顕している。しかし方向性ははっきりしている。大和回帰である。阿部師による日本の神学の展開に注目している。
岩島忠彦(上智大学神学部教授)
著者は日本の文化に深い愛を抱く研究者にして、西欧精神の中心的伝統であるカトリックの司祭。この若き神学者の瞑想から生まれた珠玉の文章が、はじめて一冊にまとめられたことを心から歓迎したい。
渡部昇一(評論家)
序文―小野寺功
日常的な霊性の探究と司牧と研究の一致をめざし、あらゆる現実の矛盾に向きあい、誠実に歩みを進める阿部神父の「いのち」が反映している。

目次|indexs

第一部 花―日本文化の創造性
エッセイ1・おもい
ⅰ 和歌・能・茶道―ひとすじの日本性
ⅱ あはれ
ⅲ 心の底のやまとたましひ―阿倍仲麻呂論
ⅳ 夢幻的交流―空あるいは縁の世界
ⅴ 花の神学あるいは日本の生活美とキリスト教霊性―美・花・光・夢
エッセイ2・えにし
ⅰ 永遠のいのち
ⅱ 一期一会の味わい
ⅲ 松尾芭蕉の旅
ⅳ 十四世紀という時代―エックハルトと世阿弥
ⅴ キリスト者と陰陽道
ⅵ 日本人の修行観―道
ⅶ 道元の修行観とキリスト教
エッセイ3・ひびき
ⅰ 創造的に生きる
ⅱ 藝術創作について
ⅲ 藝術と真理―解釈学的に
ⅳ 藝術における逆説について
論文1・認識の共通基盤―神道・仏教・キリスト教の響存背景(life-context)
ⅰ アニミズムの論理―東北的アニミズム神学の構築に向けて
ⅱ 「美」の可能性―藝術理解・修行観洞察・諸宗教対話
ⅲ 神学と哲学の根源から思索する
ⅳ 本覚思想のキリスト教的適応―『大乗起信論』を手がかりにして
ⅴ 東西霊性交流の架橋―ホアン・マシア『大乗起信論』スペイン語訳
ⅵ 夢幻能の「救い」―世阿弥の「花」を手がかりにした解釈学的美学の試み
ⅶ 『十牛図』のキリスト教的可能性
第二部 風―神学的ネットワークと神秘霊性
エッセイ4・つながり
ⅰ 多様なものがひとつに活かされるために
ⅱ いのちのつながり―宇多田ヒカルさんの思いから
ⅲ ネオ・コスモポリタニズム
ⅳ 「インターネット神学」へ向けて
ⅴ ドビュッシー・ジョビン・サカモト
ⅵ 組織と運動
ⅶ 神が呼び集めてくださる
エッセイ5・まなざし
ⅰ アッシジ
ⅱ ドイツ神秘霊性―マイスター・エックハルトの思想を中心にして
ⅲ シエナの聖カタリナ
ⅳ 聖イグナチオ・デ・ロヨラについて
ⅴ エディット・シュタインとの出会い
ⅵ 回勅『信仰と理性』の成立背景
ⅶ 関係性と相互の歩み寄り―マルティン・ブーバーの思想
論文2・エックハルトの思想―のびやかないのちの躍動
ⅰ かたちのあらわれ
ⅱ 擬ディオニュシオス『神秘神学』における神理解
ⅲ エックハルトの「離脱」
ⅳ エックハルトにおける神と人間の出会い
第三部 祈―現代の神学をめぐって
エッセイ6・こころざし
ⅰ 無神論について
ⅱ 『カトリック教会のカテキズム』について/信仰宣言
ⅲ 三位一体の神
エッセイ7・たまゆら…
ⅰ 「諸宗教者の集い」に参加して
ⅱ 「聖霊」における諸宗教者の共歩―万物の根源に向かって
ⅲ 主イエスへの祈り―距離と共生
ⅳ ユダヤ教とキリスト教の対話―イエスとパウロの選民意識
ⅴ 秘跡論序説
ⅵ 「いのち」の尊さ―回勅『いのちの福音』にもとづいて
ⅶ マリア/おはよう!
論文3・美しき現代哲学―京都学派哲学とキリスト教の深まり
ⅰ 科学と信仰の「根本場」―柳瀬睦男『現代物理学と新しい世界像』に即して
ⅱ 知られざるキリスト者―九鬼周造
ⅲ 逢坂元吉郎の思想
ⅳ 小野寺功の思想をめぐって(Ⅰ)―『絶対無と神 京都学派の哲学』
ⅴ 小野寺功の思想をめぐって(Ⅱ)―『聖霊の神学』
ⅵ 「良心」と「誠」をめぐって―竹内修一『良心と人格』
ⅶ 基礎神学の実用的な俯瞰図―ジェラルド・オコリンズ『基礎神学の復権』
ⅷ 美の神学のかなたに
ⅸ 日本近代哲学の神学的意義―西田幾多郎「逆対応の論理」の構造と可能性
第四部 光―まことのひらけ
エッセイ8・ゆるしの風光―つつまれるやすらぎ
ⅰ ゆるされた喜び
ⅱ 聖霊降臨の日に
ⅲ 「ゆるしの秘跡」の現場で
ⅳ 「ゆるしの秘跡」について
ⅴ 聖霊論的「ゆるし」理解
ⅵ 聖母マリアについて
ⅶ 嫉妬と信頼
ⅷ あわれみの心
ⅸ 主の思い
ⅹ 神の視点と人間の視点
ⅹⅰ 復活について
ⅹⅱ 福音のひびき
あとがき

著者|author

阿部仲麻呂(あべ・なかまろ)
1968年生まれ。上智大学文学部哲学科および神学部神学科を卒業。同大学大学院神学研究科博士前期課程を経てイタリアへ留学。教皇庁立グレゴリアン大学大学院神学部基礎神学科修士課程修了。上智大学大学院神学研究科博士後期課程在籍後、現在も博士論文を執筆中。カトリック司祭。
主要著訳書に、上智大学新カトリック大事典編纂委員会編『新カトリック大事典』(研究社)、レオナルド・ボフ「解放の神学とエコロジー」(『神学ダイジェスト』第81号)ほか多数。

担当編集者から

ヨーロッパにおける思考様式は、三段論法的に、また弁証法的に一段一段、階段を積み上げ論理を展開していくやり方が長く支配的だった。ソクラテスにはじまりデカルトを経てカント、ヘーゲルに至る主流の歴史である。
これに異を唱えたニーチェは、断章形式(アフォリズム)という、論理を「展開しない」方法を構想し、思考の地殻変動を促した。
現代に生きる思想の本として、『信仰の美学』は後者を極限まで追求する。
700頁超の本文(束50ミリ!)で扱われるのは、西田・京都学派哲学と南方熊楠とエックハルトと坂本龍一と宇多田ヒカルとアッシジのフランチェスコとマルチン・ブーバーとイヴァン・イリイチと世阿弥と大乗仏教と阿部清明と…(まだまだある)。
ウタダとエックハルトは相当アバンギャルドな取り合わせだが、ともかく、これらを縦横に横断し、導き出そうとするのは一点、「日本文化とキリスト教」の接触点。
若きカトリック界の俊英の挑戦をぜひ受け止めていただきたい![-内藤-]

 

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