ナショナリズムと宗教

現代インドのヒンドゥー・ナショナリズム運動

  • 中島岳志/2005年8月
  • 3619円(本体)/四六判上製・384頁

ナショナリストとは誰か? インド国内メディアでさえ取材の難しい過激な宗教ナショナリズム運動の内部深く入り、その活動実態と理念を明らかにする。『中村屋のボース』で話題の著者による新しい民族誌!
第一回南アジア学会賞受賞
日本図書館協会選定図書
(ISBN 4861100488)

目次|indexs

はじめに
第一章 公共圏・ナショナリズム・宗教
はじめに
第一節 公共圏と宗教
世俗化パラダイムの脱構築/公共圏における善と正義/公共圏とサバルタン
第二節 ナショナリズムと宗教
近代主義的ナショナリズム論/「宗教ナショナリズム」論/ナショナリズム運動と主体
第二章 ヒンドゥー・ナショナリズムの歴史
はじめに
第一節 ヒンドゥーの近代
「ヒンドゥー」の近代的客体化と植民地支配/インド独立運動のなかのヒンドゥー・ナショナリズム/ポスト植民地社会としての現代インド
第二節 ヒンドゥー・ナショナリズムの台頭
インディラ・ガンディー政権と国民統合(一九八〇―一九八四)/ラジーヴ・ガンディー政権のポピュリズムと政治腐敗(一九八四―一九八九)/ジャナタ・ダル政権とアイデンティティ・ポリティクス(一九八九―一九九一)/ラオ政権から統一戦線政権へ(一九九一―一九九八)/BJP政権の成立(一九九八―二〇〇四)
第三章 ヒンドゥー・ナショナリズム運動の組織と理念
はじめに
第一節 ヒンドゥー・ナショナリズム運動の組織
RSSの組織形態/サング・パリワール
第二節 ヒンドゥー・ナショナリストの理念
ヒンドゥーとは誰か?/有機体的国家としての「ヒンドゥー・ラーシュトラ」/「真のセキュラリズム」論/サンスクリット語による国民統合/カーストとトライブ
第四章 身体のポリティクス
はじめに
第一節 シャーカー
シャーカーの活動内容/国民規範としてのダルマ
第二節 国民的身体の形成
身体の客体化と自己統御/時間・空間・制服/整列・行進・スポーツ・ヨーガ
第三節 現場リーダーによる表象
神話の流用/母なる大地と国民国家の領土
第四節 参加者の主体
ニューデリーにおける四つの事例/上層・中間層のシャーカー/下層民のシャーカー
第五章 サバルタン的公共性とヒンドゥー・ナショナリズム
はじめに
第一節 社会奉仕活動と国民統合
セワー・バーラティの活動概要/セワー・バーラティの理念
第二節 スラム街におけるヒンドゥー・ナショナリストの活動
ニューデリーK町のスラム街/セワー・バーラティの教育活動/ダルマに生きる
第三節 民衆のエージェンシーとヒンドゥー・ナショナリズム
ヒンドゥー・ナショナリズムを飼い馴らす/共鳴するダルマ/ヒンドゥー復興とヒンドゥー・ナショナリズムの狭間
第六章 ヒンドゥー・ナショナリズムと暴力
はじめに
第一節 バジュラング・ダル
構成員/シャクティとバクティ
第二節 政治集会・デモ・ヤートラー
事例の概要/主催者の意図、参加者の主体
第三節 主体・逸脱・暴力
パフォーマンスのアリーナ/暴力とレジティマシー
おわりに
参考文献

著者|author

中島岳志(なかじま・たけし)
1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学(ヒンディー語専攻)卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。学術博士(地域研究)。博士論文で第三回アジア太平洋研究賞受賞。京都大学人文科学研究所研修員、日本学術振興会特別研究員。著書に『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』(白水社)、『ヒンドゥー・ナショナリズム 印パ緊張の背景』(中公新書ラクレ)。

担当編集者から

骨太なナショナリズム研究書。基になった論文は第三回アジア太平洋研究賞を受賞している。だが、単なる学術書に止まらないのは、中島氏がインドの人びとと真正面から対峙してきたからだろう。校正校閲を通じ、そのことが伝わってくる。
ブックデザインは矢萩多聞氏。各章トビラ裏に写真をふんだんに使い、読みやすい組を考えてくれた。装丁にはヒンドゥー・ナショナリズムに参加する民衆の渇望感、不安を象徴する一枚を。
『中村屋のボース』と並び、間違いなく著者の主著になるであろう一冊。[-長田-]

 

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