スポーツの公共圏

運動部モデルからクラブモデルへの転換

  • 水上博司(著)/2025年10月
  • 5000円(本体)/A5判上製382頁
  • 装丁:中本那由子

公と私をつなぐ、次世代のスポーツ組織とは
学校運動部内で繰り返される不祥事と、それを正当化する同調圧力、かき消される声…。英国フットボールは、パブリック・スクールの少年たちの純粋なゲーム欲求と自治によって誕生した。ムラ社会化する日本のスポーツ界の根深い問題を、スポーツ組織論で初めて「公共圏」の概念から切りひらく。
(ISBN9784868160564)

目次|Contents

まえがき

第I部 背景と問題意識
第1章 なぜ中間支援NPO型スポーツ組織を対象とするのか?
 第1節 スポーツ組織における公益法人とNPO法人
 第2節 スポーツ行政と公益法人―その癒着構造
 第3節 スポーツ組織の中間性―公と私を橋渡しする
 第4節 新たなスポーツ組織論の道筋―本書の目的と構成
第2章 これまでのスポーツ組織研究の検討
 第1節 スポーツ所有論―誰がスポーツのイニシアティブをとるか
 第2節 公共圏の創出条件を視点とする理由
 第3節 スポーツ組織研究の現状
 第4節 総括と三つの仮説
第3章 スポーツの公共圏を考えるために
 第1節 スポーツの公共圏を構想する
 第2節 スポーツの公共圏の課題―ハーバーマスからの問い
 第3節 複数化する公共圏―インターネットを介した言語の連鎖
 第4節 規範と対話が織りなす公共圏―アソシエーションの役割
第4章 スポーツクラブ論―アソシエーション
 第1節 運動部モデルへの過剰な擁護
 第2節 運動部モデルからクラブモデルへ
 第3節 市民的公共性を生み出すクラブモデル
第5章 スポーツの公論―言語
 第1節 英国クラブ文化史にみる言語
 第2節 1クラブ多種目を包摂する公論
 第3節 「スクール・ゲーム」と少年たちの自治
 第4節 公と私をつなげる公論
 第5節 クラブマネジャーが担う公論形成

第II部 スポーツの公共圏の創出―中間支援NPO型組織の運営を通じて
第6章 支援する立場からの「自己語り」―本書の方法と構成
 第1節 公共圏の創出条件の布置関係―分析枠組み
 第2節 支援NPOにおける当事者性―分析対象
 第3節 支援NPO設立前夜の「自己語り」
 第4節 「橋渡し」を意味する支援
 第5節 仮説を論証する研究視点と社会理論
第7章 支援NPOが創出した公共圏
 第1節 地域社会論から市民社会論へ
 第2節 スポーツの市民的地位をめざして―目的と方法
 第3節 新しい社会運動論とラディカル・デモクラシー論
 第4節 支援NPOの活動―5期に区分した実践
 第5節 新たな「代表性」へ
第8章 支援NPOが創出したヘゲモニーに対する抵抗
 第1節 政権交代と総合型クラブ
 第2節 3つの政策イシューと抵抗―目的と方法
 第3節 「抵抗」の文化的実践と研究者の役割
 第4節 政策イシューをめぐる支援NPOの実践
 第5節 支援NPOの抵抗と自省から創造へ―考察
 第6節 ヘゲモニーに対する抵抗を読み解く
第9章 支援NPOとの関係性から形成された社会関係資本
 第1節 震災が浮き彫りにした総合型クラブのネットワーク
 第2節 社会関係資本を読み解く
 第3節 スポーツをめぐる社会関係資本の研究
 第4節 社会関係資本の概念にもとづく3つのフェーズ構成
 第5節 寄付金募集プロジェクトと当事者性
 第6節 社会関係資本の形成プロセス
 第7節 社会関係資本から経済資本への転移
 第8節 クラブがもつ橋渡し機能

第III部 結論 現代スポーツ組織論の展開
第10章 スポーツ組織論の新たな視点
 第1節 オルタナティブなスポーツの公共性を考える
 第2節 代表性の脱構築
 第3節 ヘゲモニーに対する抵抗
 第4節 チームワークからクラブワークへ
終章 「クラブとは何か」から…

あとがき
用語解説
初出一覧
文献
図表一覧
索引
謝辞

著者|Author

水上博司(みずかみ・ひろし)
1965年、広島県生まれ。
三重大学教育学部を経て、現在は日本大学文理学部教授。専攻はスポーツ社会学。
編著に『スポーツクラブの社会学』(青弓社)、『ジグソーパズルで考える総合型地域スポーツクラブ』(大修館書店)、『スポーツコモンズ』(創文企画)等がある。共著に『スポーツプロモーション論』(明和出版)、『2020東京オリンピック・パラリンピックを社会学する』(創文企画)、『現代社会におけるスポーツと体育のプロモーション』(大修館書店)、『現代社会とスポーツの社会学』(杏林書院)等がある。

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