「新自由主義」をぶっ壊す

  • 青木育志/2010年4月
  • 1600円(本体)/四六判・並製・190頁
  • 装丁:矢萩多聞

世界金融危機・世界同時不況の元凶「新自由主義」を政策と思想の両面から徹底批判。格差を肯定する「新自由主義」から、平等に配慮した「自由主義」への道を示す。
(ISBN 9784861102264)

目次│indexs

第1章 2009年日本の政権交代
Ⅰ自民党大敗の原因
Ⅱ民主党大勝の原因
第2章 サブプライム問題
Ⅰサブプライム問題の概観
Ⅱサブプライム問題の原因
第3章 「新自由主義」政策の批判―ネオ・リベラリズムの経済政策などの批判―
Ⅰ「新自由主義」とは
Ⅱ基礎原理の解明
Ⅲ「市場原理主義」政策の批判
Ⅳグローバル資本主義の批判
Ⅴその他の原理の批判
第4章 「新自由主義」思想の批判―リバータリアニズムの哲学、倫理学の批判―
Ⅰリバータリアニズムとは
Ⅱ穏健な主張の批判―フリードマン、ハイエクの経済的自由擁護論の批判―
Ⅲ過激な主張の批判―ノージックの経済的自由擁護論の批判―
Ⅳ「市場原理主義」の哲学的批判
Ⅴ倫理学思想の流れから見れば
第5章 歴史の流れの中で
Ⅰ日本の政治、経済問題
Ⅱサブプライム問題の意味するもの
Ⅲ自由主義の流れ

著者│author

青木育志(あおき・いくし)
1947年 大阪に生まれる
1971年 大阪市立大学法学部卒業
1971年 株式会社大丸に入社
1999年 亜細亜証券印刷株式会社(現株式会社プロネクサス)に入社
2009年 同社を退社
著書
『客観主義と主観主義―哲学の根本問題』(自費出版1989年)
『河合栄治郎文献目録』(河合栄治郎研究会1994年)
『自由主義とは何か―その政治的、経済的、哲学的原理』(新風舎2004年)
『弁論術の復興―欧米的議論術の修得と教育の必要性について』(青木嵩山堂2008年)
主要論文
「新渡戸稲造と河合栄治郎」『新渡戸稲造研究』第5号(1996年9月発行)
「青木嵩山堂の出版活動」吉川登編『近代大阪の出版』(創元社2010年)

著者サイト 「青木育志の書斎」

著者からのコメント│author’s comments

二十世紀の後半以降、アングロ・サクソンを中心に「新自由主義」(リバータリアニズム)の嵐が吹き荒れた。政治面では、「新自由主義」はアメリカではロナルド・レーガン、両ジョージ・ブッシュ、イギリスではマーガレット・サッチャー、日本では先駆的には中曽根康弘、本格的には小泉純一郎により導入実施された。

経済面では、上記政権の施策によって活動しやすくなった投資家(「ハゲタカ・ファンド」)などが、製造業を軽んじ、金融業に特化し(「金融工学」の駆使)、額に汗して働く人々を無視して、大量の資金を使って、金儲けの極大化を企む「マネー・ゲーム」に突進したのである。その経済動態は「証券資本主義」「カジノ資本主義」「マネー資本主義」「強慾資本主義」と呼ばれた。

2008年のアメリカでの「サブプライム問題」「リーマン・ショック」に代表される金融危機、世界的規模での同時不況、2009年の日本の政権交代。これらはここ三十年来の「新自由主義」施策の実施に起因している。これらの大事件によって、次のことが分かる。すなわち、儲け放題で平等に配慮しない「新自由主義」はアウトであり、適度な規制をし平等に配慮する「自由主義」(リベラリズム)が採るべきこれからの道である。本書では、その悪なる「新自由主義」の施策とその思想的背景を明らかにし、それを徹底的に批判している。

本書では、その「新自由主義」の経済政策の批判の章(第3章)で、その基礎原理を解明し(第1、2節)、その大原理たる「市場原理主義」(第3節)、「グローバル資本主義」(第4節)、「小さな政府原理」(第5節)をおのおの解明、批判している。

これらの原理とその施策を行った結果、どうなったのであろうか。上記大事件の他にも、「郵政民営化」「国鉄民営化による大事故発生」「医療保険制度改悪」「製造業への派遣制度の導入」「格差問題の発生と拡大」(「ワーキング・プアの増大」)「街頭での無差別殺人事件頻発」「資源の枯渇」「環境破壊」「サブプライム問題」などが発生したのである。これらは地球的規模で悪であることは明白である。

本書では、「新自由主義」の哲学、倫理学の批判の第4章で、ミルトン・フリードマン、フリードリッヒ・ハイエクの穏健な主張の批判(第2節)、ロバート・ノージックの過激な主張の批判(第3節)、市場原理主義の哲学的批判(第4節)、倫理学思想の流れからの批判(第5節)を行っている。

「新自由主義」は現在ピンチに立っている。しかし、イデオロギー面ではまだまだ根強いものがある。我々は悪なる「新自由主義」の復活を許さないために、「新自由主義」はいかなる悪の原理か、それを知らねばならない。本書はそのための書である。しかも本書の特徴は、その説明が非常に分かりやすいというところにある。「新自由主義」の方でも体系化していない原理の体系を図示し、それは誰にも分かる明快さとなっている。混迷する現代の行く末を考える場合に格好の解説書である。

 

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