保育形態論の変遷

  • 橋川喜美代/2003年1月
  • 9142円(本体)/A5判・604頁

そこには「子どもの発見」があった――
日本の幼稚園保育が、画一的指導から子どもの心の動きに共感する保育へと変遷する過程をたどりながら、保育者のあるべき姿を問う。アメリカの保育形態論を媒介にして詳細に解説。
(ISBN 4921146659)

目次|contents

序章 研究の主題と方法
第一部 フレーベル主義幼稚園の受容と一斉画一的指導形態
第一章 オルコットの幼児学校―新しい子ども観の萌芽―
第一節 幼児学校に見る体罰と書物の否定
第二節 新しい女性(母親)観・家庭観の形成
第二章 フレーベル主義幼稚園期の保育形態
第一節 ピーボディの幼稚園と幼稚園運動
第二節 幼稚園教員養成校と恩物教授法
第三章 無償幼稚園に見る三類型の保育形態
第一節 作業中心の労働教育型
第二節 遊び中心の保護施設型
第三節 遊びと労働をミックスした人間教育型
第四章 フレーベル主義幼稚園のモザイク的受容と一斉画一的指導形態
第一節 米国幼稚園関連書の翻訳と初期の保育方針
第二節 わが国の遊戯観
第三節 恩物教授法による一斉画一的指導形態の確立
第五章 女子高等師範学校附属幼稚園分室と二葉幼稚園の保育形態
第一節 簡易幼稚園の勧め
第二節 女子高等師範学校附属幼稚園分室における簡易な保育法の実験
第三節 二葉幼稚園の設立とその反響
第四節 貧民幼稚園からセツルメント事業へ
第六章 恩物中心主義保育改善の兆しと女子高等師範学校附属幼稚園の保育形態
第一節 恩物教授法の改良と保育環境論の提唱
第二節 恩物使用法の実験と機関誌『婦人と子ども』の刊行
第二部 幼稚園カリキュラムの改革と保育形態確立への模索
第七章 問われるフレーベル主義幼稚園
第一節 世界コロンブス博覧会の開催とシカゴ幼稚園運動の展開
第二節 ペスタロッチ・フレーベル・ハウスの報道とゲルトルート・ハウス
第三節 無償幼稚園の機能拡大とセツルメント活動
第八章 カリキュラム改造への試み
第一節 ヘルバルト学派と中心統合主義カリキュラム
第二節 児童研究運動と自由遊戯主義カリキュラムの実験
第三節 他者と共感し探求を共有する共同体の創造
第九章 プレイグラウンド運動による身体と精神の解放
第一節 <砂場>設置と幼稚園運動
第二節 プレイグラウンドの発展とフレーベル主義幼稚園
第三節 身体と精神の融合を求めて―プレイグラウンドの新たな取り組み
第十章 一斉画一的指導形態からの脱皮と遊戯教育論の登場
第一節 識者らによる幼稚園批判
第二節 和田実の『幼児教育法』と遊戯教育論
第三節 幼児教育研究雑誌『婦人と子ども』とフレーベル会建議案
第十一章 頌栄幼稚園の創設とシカゴ式保育形態の実際
第一節 フレーベル教育の基本原理を求めて
第二節 頌栄保姆伝習所および附属幼稚園の実際
第十二章 興味に根ざした保育形態と自由細目の提唱
第一節 幼児本意の活動に根ざした保育を求めて
第二節 奈良女子高等師範学校附属幼稚園と自由細目の提唱
第三部 幼稚園における生活形態の確立
第十三章 「効率性」原理に基づくカリキュラム開発と保育形態
第一節 IKUによる標準カリキュラム開発に見る幼少連携と教員養成の変容
第二節 「効率性」原理による実践の変容:シカゴ実験学校
第十四章 実生活に根ざした生活形態の開発
第一節 一斉指導形態批判による実験の始まり
第二節 子どもを生活の主体者に
第三節 幼稚園の生活形態とコンダクト・カリキュラム
第十五章 知性的経験と創造的表現の開発を目指す保育形態
第一節 プレイ・スクールの経験と表現
第二節 保育学校の環境による保育
第十六章 生活主義保育の開発―生活の組織化を求めて―
第一節 「為テ悟ル主義」の保育
第二節 生活単位の保育カリキュラムの編成
第十七章 自然に親しむ人間保育の形態―自然がもたらす自発活動を求めて―
第一節 橋詰良一の『家なき幼稚園』における自然保育
第二節 自然の中で繰り広げられる子どもの世界
第三節 保姆の純情発露と子どもの神性
第十八章 誘導保育論の確立と新たな保育形態―生活携帯の在り方を求めて―
第一節 倉橋惣三と幼稚園令
第二節 倉橋の生活論における「生活」の意味
第三節 保育者論の変遷と誘導観
第四節 保育案の変容と生活形態論の確立
終章 保育形態の多様性と現代的意義
第一節 保育形態の開発と実践の歴史的系譜
第二節 革新的実践の継承と発展
第三節 子ども・保育者・保護者をつなぐドキュメンテーション

著者|author

橋川喜美代(はしかわ・きみよ)
1953年大阪府生まれ。大坂教育大学教育学部卒業。大阪市立大学生活科学研究科後期博士課程単位取得退学。現在、鳴門教育大学学校教育学部教授。文学博士。
著書に『世界の学校はどうかわろうとしているか―アメリカ・ドイツ・イギリス・フランスの教育事情―』(日本標準、共著)など。

 

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