『狐物語』とその後継模倣作におけるパロディーと風刺
- 高名康文(著)/2023年3月
- 4500円(本体)/A5判上製418頁
- 装丁:矢萩多聞
ルナールよ、もっと礼節を知り、もう少し若く、もっと清潔でいることを知り 繻子や黒貂の着物をまとった恋人を他に作りなさい。
べランの妻のムースは、美しく、若く、たおやかであるぞ。――『狐物語』第VII枝編より
12世紀~13世紀の北フランスで成立した、狡猾な狐「ルナール」の物語群である『狐物語』とその後継作を、同時代の文学作品や宗教儀礼などに対するパロディーに着目しつつ詳解する。
(ISBN 9784861108532)
目次|contents
はじめに
第1部:比較の視点と通時的視点からみた、『狐物語』における12・13世紀の恋愛物語のパロディー
第1章:中世文学におけるパロディーをいかに論じるか
第2章:同時代における他ジャンルの戯作風物語と比較した『狐物語』のパロディーの手続きの特性
第3章:『狐物語』における姦通の言説―曖昧な宣誓の以前と以後
第4章:『狐物語』の初期枝篇における姦通への言及が、写本の伝承過程において増加すること
第2部:『狐物語』における「逆さまの世界」、定型表現のパロディー
第1章:告解するルナール狐とベルナール首席司祭―『狐物語』第XVII枝篇における「逆さまの世界」
第2章:⼈と会話をする動物―『狐物語』第XII枝篇の場合
第3章:『狐物語』第VII枝篇における告解のパロディー
第4章:『狐物語』における武勲詩のパロディー―第I枝篇の鶏たちの告訴のエピソードにおける武勲詩詩節(laisse)の模倣
第5章:『狐物語』における喪の嘆きの表現のパロディー
第3部:『狐物語』のその後
第1章:ルナールと托鉢修道会―リュトブフ、『ルナールの戴冠』、『新版ルナール』
第2章:『新版ルナール』と『アーサー王の死』における運命の女神
第3章:フォヴェール、ルナール、フォルトゥーナ―『狐物語』後継作と『フォヴェール物語』
第4章:『狐物語』と『フォヴェール物語』における人間/動物/仮面
補遺
第1章:『パレルモのギヨーム』と『狐物語』―ジャンルのパロディー
第2章:クレティアン・ド・トロワの喪の嘆きの描写
第3章:『狐物語』における色彩―データと考察
第4章:『狐物語』B写本第5921, 2行を巡る新旧校訂の比較
おわりに
参考文献一覧
索引
著者|author
高名康文(たかな・やすふみ)
成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科教授。専門はフランス語、フランス文学。