八月の瓜

母へ

  • 彭学明(著)、立松昇一・舟山優士(訳)/2016年8月
  • 2500円(本体)/四六判並製332頁
  • 装丁・レイアウト:矢萩多聞

中国少数民族・土家(トウージア)族の著名な作家による自伝的小説。
文化大革命、大飢饉……過酷な生活の中で四度結婚し、
子どもたちを育てた母の愛と執念。
湘西(シアンシー)地方を舞台に、
母と子の確執、子の母への思いを濃密に描く。
本邦初訳!
(ISBN 9784861105203)

日暮れ時に、母は一軒の家を訪ね、水を一口、ご飯を一碗もらおうとした。もらえなければ、母は別の家を訪ねた。近くに家がなければ、母は飢えを耐え忍ぶしかなかった。本当に耐えられなくなったら、火を焚いて、繕ってきたトウモロコシかさつまいもを一つ焼いて、泉の水を飲み、飢えを満たした。それから風雨橋、岩陰、あるいは雨や風を避けられる場所を探し、稲わらを敷いて、寝泊まりした。(本文より)

著者|author

彭学明(ポン・シュエミン)
1964年、湖南省生まれの作家。中国少数民族のひとつ、土家(トウージア)族。散文集に『我的湘西』(「わたしのふるさと湘西地方」1995年)、『祖先歌舞』(「祖先の伝えた歌・踊り」1998年)、『一個人的湘西辞典』(「私だけの湘西辞典」2012年)などがある。

訳者|translators

立松昇一(たてまつ・しょういち)
1948年生まれ、拓殖大学外国語学部教授、専門分野は中国近現代文学、中国文化史。訳書に莫言『疫病神』(勉誠出版)、劉慶邦『神木』(共訳、勉誠出版)、その他の翻訳作品に李修文「ストリーキング指南」(『現代中国文学短編選』鼎書房)、畢飛宇「コオロギ コオロギ」(『中国現代文学』ひつじ書房)、朱山坡「叫び」(『灯火』北京外文出版社)などがある。

舟山優士(ふなやま・ゆうじ)
1985年生まれ。翻訳家。訳書に『尹先生の中国ことわざ教室4 歇后語100』(泉書房)、その他の翻訳作品に張悦然「黒猫は眠らない」、沈石渓「ゴーラルの飛翔」「狐狩り」、笛安「円寂」(以上、『中国現代文学』ひつじ書房)などがある。『中国現代文学』同人として現代中国の小説の翻訳や紹介を行っている。

 

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