ジャコモ・レオパルディ
ロマン主義的自然観と〈無限〉の詩学
- 古田耕史(著)/2022年3月
- 6000円(本体)/A5判上製358頁
- 装丁:毛利一枝
近代イタリア最大の抒情詩人とされるジャコモ・レオパルディ(1798-1837)の、日本で2冊目となる本格的研究書。詩集『カンティ』を中心に、表現内容ならびに語彙・文体・音声などの側面から詩を丹念に読み解き、散文作品『オペレッテ・モラーリ』『省察集』などとの比較検討を通じて、その詩想と詩作法の本質に迫る。またペシミズムの哲学者として、ショーペンハウアーやニーチェ、夏目漱石らに深い影響を与えたレオパルディの、世界観と思想の本源を明らかにする。
(ISBN 9784861108013)
目次|contents
緒言
第1部 詩と自然
序章
第1章 詩的霊感――レオパルディの詩論と詩作の方法
序
1. 初期の古典主義
2. 詩論の変化
3. 一瞥と熱狂の神性
4. 詩的霊感の条件
結論
第2章 レオパルディのロマン主義的自然観――スタール夫人との関係を中心に
序
1. ロマン主義の新しい自然観―生きた有機体としての自然
2. ドイツ思想とレオパルディの自然認識
3. スタール夫人の著作との出会い
4. レオパルディとスタール夫人の自然哲学
5. 反分析、反解剖
6. 自然と詩人
7. 自然の2つの相貌
結論
第3章 レオパルディにおける2つの〈自然〉
序
1. ペシミズムの拡大
2. 善としての自然観
3. 人間の運命と摂理的な自然
4. 悪としての自然観(『省察集』)
5. 悪としての自然(詩作品)
6. 自然にたいする2つの視点
7. 自死をめぐって
8. アーリマン
結論
第4章 詩論と自然観の平行性
序
1. “ロマン主義論争”への参加
2. 想定される論敵
3. 詩論の修正と自然観
4. 後期の詩論と詩作
結論
第2部 〈無限〉の詩学
序章
第1章 無限
1. 《無限》
1. 1. テクストの読解
1. 2. «vago e indefinito» ――漠としたものへの志向
2. 「無限」の標示
3. 「無限」に関わる諸概念
3. 1. 遠さ
3. 2. 夜
3. 3. 死
3. 4. 幸福
3. 5. 愛
3. 6. 無
4. 想像世界への越境
4. 1. «vo comparando» ―境界の消失
4. 2. 無感覚状態、エクスタシスの快楽
5. 音と聴覚
5. 1. 詩における聴覚の重要性
5. 2. 音楽と天上の観照
6. 二重の世界―《無限》の意味
結論
第2章 追憶
1. 《シルヴィアに》と過去の哀惜
2. 二世界説と想起説
3. 経験と記憶
4. 追憶と詩作
5. 追憶・夢と詩的霊感
結論
第3章 回帰と永遠
1. 双子のような詩
2. 《嵐の後の静けさ》の言語・文体
3. 《村の土曜日》の言語・文体
4. 追憶・回帰・永遠
5. レオパルディの詩とニーチェの〈永遠回帰〉
結論 追憶と生への意志
第4章 死
1. 死の瞑想
2. 死の永遠性と無限性
3. 死者の視点からの「死」
4. 「擬似的な」死
結論
第5章 愛
1. 「真の生」と愛
2. 《支配的思考》
3. 愛の永遠性と無限性
4. 愛の作用とその唯一性
結論 愛か死か
結語 詩と生の意義
補遺:Il sognoを読む
はじめに
1. 眠り
2. 夢
3. 「夢」の詩作
4. 《夢》における諸テーマ
5. 生と死のコントラスト
おわりに
あとがき
文献案内
著者|author
古田耕史(ふるた・やすし)
愛知県名古屋市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。イタリア政府奨学生としてパドヴァ大学に留学。専門はイタリア文学、比較文学。現在、早稲田大学グローバルエデュケーションセンター准教授。