討議倫理と教育

アーペル、ヨナス、ハーバーマスのあいだ

  • 丸橋静香(著)/2023年2月
  • 3900円(本体)/四六判上製288頁
  • 装丁:長田年伸

討議という倫理は、どのように自らや互いを支えるか?
意のままにならないものへの応答――
アーペルによって提唱され、ハーバーマスによって定式化された道徳理論である討議倫理学を、言語論的転回の意義を踏まえ、教育実践論的に展開。そのうえで、ヨナスの責任論を契機とするアーペルの共同責任論の批判的検討を基に、討議は論理的思考の外部である〈他者〉によってこそ可能となるという逆説性を指摘することで、教育の倫理を論じる。言語論的転回の徹底に加え、他者論的転回の必要性という視座から、合意を目指すコミュニケーション方略としての討議倫理学の妥当性・可能性を教育学の立場から新たに示す。
(ISBN 9784861107726)

目次|contents

序章 問題関心と研究の課題――討議倫理学と教育学
第一節 問題関心――言語論的転回の徹底と他者論的転回の必要性
第二節 本研究の対象――なぜアーペル討議倫理学か
第三節 研究の課題と方法
第四節 先行研究の検討
第五節 本書の構成
第一章 アーペル討議倫理学の基本枠組――一九七〇年代の議論を中心に
はじめに
第一節 アーペル討議倫理学の背景
第二節 超越論的語用論的討議倫理学
おわりに
第二章 アーペル討議倫理学の責任論――ヨナス責任論との比較
はじめに
第一節 ヨナスの責任論の背景
第二節 ヨナスの責任論
第三節 未来倫理としての討議倫理学の優位――ヨナスに対するアーペルの批判
第四節 アーペルの未来倫理――討議能力を持たないものへの配慮義務の根拠づけ
おわりに
第三章 現代社会における責任性とその形成――アーペルの「共同責任」概念を手がかりに
はじめに――近代的個人主義的責任概念の限界
第一節 教育学における責任性――ドイツ教育学の議論から
第二節 今日的な責任性――アーペルの「共同責任」概念を手がかりに
第三節 責任性の形成可能性
第四節 相互主体的対話実践による責任性の形成
おわりに
第四章 超越論的語用論的な討議倫理学の教育実践への適用――相互主体的対話実践を可能にする手立て(1)
はじめに
第一節 討議実現に関するドイツ批判的教育学議論の問題点
第二節 討議倫理学における「適用問題」
第三節 ニケの「道徳の現実的討議理論」にもとづく教育構想
おわりに――考えられる批判と討議倫理学に関する教育学的研究の課題
第五章 言語能力の発達段階を踏まえた討議主体形成――相互主体的対話実践を可能にする手立て(2)
はじめに
第一節 討議倫理学における討議
第二節 討議能力の発達段階と子どもの区分
第三節 大人-子ども間の討議
おわりに
第六章 ハーバーマス討議倫理学の限界が示唆する道徳教育の構想原理――教育学における討議倫理学研究の他者論的転回(1)
はじめに――ハーバーマス討議倫理学の限界を問うことの教育学的意味
第一節 ハーバーマスにおけるオースティン言語行為論受容の検討
第二節 ハーバーマスの承認論――テイラーの承認論との比較から
第三節 道徳教育の原理――「差異の原理」/「平等の原理」
おわりに
第七章 アーペル討議倫理学の逆説的構造が示唆する教育の倫理――教育学における討議倫理学研究の他者論的転回(2)
はじめに
第一節 対称的関係に立脚する倫理構想としてのアーペル討議倫理学
第二節 「共同責任」概念再論――ロゴスの〈他者〉という観点から
第三節 「共同責任」概念の教育学的意義
おわりに
終章 アーペル討議倫理学の教育学的意義
第一節 本研究のまとめ
第二節 教育学的帰結
第三節 残された課題
参考文献
あとがき
事項/人名索引

著者|author

丸橋静香(まるはし・しずか)
一九七三年長崎県生まれ。広島大学教育学部教科教育学科卒業。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期単位取得退学。島根大学講師、同准教授を経て、現在島根大学大学院教育学研究科教授。博士(教育学)。教育哲学専攻。主な著書・論文に、「K・-O・アーペルの討議倫理学における『共同責任』概念の教育学的意義――H・ヨナスの責任原理への批判的応答の検討をとおして」(『教育哲学研究』第一一三号、二〇一六年)、『教育的関係の解釈学』(共著、東信堂、二〇一九年)ほか。

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