戦後日本の地方移住政策史

地域開発と〈人材〉創出のポリティクス

  • 伊藤将人(著)/2025年11月予定
  • 6300円(本体)/A5判上製474頁
  • 装丁:長田年伸

個人のライフスタイルの選択肢であり、また人口減少に悩む地域にとっての希望となった「地方移住」。Uターン、Iターン、地域おこし協力隊、そして地方創生といった言葉とセットになったこの潮流は、個人の自発的な思いから生まれた自然発生的なブームなのだろうか。なぜ国や自治体は半世紀にわたり、特定の「理想の移住者」を求め、その獲得に勤しんできたのか?

数多くの政策文書やメディアの言説を丹念に読み解き、個人の移動を「地域開発」の資源として動員してきた戦後日本を貫く欲望の正体を描く。

本書の成果を一言で表すならば、戦後、とくに高度経済成長期以降に生じた地方移住政策が一貫して有してきた、移住者をめぐる期待と価値規範を明らかにしたことである。それは、国土や地方の開発と発展――地域活性化や地域振興とも呼べる――に貢献する「人材としての移住者」という期待と理想化の一貫性であった。 [本文より]

(ISBN 978-4-86816-065-6)

目次|contents

序章  地方移住・移住者・政策的移住促進
補論1  移住者獲得をめぐる自治体間競争の認識構造―全国自治体アンケート調査に基づく分析

 

第一部 先行研究と分析方法
第1章  先行研究の到達点と課題―「地方移住政策史」の構想に向けて
第2章  地方移住政策史研究の方法と枠組み

 

第二部 地方移住と政策的移住促進の通史
第3章 地方移住の時代背景と政策形成の歴史的展開
第4章  国土計画と地方移住―戦後日本の開発と人口移動の交差点

 

第三部 事例分析
第5章  都道府県による移住政策の嚆矢―熊本県Uターンアドバイザー制度の政策過程分析
第6章  「Iターン」政策の生成と展開―一九八九年~一九九八年の長野県事例
第7章  生じなかった「団塊世代の大量移住」への期待と移住促進の論理―期待・正当化・失敗の過程分析
第8章  地域おこし協力隊制度の拡大を支えた正当化/正統化論理―国会会議録にみる制度推進の論理
第9章  地方創生と政策的移住促進の拡大と自治体間移住者獲得競争
補論2  地方創生下の国の方針とアプローチが自治体の移住促進に与えた影響

 

終章  総括と展望―地方移住・移住政策研究の再定位
補論3  新型コロナウイルス感染症以降の「転職なき移住」から考える、政策と移住機会の格差

 

あとがき

参考文献
索引

著者|author

伊藤将人(いとう・まさと)

一九九六年生まれ。長野県出身。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員・講師。長野大学環境ツーリズム学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て現職。
大東文化大学社会学研究所兼任研究員、立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、NTT東日本地域循環型ミライ研究所客員研究員。専門は地域社会学、地域政策学、モビリティーズ研究。
地方移住や関係人口、観光など地域を超える人の移動に関する研究や、持続可能なまちづくりの研究・実践に携わる。
主著に『数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション』(2024、学芸出版社)、『移動と階級』(2025、講談社)、『モビリティーズ研究のはじめかた―移動する人びとから社会を考える』(共編著、2025、明石書店)がある。

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