形相と空

  • 河波昌/2003年4月
  • 5600円(本体)/A5判・412頁
  • 装丁:矢萩多聞

実践と思索の精緻なパノラマ― 形相主義としてのギリシア思想と空思想にもとづく大乗仏教は、その起源より相互に影響を与え合ってきた。東西思想の出会いを詳細に論じ、西欧形相主義を超克する道筋を示す。
(ISBN 4921146705)

推薦の言葉

インド仏教と西洋近世哲学の両域の研究に大きな足跡を残しながら精進を続けてきた著者の豊かな結実であり、同時に華麗な開花でもある本書の刊行を心から慶びたい。「形相と空」という端的な標題に問題の核心が鮮明に、そして大きくあらわれている。……実践と思索の両輪において精緻に具体的に書き出されるパノラマに接し、あらためて「形相と空」が現代世界における私たち自身の問題として活性化するのを覚えるであろう。
―上田閑照(哲学者)

目次|indexs

第一部 論考
一 形相と空―ギリシア文化とインド仏教との出会いにおける位置論稿
二 東西における万有在神論について
三 見仏と見神―空あるいは無の思想との関連において
四 東西における神・人間・世界関係―大乗仏教的視点からの一考察
五 東西における道徳思想―カント倫理学と仏教の戒思想について
六 真言密教における体系性と主体性―とくに覚鞘驍フ月輪観の問題をめぐって
七 仏教にける「平等」概念について
八 『日本的霊性』について
九 コスモロジーとしての仏身論―法界身の観念をめぐって
十 空の現象学 試論―般若経・華厳経における一論考
第二部 講演・シンポジウム
一 形相と空をめぐって
二 形相主義と空の成立
三 東西宗教思想の課題
四 キリスト教は仏教から何を学べるか―八木誠一氏「直接経験の言語化について」へのコメント
五 仏母マーヤーと聖母マリア―小林円照氏へのコメント
六 日本古代国家形成理念と大乗仏教―聖徳太子から東大寺建立への過程における
七 ポスト・モダニズムと新しい宗教の課題
第三部 小論集
一 哲学の現代的課題―ポストモダニズムと東洋的思惟
二 海と包越者―開かれた体系と閉ざされた体系の問題をめぐって
三 包むものと包まれるもの―務台・場所論を遡源する
四 念劫有即―時と永遠のダイナミズム
五 白秋における思想的なものと感覚的なもの
六 西谷先生と漱石
七 『ニヒリズム』と西谷先生の想い出
八 藤吉慈海『前途浄土教』
九 禅浄双修の彼岸―藤吉慈海を偲ぶ
十 岡潔と光明主義―その数学と宗教
十一 茶道雑観
1 茶道とキリスト教―西欧キリスト教修道院での体験
2 『般若心経』と茶道
3 真実の自己
4 主・客不二ということ
5 羯磨曼荼羅と茶道における人間形成
6 同入和合海

著者|author

河波昌(かわなみ・あきら)
東洋大学名誉教授。

担当編集者から

全集刊行中で超ご多忙にもかかわらず、「河波さんの本なら」と、上田閑照氏は快く推薦文を引き受けてくださった。その際、木田・竹内対談『待つしかない、か。』をお送りした。
なんと上田先生、竹内氏と同窓なんだそうな。本文写真にひと言、
「お二人ともいい老人ですねえー。……ぼくもだけど」(笑)。[-内藤-]

 

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