ビュッシイ・ダンボア

  • ジョージ・チャップマン(作)、川井万里子(訳)/2022年3月
  • 3100円(本体)/四六判上製320頁
  • 装丁:中島衣美

シェイクスピアのライヴァル劇詩人の最高傑作
十六世紀フランス・ヴァロア王朝末期、爛熟、頽廃、閉塞のアンリ三世の宮廷に実在した美貌の剣士、ビュッシイ・ダンボアの愛と死の悲劇に、宇宙における人間の地位とその運命の行方を問う。

「美徳によって宮廷で出世したい」というビュッシイの高邁な志を裏切るモンシュリ伯爵夫人タミラとの密通。宮廷一の貞淑な月処女神と謳われる清らかな表情にふと蠱惑的な微笑を浮かべるタミラ。
王弟の内奥にわだかまる王位簒奪の野望、妻タミラの背信に「嫉妬の溶鉱炉」を開け放つモンシュリ伯の狂気。敬虔な告解僧でありながら女衒でもある怪僧コモレット。
理性と情熱の狂気、貞淑と淫蕩、忠誠と背信、高貴と卑俗。
「自分の敵を自分の腕の中にひしと抱きしめている」近代人の矛盾心理の表出が、現代の不条理演劇を先取りする。

(ISBN 9784861107771)

目次|contents

はじめに―シェイクスピアの好敵手劇詩人チャップマンの最高傑作『ビュッシイ・ダンボア』について

悲劇『ビュッシイ・ダンボア』

ヒッチンの丘の家―チャップマンの生家を訪ねて

G.チャップマンの『ビュッシイ・ダンボア』―緑陰から地下世界へ

あとがき

主要参考文献

訳者|translator

川井万里子(かわい・まりこ) 
一九三八年生。東京女子大学英文科卒、東京都立大学大学院英文科修士課程修了。現在東京経済大学名誉教授。
主な著作に、『「空間」のエリザベス朝演劇―劇作家たちの初期近代』(九州大学出版会、二〇一三)、『トロイア戦争の三人の英雄たち―アキレウスとアイアスとオデッセウス』(春風社、二〇一八)、『十七世紀英文学を歴史的に読む』(十七世紀英文学研究会編、金星堂、二〇一五)、『甦るシェイクスピア―没後四〇〇周年記念論集』(日本シェイクスピア協会編、研究社、二〇一六)、「盛期英国ルネサンス・牧歌文学の最高峰―サー・フィリップ・シドニー『アーケイディア』について」(『ペディラヴィウム』七六、二〇二一)。
主な訳書に、ジョージ・チャップマン『みんな愚か者』(成美堂、一九九三)、『フェヴァシャムのアーデン』(成美堂、二〇〇四)、サー・フィリップ・シドニー『アーケイディア』(九州大学出版会、一九九九、共訳)、カール・J.ヘルトゲン『英国におけるエンブレムの伝統―ルネサンスの視覚文化の一面』(慶應義塾大学出版会、二〇〇五、共訳)、キャサリン・ダンカン・ジョーンズ『廷臣詩人サー・フィリップ・シドニー』(九州大学出版会、二〇一〇、共訳)、サー・フィリップ・シドニー『アーケイディア[新装版]』(九州大学出版会、二〇二一、共訳)。

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