「私らしさ」の民族誌

現代エジプトの女性、格差、欲望

  • 鳥山純子(著)/2022年3月
  • 3200円(本体)/四六判上製432頁
  • 装丁・挿画:中本那由子

 

人のことなんてわからない!
ひょんなことからエジプトのアメリカンスクールで教師をすることになった、人類学者の筆者。我が強くて面倒くさく、そして魅力的な3人の仕事仲間にスポットライトを当て、グローバル都市カイロのなかで彼女たちがどのような「私」を目指しながら、どのように「私らしく」振る舞っているのか、理想と現実の狭間で思い悩む「こじらせ女子」たちの生き様を描く。
他者に共感しながら「私」を見つける、人の民族誌。

 

[主要登場人物(全員がアメリカンスクールA校に勤務)]
シャイマ……価値ある大人になることを目指す優等生教員(担当:アラビア語・宗教)
サラ……子育てと仕事の両立を図る、マイペースなマダム(担当:英語)
リハーム……古き良きエジプトの再興を目論む、A校の校長
私……人類学者、リハームに半ば騙されて、A校で働くことに(担当:英語・理科)

 

本書の「はじめに」を公開しています。

 

(ISBN 9784861107863)

目次|contents

はじめに
目次
凡例
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序章
1 本書の取り組み
2 調査
3 本書の構成

 

第1章 現代エジプトにおけるA校
1 格差社会としての二〇〇〇年代エジプト
2 調査当時のA校
3 A校の人々
4 エジプトにおける学校教育
5 A校における複数の近代

 

第Ⅰ部 シャイマの生き方―学歴至上主義言説に基づく、階層社会の読み替え
第2章 働くシャイマ、富裕層の教育者
1 先行研究におけるエジプトの女性学校教員
2 シャイマという教育者
3 「モダン」な教員としてのシャイマ
4 A校=価値ある人物となるための舞台

 

第3章 〈クバール〉を生きる
1 〈クバール〉な女性になるまで、シャイマの生い立ち
2 〈クバール〉の危機
3 〈クバール〉に見る学歴至上主義
4 〈クバール〉が可能にするメーク
5 〈クバール〉と女性の評判
6 〈クバール〉が開く可能性

 

第4章 〈クバール〉でも、クバールでないシャイマ
1 仲間同士の助け合い
2 主張の足りないシャイマ
3 上司に対する両義的態度
4 使い捨ての待遇
5 何も持たないシャイマ

 

第Ⅱ部 サラの生き方—消費至上社会における家庭と仕事の両立
第5章 子育て優先の就労
1 第二の人生の模索
2 教員を志した理由
3 学校教員としてのサラ やっぱり育児優先?
4 愛情重視か公私混同か
5 職業意識の欠如

 

第6章 〈へルワ〉を生きる
1 人生のハイライトからの転落
2 現在の生活
3 〈ヘルワ〉な私

 

第7章 異物としてのサラ
1 上層中産階級出身者としてのサラ
2 エジプト社会における社会階級
3 職場における社会的帰属
4 二十代女性学校教員の反応
5 日常に遍在する階級

 

第Ⅲ部 リハーム校長の生き方―時空を超えた植民地期エジプトの再興
第8章 天職に生きる
1 リハーム校長の特徴
2 保護者に対する〈シャクセイヤ〉の発揮
3 学校内での彼女の評判
4 〈シャクセイヤ〉を利用する孤独な指導者

 

第9章 〈ソサエティ〉の再興に生きる
1 教育に対する熱意
2 教育への指示
3 校長のルーティーン、傍若無人な振る舞い?
4 最高ランクの人材を生み出す教育の牽引者
5 リハームの生い立ち
6 〈ソサエティ〉の再興に生きる

 

 

終章 「私らしさ」の民族誌、その必要性と可能性
1 「私らしさ」という泥試合から見えるもの
2 多様な職業意識
3 ジェンダー規範をめぐる変化
4 イスラーム教の不可視性
5 ステレオタイプからの脱却を目指して
6 人の民族誌の可能性
7 「こじらせ女子」礼賛
8 「こじらせ女子」としての私

あとがき
参照文献
索引

著者|author

鳥山純子(とりやま・じゅんこ)
立命館大学国際関係学部・国際関係研究科 准教授
専門は文化人類学、ジェンダー論、中東研究
主な著作に 『嗜好品から見える社会』(共著、2022年、春風社)、『フィールド経験からの語り(イスラーム・ジェンダー・スタディーズ4)』(長沢栄治監修、鳥山純子編著、明石書店、2021年)、「ジェンダーから考えるイスラーム」(小杉泰・黒田賢治・二ツ山達朗編『大学生・社会のためのイスラーム講座』ナカニシヤ書店、2018年)、『イスラームのくらし(イスラームってなに?シリーズ2)』(かもがわ出版、2017年)など。

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