嗜好品から見える社会

  • 大坪玲子、谷憲一(編)/2022年3月
  • 4500円(本体)/A5判並製426頁
  • 装丁:コバヤシタケシ

長年の呪いから解放されよう、嗜好品は我々の生活に必要不可欠なものである――

人類学者たちが現地で嗜好品を見て、体験し、語り合った、その集大成としての論集。嗜好品の紹介だけにとどまらず、生産・流通・消費における国家や政治との関係も考察しながら、その社会を見る。

――嗜好品というプリズムを通すと、社会は少し違って見えてくる

(ISBN 9784861108020)

目次|contents

序論(大坪玲子)

第一部 つながる
第1章 笑いはメディスンである―ペヨーテ・ミーティングにおける笑いと癒やし(渡辺浩平)
第2章 反響の語り―観光プロジェクト「キューバ国際音楽祭」をめぐる社会と個人に関する試論(田中理恵子)
第3章 「楽しみ」を分かち合う―ペルー都市と山村のチーズに対する価値観の違いから(古川勇気)
第4章 「あるけれど無い」リッブ―エジプト都市部のユビキタスな「ローカルフード」(鳥山純子)

第二部 こだわる
第5章 「良い酒」とはいかなるものか―つくり手の仕事からみたシミンアルヒとモンゴルの乳文化(寺尾萌)
第6章 においと「共犯性」―ネパールのキナーマー(工藤さくら)
第7章 今日のため、明日のため―イエメンのカート商人と消費者(大坪玲子)

第三部 つづける
第8章 水タバコをめぐるポリティクス―現代イランにおける喫煙の作法と法規制の行方(谷憲一)
第9章 アレヴィーと酒の切れない関係―翻弄されるトルコの少数派(今城尚彦)
第10章 「伝統」からビジネスへ―インドにおけるパーン文化の変容とジェンダー(小牧幸代)
第11章 蒸留酒をつくり、ふるまい、嗜む―ブルガリア村落部における体制転換、EU加盟と自家製ラキヤ(松前もゆる)

第四部 こえる
第12章 ほろ苦さを求めて―インドネシア西スマトラ州のガンビール・ブームから読み解くビンロウのグローバリゼーションズ(西川慧)
第13章 カヴァ飲みのゆくえ―オセアニア島嶼内外における人と在来作物の多義的な関わり合い(河野正治・大島崇彰)
第14章 近世以降韓国における薬用人蔘製品の流通と消費(辻大和)

あとがき 宴とともに(大坪玲子)

執筆者紹介

コラム(各章末)  
ナット・アンド・シガレット/キューバ・レコード―市場・商品・消費のはざまで/ペルーのインカ・コーラ/エジプトの男女別喫茶空間、アホワとカフェ/モンゴルの酒をめぐるこぼればなし/海外進出したチュルピー/イエメン飲み物事情/トフメあれこれ/「これは酒ではない」―ベクタシー教団のソフラとデム/インドの炭酸飲料水/タバコとコーヒーの香りの向こうに見えるもの/ヤシ酒飲むムスリムたち/海を越えた宴/『人蔘史』とその著者今村鞆

お詫びと訂正

本文中に編集上の不手際で以下のような誤りが生じました。謹んでお詫びして訂正いたします。
177頁
(誤)ネパール連邦民主共和国(以下、ネパール)
(正)ネパール
※2020年に国名変更

編者|editors

大坪玲子(おおつぼ・れいこ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー。文化人類学、イエメン研究、嗜好品研究。
主な著作に、『嗜好品カートとイエメン社会』(法政大学出版局、2017年)、「カート・オントロジー構築の試み」(『人工知能学会第2種研究会ことば工学研究会資料集』、共著、2021年)、「カートを噛みながら―人類学とインタビューと嗜好品」(『嗜好品文化研究』6、2021年)。
恋しい嗜好品 アハジュル地方で噛んだ摘みたてのカートと、一緒に飲んだ湧き水

谷憲一(たに・けんいち)
上智大学アジア文化研究所・共同研究所員。文化人類学、イラン研究。
主な著作に、 「タァズィエ」(鈴木董・近藤二郎・赤堀雅幸編集代表『中東・オリエント文化事典』、丸善出版、2020年)、Realizing the Existence of Blind Spots in the ‘West’: A Systems-theoretical Perspective(Anthropological Theory 20(4)、共著、2020年)、「現代イランにおける国家とホセイン追悼儀礼―道具主義と言説的伝統の間で」(博士論文、一橋大学、2022年)。
恋しい嗜好品 イランのどこでも売っている、果物を煮詰めて乾かしたラヴァーシャク

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