「観光のまなざし」の転回

越境する観光学

  • 遠藤英樹・堀野正人 編著/2004年5月
  • 2381円(本体)/A5判・250頁

旅先で私たちは何を見るのか? 世界的にますます盛んになる「観光」について、歴史、リゾート論、まちづくり論、メディアとのかかわり、国立公園、内地観光団、チャイナタウン、ジェンダー、宗教、香港・インドの事例など、多様なキーワードで論じる「観光社会学」入門!
(ISBN 4861100097)

目次|indexs

01章 観光の理論的探究をめぐる観光まなざし論の意義と限界
02章 自然観光における観光のまなざしの生成と発展
03章 創出された「観光地」―鞆の浦、二見ヶ浦にみる海景名所の近代
04章 観光客のまなざしと近代リゾート
05章 観光空間・知覚・メディアをめぐる新たな社会理論への転回
06章 観光のまなざしと現代チャイナタウンの再構築
07章 地域と観光のまなざし―「まちづくり観光」論に欠ける視点
08章 「観光」へのまなざし―日本統治下南洋群島における内地観光団をめぐって
09章 ホームステイにおける異文化のまなざし―金沢の事例から
10章 ツーリズム・プロダクトとジェンダー
11章 宗教体験と観光―聖地におけるまなざしの交錯
12章 香港における観光のまなざし―その歴史と現在に関するノート
13章 越境する<観光>―グローバル化とポスト・モダン化における観光

編者|editor

遠藤英樹(えんどう・ひでき)
奈良県立大学地域創造学部助教授。
訳書にM・Mゴードン著『アメリカンライフにおける同化理論の諸相』(晃洋書房、共訳)ほか。
堀野正人(ほりの・まさと)
奈良県立大学地域創造学部助教授。
共編著に『現代観光へのアプローチ』(白桃書房)など

著者|author

安村克己—01章
(奈良県立大学地域創造学部教授)
西田正憲—02章
(同上)
川島智生—03章
(神戸女学院大学非常勤講師)
神田孝治—04章
(大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程)
大橋健一—06章
(立教大学観光学部教授)
千住一—08章
(立教大学大学院観光学研究科博士課程後期課程)
山口隆子—09章
(神戸大学大学院総合人間科学研究科博士課程前期課程)
安福恵美子—10章
(平安女学院大学現代文化学部教授)
中谷哲弥—11章
(奈良県立大学地域創造学部助教授)
芹澤知広—12章
(奈良大学社会学部助教授)
須藤廣—13章
(北九州市立大学文学部教授)

担当編集者から

他者とは知覚野の構造である、と哲学者は言う。

「他者のもたらす第一の効果、それは、私が知覚するあらゆる客体、私が思考するあらゆる観念の周囲に、余白の世界、マフ状にそれを取り巻く世界、「地」をつくりだしてくれることにある。そのおかげで別の客対、別の観念は次から次へと移り、移行の法則のようなものにしたがって出現し、過ぎ行くことができる。[中略]他者は世界を心優しい喧騒で満たしてくれるのである」(ジル・ドゥルーズ『Michel Tournier et Le Monde Sans Autrui』)

常に他者と共に在るわたしたちの知覚は、先験的に他者によって限定され、方向づけられている。とするならば、物そのものの知覚などもちろん不可能であって、知覚は制度的なもの、構造的なものであることは避けられまい。

旅に出、旅先でさまざまなものを知覚するとき、本当は何を見ているのだろうか。何を見せられているのだろうか。
『「観光のまなざし」の転回』は、フーコーの影響を大きく受けて書かれたという社会学者ジョン・アーリの名著『観光のまなざし』を展開・転回する。コンテンツにあるとおり、13人の論者が、さまざまな観点・角度で「観光」の本質をさぐっていく気鋭の論稿である。

旅行など生まれてこのかた数度しか経験がなく、休みになれば部屋でゴロゴロ、音楽でも流してぐうたらしていたいぼくは、元来、観光になど1ミリの興味もない。しかし、そのぼくが第1の読者=編集者としてこの本を面白く読めたのはなぜか。
それは、「わたしたちは何を知覚しているのか」というこの根源的な問いが、各論に通奏低音のように流れているからだ。主体的に生きるなんてお笑いぐさだとしたって、せめて何を知覚させられてるか、ぐらいは知りたいじゃないですか。[-内藤-]

 

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