英語のルーツ

  • 唐澤一友(著)/2011年9月
  • 2000円(本体)/四六判並製・262頁
  • 装丁:矢萩多聞/装画:たけなみゆうこ

「AnneのニックネームがなぜNancy?」「every dayは名詞が並んでいるのになぜ副詞扱い?」英語の歴史的な発展をたどり、他の言語と比較。英語が深く理解できるようになる、英語学のユニークな入門書。
(ISBN 9784861102837)

目次|indexes

はじめに

序章│英語発達史概観
英語史の時代区分
古英語とは
中英語とは
豊かな英語語彙
近代英語とは
まとめ

第1章│インド・ヨーロッパ祖語民族の言語・文化・神話
インド・ヨーロッパ祖語民族の世界
インド・ヨーロッパ祖語から各言語へ
印欧語比較言語学の始まり
有史以前の世界への扉としての言語
太古の人的交流の痕跡としての言語
車輪の発明とインド・ヨーロッパ祖語民族
印欧語アナトリア起源説
トロイ出身の王侯貴族?
羊と馬とインド・ヨーロッパ祖語民族
印欧諸語の単語の構造
インド・ヨーロッパ祖語民族の神々
「父なる天の神」
母音交替(ablaut, gradation)
ボキャブラリー・ビルディングへの応用

第2章│英語の語源と印欧語比較言語学
印欧語の語源学を支える印欧語比較言語学
ゲルマン語派に起きた音韻変化1 ― グリムの法則
意外な同語源語1 ― headとchief
意外な同語源語2 ― guestとhost
言葉を通じて見る古代社会
ゲルマン語派に起きた音韻変化2 ― ヴェルネルの法則
wasとwereの関係 ― r音化(rhotacism)
参考―第二次子音推移
ゲルマン祖語におけるアクセント位置の固定
参考―頭韻詩の発達

第3章│印欧諸語の中の英語
インド・ヨーロッパ祖語の文法的特徴
名詞の文法性(grammatical gender)
文法性から自然性へ
北から南へ波及した文法性の消失
インド・ヨーロッパ祖語における名詞の数(number)
インド・ヨーロッパ祖語における名詞の格(case)
インド・ヨーロッパ祖語の8つの格
主な印欧諸語における格変化
格変化の用法
主格(nominative)、呼格(vocative)
属格(genitive)
days and nightsの起源 ― 副詞的属格(adverbial genitive)1
与格(dative)
対格(accusative)
副詞的対格(adverbial accusative)
副詞的目的格(adverbial objective)
奪格(ablative)
具格(instrumental)
位格(locative)
格変化と語順の関係
格の統合(case syncretism)
some dayの起源 ― 副詞的与格(adverbial dative)
sinceの起源 ― 副詞的属格2
格変化の衰退と前置詞の用法の発達
前置詞の起源
前置詞の格支配
英語における前置詞の用法の発達
英語の難しさ
今なお失われつつある格の感覚
格の感覚の喪失を反映した言葉遣いと過剰訂正
形容詞
動詞
「三単現の -s」の起源―動詞の人称変化
保守的なbe動詞
動詞の活用変化と主語の省略
動詞の数(number)
主な印欧諸語における動詞の語形変化
動詞の時制
印欧諸語における動詞の単純時制
ゲルマン語における動詞の時制
2種類の完了形
I am finished.の起源 ― 自動詞の完了形
haveを用いた完了形の起源
現在完了の感覚
進行形の起源と発達
I’m lovin’ it の謎 ― 進行形で使われる状態動詞
印欧諸語における動詞の態
英語における受け身構文の起源と発達
英語における紆言的表現のさらなる発達
動詞の法(mood)
叙想法(仮定法)の感覚
仮定法現在の感覚
仮定法過去の感覚
劇的現在(dramatic present)

第4章│古英語から現代英語まで
古英語の名詞
複数語尾 -s, 所有格語尾 -’sの祖先 ― 古英語の名詞1
単複同形の名詞の起源 ― 古英語の名詞2
複数語尾 -en の祖先 ― 古英語の名詞3
foot-feetタイプの不規則変化名詞の起源 ― 古英語の名詞4
on footの謎?
FranceとFrenchの関係 ― i-mutationの影響
曖昧母音の出現と格変化崩壊の始まり
北から南へ伝わった名詞語形変化の単純化
中英語の南部方言における名詞の語形変化
なぜ -s複数、-’s属格が優勢になったのか ― 類推作用(analogy)
英語における形容詞語形変化の衰退
英語における指示詞語形変化の衰退
保守的な人称代名詞
なぜ借用語they-their-themが本来語に取って代わったのか?
なぜAnneのニックネームはNancyなのか?
古英語の動詞
drive-drove-drivenタイプの不規則変化動詞の起源
規則変化動詞の起源
think-thought-thoughtタイプの不規則変化動詞の起源
類推による強変化動詞の衰退
welcomeの過去形はなぜwelcameでないのか? ― 弱変化動詞台頭の背景
古英語動詞の人称変化
中英語動詞の人称変化
近代英語~現代英語における人称変化
まとめ

第5章│文字と綴りのルーツ
文字使用の始まり
文字の起源と発達
ラテン文字の起源
ゲルマン人のルーン文字
ルーン文字のその後
西ヨーロッパのキリスト教化とラテン文字の普及
古英語期の綴り
中英語期の綴り
印刷技術の導入、標準語の確立、大母音推移と英語の綴り字
発音の変化に由来する黙字
綴りの改変に由来する黙字
外国語の綴りの影響
/s/音を表す綴り
さまざまな綴りのルーツ
大文字、小文字の名称の由来
綴り字改革は必要か?
非民主的な言語としての英語と綴りの問題

あとがき
参考文献
索引

著者|author

唐澤一友(からさわ・かずとも)
1973年、東京生まれ。1997年、上智大学文学部英米文学科卒業。
2001年、オクスフォード大学(Campion Hall)留学。同年、日本中世英語英文学会松浪奨励賞佳作。
2002年、上智大学大学院文学研究科英米文学専攻博士後期課程満期退学。同年、横浜市立大学国際文化学部欧米文化学科専任講師。
2007年、日本英文学会第30回新人賞受賞。
2008年、博士(文学)(上智大学)。学位論文 “The Verse Menologium, the Prose Menologium, and Some Aspects of Computistical Education in Late Anglo-Saxon England – A New Edition.”
2009年、駒澤大学文学部英米文学科准教授。
2010年、福原英米文学研究助成基金 第18回福原賞(研究助成)受賞。
2011年より駒澤大学文学部英米文学科教授。著書に『アングロ・サクソン文学史:韻文編』、『アングロ・サクソン文学史:散文編』(東信堂)、『多民族の国イギリス―4つの切り口から英国史を知る』(春風社)、翻訳に『中英語ロマンス イポミドン伝』(専修大学出版局)、共著書に『アイスランドの言語、神話、歴史』(麻生出版)、『「ベーオウルフ」とその周辺―忍足欣四郎先生追悼論文集』(春風社)、Multiple Perspectives on English Philology and History of Linguistics (Peter Lang)、From Beowulf to Caxton: Studies in Medieval Languages and Literature, Texts and Manuscripts (Peter Lang)他がある。

 

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