刺青墨譜

なぜ刺青と生きるか

  • 斎藤卓志/2005年10月
  • 2800円(本体)/四六判上製・296頁

刺青に魅せられた著者が、聞き書きにより刺青の存在論的意義を明らかにする。刺青を入れている者、彫師へのインタビューは圧巻。刺青の文化史的・社会的背景をも浮き彫りにする。写真多数掲載。谷川健一氏、推薦。
(ISBN 4861100534)

推薦

刺青の現場からの生まの声を集約し、刺青の体験者の苦痛とよろこびは、殉教者の法悦境を思わせるものがあることを訴えるユニークな文化史論集。(谷川健一/民俗学者)

目次|indexs

序 刺青の民俗史
第一章 欲望する人間
初めてのタトゥー/彫ることへの好奇心/派手な人はやらない/アートになった刺青/見る、見せる/なぜ、今「刺青」なのか
第二章 刺青の現場
背中の刺青/皮膚の下の声/ヘビの出ているひと/刺青が大好き/花観音
第三章 刺青のかたち
刺青は点からできている/メカニズムは不明/彫場で音を聞く/イカ墨も墨か/彫師も迷う「刺青」と「タトゥー」/タトゥーサミット/薄墨ぼかしの発見/色と筋/浮世絵との関係/墨刑とは何か/関東と関西の違い/刺青の標本/ほんものの凄み/ヤクザの刺青/彫師への信頼感/構図の難題/刺青道具屋/谷崎潤一郎から金原ひとみまで/リメイク
第四章 刺青文化を探る
顔の刺青/柳田国男の見た針突/奄美・沖縄の入墨「針突」/島唄の中の針突/アイヌの入墨「パシュ」/川並と仕事師の話
第五章 彫師の「場」
文明開化と刺青/二足の草鞋/京都御幸町のタトゥーショップ/彫師から見た刺青/「彫場」から──三代目彫よし
第六章 内なる世界
痛みより魅力/オブセッション/拠りどころ/背負ってゆくもの/おわりに
あとがき
参考文献

著者|author

斎藤卓志(さいとう・たくし)
一九四八年、愛知県生まれ。中京大学法学部法律学科、佛教大学文学部史学科(通信)卒。会社勤務、安城市歴史博物館学芸員、市史編纂室長などを経て総務部。
著書に『刺青 TATTOO』(岩田書院)、『稲作灌漑の伝承』(堺屋図書)。編著に『葬送儀礼と祖先霊』(光出版)、『職人ひとつばなし』(岩田書院)。その他、『愛知県史』『安城市史』『多度町史』など分担執筆。

担当編集者から

刺青に興味を持たない人間にとって、刺青をしている人の気持ちというのはなかなか分かりにくい。斎藤氏は、聞き書きという手法によって、その辺のところを丁寧に掘り下げ記述していく。著者の案内にしたがい読み進むうちに、刺青をする人の気持ちがだんだんと見えてくる。というよりも、いままで蚊帳の外だったはずの刺青が次第に親しいものに感じられ、「刺青」という形はたとえとらなくても、そこへ向かうこころの志向性は誰にとっても了解可能と思えてくる。この本は、「刺青」という一見特殊なテーマを扱いながら、だれもそこから逃れられない「生きている不思議」について解き明かし普遍へ至ろうとする労作だと思う。
撮影のために伊勢佐木町から来社された姉妹が、撮影終了後の打ち上げで、「刺青が偏見なく見てもらえるようになったらありがたい」と言ったのが耳に残っている。[-三浦-]

 

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