同定の政治、転覆する声

アルゼンチンの「失踪者」と日系人

  • 石田智恵(著)/2020年2月
  • 3600円(本体)/A5判上製336頁
  • 装丁:関谷謙太

1970年代、アルゼンチン軍事政権による反政府活動家の弾圧が生み出した大量の「失踪者」。その中には日本人移民の子どもたちがいた――
死体なき「強制失踪」という国家テロリズムと、日常的な人種主義。両者を転覆しようとする日系失踪者とその親族たちの闘いを、文化人類学的視点から描く

(ISBN 9784861106781)

目次|contents


Ⅰ 「国民再編過程」と「回復」の運動
第一章 個人の消去によるナシオンの再編
1 強制失踪という暴力
2 国民再編過程としてのジェノサイド
3 「失踪者」というカテゴリー
第二章 「記憶」の作業、「回復」の運動
4 「母たち」の抵抗から「人権運動」へ
5 「人権運動」における「家族」の意味
6 「免責の時代」と「回復」の市民運動
7 失踪者の喪――死の儀礼研究からみる人権運動
第三章 ナショナリティの問答と人種主義の実践
1 稠密な記憶、少数者の記憶
2 接触=問答の場としての国民社会
3 日常のなかのナショナリティと人種主義的実践
4 アルゼンチン的人種主義と「ハポネス」の位置
5 やわらかな人種主義

Ⅱ 国家テロリズムとマイノリティの闘い――日本という出自
第四章 日系失踪者の闘い
1 軍政ナショナリズムと翼賛的マイノリティ
2 「失踪」したハポネスたち
3 可視性の転覆
第五章 日系失踪者家族の闘い
1 ナシオンと複数の記憶
2 日系社会失踪者親族会
3 語ることと聴き取ること
4 個の回復ともうひとつの「家族」

インタビュー一覧
日系失踪者親族一覧

著者|author

石田智恵(いしだ・ちえ)
1985年奈良県生まれ。早稲田大学法学学術院准教授。立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。博士(学術)。
著作に『異貌の同時代――人類・学・の外へ』(渡辺公三・冨田敬大との共編著、以文社、2017、担当:第一章「個人の登録・消去・回復――アルゼンチンと同一性の問題」)、「やわらかな人種主義――アルゼンチンにおける「ハポネス」の経験から」(『文化人類学研究』18巻、早稲田文化人類学会、2017)、“Interpelación o autonomía. El caso de la identidad nikkei en la comunidad argentino-japonesa”(Pablo Gaviratiとの共著、Alteridades, 27(53): 59-71, 2017)などがある。

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