カフカエスクを超えて

カフカの小篇を読む

  • 松原好次(著)/2023年4月
  • 3100円(本体)/四六判並製472頁
  • 装丁:難波園子

カフカエスク(カフカ的)という語はカフカ文学の不条理性と結びつけられることが多いが、実は、現実世界で起こる当惑・焦燥・恐怖・絶望などを伴う事象が「映画的に」描写されることから生じる結果として、不条理と捉えられていることもあるのではないか。――第二部より
パンデミックや戦争など超現実的とも思える事態が起きている現実世界と対峙しつつ、カフカの小篇を読む。エッセイ集『ことばへの気づき』(2021年)続篇。
(ISBN 9784861108464)

目次|contents

はじめに
第一部 現実と非現実の境を行き交う
(1)「商人」―膝をかがめて細い鏡をのぞきこむ
(2)「天井桟敷にて」―〈止めろ〉と渾身の叫びを上げるやも知れない
(3)「隣人」―ハラスは、いつも非常に急いでいて・・・
(4)「夜に」―なぜおまえは目覚めているのだ?
(5)「雑種」―半分は猫、半分は羊という変なやつだ。父からゆずられた
(6)「家父の心配」―誰の害になるわけでないのは明らかだが・・・
第二部 脇に身を置いて眺める
(1)「小さな寓話」―この長い壁がみるまに合わさってきて
(2)「根気だめしのおもちゃ」―球の意見によると・・・
(3)「もどり道」―心の影は消えてくれない
(4)「乗客」―ぼくは電車のデッキに立っている
(5)「はげたか」―血のなかではげたかが溺れたのを見て、ほっと安心した
(6)「ポセイドン」―大洋の底に鎮座して、たえまなく計算しつづけていた
(7)「セイレーンたちの沈黙」―オデュッセウスは、彼女らの沈黙を聞かなかった
第三部 終わらないように終わる
(1)「こま」―不器用な鞭で叩かれたこまのように、彼はよろめいた
(2)「皇帝の使者」―使者はなんと空しくもがいていることだろう
(3)「出発」―遠くから、喇叭の音が聞こえてきた
(4)「新しいランプ」―全部が片付きしだい、新しいランプを支給しよう
(5)「中庭の門をたたく」―妹は、その門をたたいた
(6)「掟の門」―この門は、おまえひとりのためのものだった
あとがき
参照した文献

著者|author

松原好次(まつばら・こうじ)
東京外国語大学外国語学部ドイツ語学科卒業。元電気通信大学教授。専門は言語社会学、言語政策。特に、少数民族言語(先住民族や移民の言語)の衰退・再活性化について研究。主要著書・訳書に、Indigenous Languages Revitalized?: The Decline and Revitalization of the Indigenous Languages Justaposed with the Predominance of English(Shumpusha, 2000)、『大地にしがみつけ―ハワイ先住民族女性の訴え』(ハウナニ=ケイ・トラスク著、春風社、2002年)、『ハワイ研究への招待―フィールドワークから見える新しいハワイ像』(共編、関西学院大学出版会、2004年)、『消滅の危機にあるハワイ語の復権をめざして―先住民族による言語と文化の再活性化運動』(明石書店、2010年)『言語と貧困―負の連鎖の中で生きる世界の言語的マイノリティ』(共編、明石書店、2012年)、『英語と開発―グローバル化時代の言語政策と教育』(監訳、春風社、2015年)、『難民支援―ドイツメディアが伝えたこと』(春風社、2018年)、『ことばへの気づき―カフカの小篇を読む』(春風社、2021年)など。

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