ママには内緒だよ

  • トム・ハート著 石川康弘訳/2005年3月
  • 1800円(本体)/四六判上製・300頁

それは十一歳の朝に始まった…狡猾な父、快楽に溺れる娘、二人の関係に気づきながら見て見ぬふりをする母。雪崩を打って崩壊する家庭。三者の視点で重層的につむがれる、限りなくリアルな近親相姦の物語。
日本図書館協会選定図書
(4861100275)

著者|author

トム・ハート
1921年英国マンチェスター生まれ。妻バーバラとともに各種青少年養護施設に勤務し、ソーシャルワーカーとして恵まれない子どもたちの構成と社会復帰に貢献。1973年出版の処女作 A Walk with Allan で脚光を浴び、その後次々に話題作を発表。代表作に本書 Don’t Tell Your Mother(1979)ほか、They Call it Murder(1977)、Their Own Kind of War(1989)、Fairies and Friends(1981)などがある。1996年没。

訳者|translator

石川康弘(いしかわ・やすひろ)
1940年生まれ。青山学院大学文学部卒業後、同大学院修士課程修了。英文学(近・現代イギリス小説)専攻。現在、関東学院大学文学部教授、同大学院指導教授。
著書に『トマス・ハーディー―その知られざる世界』(北星堂)、『文学・ことば・思想』(共著、丸善プラネット)。訳書に『幸せはどこに』(かなしん出版)、『ウエスト・ポーリー探検記』(千城)、『地主の娘』(共訳、千城)など。

担当編集者から

近親相姦について報道される場合、当事者たる父娘の関係ばかりに焦点が当てられ、母親については語られることが少ないようにみえる。内田春菊『ファザーファッカー』も娘と父親の物語だった。
しかし、家庭内で「事件」は起こる以上、母親だって立派な当事者である。なぜ母親は気づかないのか、気づいても止められないのか。どんな心境なのか。本書が面白いのは、そこをあつく書いているからだと思う。
精神を病み崩れゆく母親の長い独白は凄絶。[-内藤-]

 

※品切れ重版未定