外来語の社会学

隠語化するコミュニケーション

  • 山田雄一郎/2005年9月
  • 2800円(本体)/四六判上製・332頁

現代の日本語は、〈隠語化〉と〈大衆化〉という逆向きの力がせめぎ合っている。次々に現れ、日本に氾濫する意味のはっきりしないカタカナ語に、私たちはどう対処すればよいのか。森鴎外から綿矢りさ・金原ひとみまで、小説の会話文から外来語の姿を追う。国立国語研究所「外来語言い換え案」一覧も併録。
日本図書館協会選定図書
(ISBN 486110050X)

目次|indexs

まえがき
第一章 グローバリゼーションと外来語
一 寡占化する外来語市場
地球村という幻想/グローバリゼーションと言語の階層化/英語への傾斜
二 先進国の苛立ち
英語の変身/ドイツ語を侵す英語/フランス語の反撃
三 発展途上国の悩み
インドネシアの看板騒動/ベトナムの文化と英語
四 日本語の寛容
問題の所在/終わりのない祭礼/翻訳借用と直接借用/国語審議会の問題意識
第二章 外来語と小説―大衆化の過程
一 明治―啓蒙の時代
未知への憧憬/小説の役割/原音主義の苦心
二 大正から昭和へ―大衆の登場
解放のはじまり/外来語橋の建設/原音主義の失速/九鬼周造の訴え
三 戦後―大衆化時代の幕あけ
外来語橋の完成/外来語高度成長時代
四 現代―記号化する外来語
失われる余韻/委縮する非日常/拒絶される大衆
五 概括―外来語輸入業者の交替劇
第三章 外来語とコミュニケーション
一 言語記号の恣意性と意味の透明性
透明性の仕組み/一次語と二次語
二 記号化の意味
置き換えられる日本語/花の名前/言葉のマクドナルド化―失われる人間的判断/固有名詞と普通名詞
三 コミュニケーション・ブレイクダウン
マスコミュニケーションの仕組み/マスコミュニケーションの規律違反
四 毀損されるメッセージ―外国映画のカタカナ題名
カタカナ題名の経緯/情報をもたないメッセージ/あるアンケート/映画とテレビ/カタカナ題名は合い言葉?/集団的存在
第四章 隠語化するコミュニケーション
一 外来語の排他性と集団性
マニフェスト騒動/素人と玄人―失われる境界線/漱石の意見
二 混乱の果てに
国立国語研究所の試み/言い換え案の苦心と不用意/追い払うべき相手
三 意味の復権に向けて
自己顕示欲の正体/彼らの不安
第五章 外来語の未来
一 その後の動き
外来語委員会の苦心は続く/言い換え語の現在/外来語と日本語の併記―その後/翻訳の必要性
二 小説の中の外来語再び
小説資料とその計算法/外来語と時代区分/出現率の意味/第一三〇回芥川賞
参考文献
あとがき
付録1 国立国語研究所・外来語委員会の外来語言い換え案一覧(第一回および第二回発表分)
付録2 国立国語研究所・外来語委員会の外来語言い換え案一覧(第三回中間発表分)
付録3 小説文献一覧とカタカナ外来語使用頻度

著者|author

山田雄一郎(やまだ・ゆういちろう)
1945年広島県生まれ。1973年広島大学大学院修士課程(英語教育)修了。シドニー大学、レディング大学で外国語教育学を学ぶ。専攻は言語政策、英語教育。現在、広島修道大学教授。
主著に『言語政策としての英語教育』(渓水社)、『英語教育はなぜ間違うのか』(筑摩書房)、『日本の英語教育』(岩波書店)ほか。

 

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