「精霊の仕業」と「人の仕業」

ボルネオ島カリス社会における災い解釈と対処法

  • 奥野克巳/2004年2月
  • 6476円(本体)/A5判・328頁

インドネシアの「辺境」ではいまも、神託による裁判が開かれる― インドネシアの辺境カリス社会の暮らし、神話、儀礼、癒し、呪い、狂喜を包括的に伝える生々しい人類学調査の記録。著者が現地で撮影した、貴重な資料と写真をふんだんに収録! 現在もおこなわれる「バパック神判」とは?
(ISBN 4861100003)

目次|indexs

第一章 カリス社会について
【I】災因論研究の視点
【II】ボルネオ島諸社会の災因論研究
【III】カリス社会における病気・けが・死
【IV】フィールドワークと本書の構成
第二章 神話・歴史と精霊世界
【I】調査地の概況
【II】民族集団としてのカリス
【III】カリスの社会組織
【IV】カリスの経済生活
【V】インドネシア国家と辺境としてのカリス社会
第三章 病気から死へ
【I】「われわれの祖先の話」
【II】神話・歴史の聞き取りの経緯
【III】調査の夢見、カリスの解釈
【IV】テテオンバン儀礼の手続き
【V】拡張する災因論
第四章 カタベアアン
【I】災因論記述の新たな可能性
【II】幼児の病気と死
【III】呪詛・猫殺し・夢見
【IV】災因の非決定性と不可視界の恐怖
【V】災因論の別の読み方
第五章 病気治しとしてのバリアン儀礼
【I】食べることと飲むこと
【II】調査の経験から
【III】カタベアアンによる災いの説明
【IV】カタベアアンにならないために
【V】問題の在処とカリスのシャーマニズム
第六章 災厄としての狂気
【I】二つの狂気
【II】マウノと呼ばれる人びと
【III】聖霊によってラオラオにされた人びと
【IV】狂気をめぐる災因論の外部と内部
第七章 パルマコンとしての毒薬
【I】悪名高き毒薬使いとしてのカリス
【II】災いを引き起こす毒薬
【III】対抗薬による儀礼
【IV】毒薬所有者へのインタヴュー
【V】毒薬をめぐる災因論状況
第八章 邪術師を暴き出す
【I】邪術・辺境・近代
【II】狂気の原因としての邪術
【III】神から人に委ねられた神判
【IV】邪術告発をめぐる辺境の知
【V】毒薬をめぐる災因論状況

著者|author

奥野克巳(おくの・かつみ)
桜美林大学助教授。
主要著書
『文化人類学のレッスン―フィールドからの出発―』(花渕馨也と共編著)学陽書房、2005年
帝国医療と人類学』春風社、2006年

担当編集者から

この本には、不思議な精霊と毒薬使いの話がたくさん出てきます。
たとえばこんな具合。
【バジョン】
バジョン(bajong)は、妬ましい相手がいつも通り過ぎる道に埋められる。
かかると、大勢の人の前で知らぬ間に排尿・排便するようになるという。
【ジャン】
とくに人を殺すのに使われる毒薬で、一説によると、その瓶には白蟻が入っている。
相手の近くで呪文を唱えながら、中味を相手に向かって放つと、中味は、身体の内部に入り込んで、相手を蝕み、ついには殺してしまう。
【プルン】
小瓶の底に敷かれた水分を含んだ綿の上に針などが刺さっていて、これを呪文とともに相手に向かって飛ばすと、風に乗って、相手の体内に入る。
それが心臓に突き刺されば、相手は一瞬のうちに死ぬ。
【ブフタイ】
ブフタイの瓶には、人の血を吸って生きる「犬」が入っている。
所有者は毎晩、手指を傷つけ、その血を瓶のなかに少しずつ垂らして、「犬」を餌づけする。
それだけでは足りないので、所有者は、瓶のなかの「犬」を定期的に解放して、誰かを餌食にする。
そのようにして世話をし、育てていくと、「犬」は、いざというときに、所有者の命令に従う。
【ジャヤウ】
小さな瓶に入ったジャヤウをからだに振り掛ければ、自分を美しく見せることができ、続けざまに性交渉をおこなうことができる。
ほら、気になるでしょう。もっと知りたくなるでしょう。
続きは買って読んでください。[-内藤-]

 

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