吉屋信子―小説の枠を超えて

吉屋信子

小説の枠を超えて

  • 山田昭子(著)/2024年7月
  • 3300円(本体)/四六判上製366頁
  • 装丁:大國貴子

一作家としての屹立
戦前の少女小説家の代表者である吉屋信子。しかし、彼女の文学世界はそこのみにとどまるものではなかった。
童話、少女小説、大衆小説、評伝小説と、領域を横断しながら描き出された多彩な作品を、丹念な書誌研究をもとに読み解く。
(ISBN 9784861109683)

目次|Contents

はじめに
Ⅰ 童話・少女小説
第一章 吉屋信子、その〈少女性〉――童話から少女小説へ
第二章 『花物語』における少女たちの裏切り――「睡蓮」論
第三章 〈競い合う少女〉たち――『少女倶楽部』における運動小説について
第四章 『花物語』の終焉――「薊の花」論
第五章 母からの離脱――『からたちの花』論
Ⅱ 大衆小説
第六章 遍歴する女と三人の男たち――『良人の貞操』論
第七章 まなざされるボルネオ――『新しき日』における『風下の国』の意味
Ⅲ 戦後――大衆小説・評伝小説
第八章 変転する〈母〉の物語――『安宅家の人々』論
第九章 歴史小説への紐帯――『香取夫人の生涯』論
Ⅳ 吉屋信子研究の現在とその展望
吉屋信子作品年表

著者|Author

山田昭子 (やまだ・あきこ)

神奈川県生まれ。専修大学大学院文学研究科日本語日本文学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。現在、専修大学・東洋英和女学院大学・関東学院大学・白百合女子大学・立正大学の非常勤講師をつとめる。主な論文に、「『新女苑』における中里恒子の仕事」(『芸術至上主義文芸(49)』、二〇二三年一一月)、「二つの厠の物語――川端康成「化粧」、吉屋信子「隣家の厠」をめぐって」(『芸術至上主義文芸(48)』、二〇二二年一一月)、「文字の美しさと少女の美――少女雑誌広告に見る文字指導の変遷」(『ことばと文字(12)』、二〇一九年一〇月)など。

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ベルブアルブアルの世界―マレーシアの柔構造時間と柔構造社会

ベルブアルブアルの世界

マレーシアの柔構造時間と柔構造社会

  • 板垣明美(著)/2024年6月
  • 3000円(本体)/四六判並製340頁
  • 装丁:矢萩多聞
  • 挿画:越野世帆里

「お金の理論」と「人の理論」のバランスをとるメカニズムとは?
カギとなるゼロ時間(無の時間)をマレーシアの農村で徹底調査し、その役割と重要性を明らかにする。
(ISBN 9784861109201)

目次|Contents

はしがき
序 章 文化人類学が捉えた「時間」と「環境問題=持続可能性」の関連
第1章 マレー人農村の柔構造時間と柔構造社会
――新しい技術も自分たち流に
第2章 ベルブアルブアルの世界
――マレー人農村におけるおしゃべり活動とその成員
第3章 マレー人農村は変わったか
――マレーシア・ケダ州の大規模灌漑プロジェクトと農民の対応
第4章 マレーシアにおける農薬使用の抑制のフィードバック
――ケダ州ムダ地域G村の「漁労稲作果樹菜園文化生態系」の事例
あとがき
アペンディックス

著者|Author

板垣明美 (いたがき・あけみ)

1985年筑波大学環境科学研究科修士課程修了、1993年筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。
横浜市立大学都市社会文化研究科准教授。
主要著書に『癒しと呪いの人類学』(2003年、春風社)、『ヴェトナム―変化する医療と儀礼』(編著、2008年、春風社)ほか。

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芥川龍之介の中国遊歴―光と影の軌跡

芥川龍之介の中国遊歴

光と影の軌跡

  • 藤谷浩悦(著)/2024年6月
  • 6800円(本体)/A5判上製624頁
  • 装丁:根本眞一(クリエイティブ・コンセプト)

中国という鏡を通して、日本を見つめ直す
常に新しい分野に突き進もうとし、最後まで孤高を貫いた芥川龍之介。中国旅行は重要な転換点であり、心のなかで、決定的に何かが変わった――
本書は、芥川龍之介が一九二一年三月から七月までに行った中国遊歴について、同時代の中国や朝鮮、日本で起きた出来事に着目しつつ、芥川の前後に中国を遊歴した人々の記録を参照しながら再現し、あわせてこの中国遊歴が芥川に与えた影響を考察するものである。(本書序論より)
(ISBN 9784861109669)

目次|Contents

序論
第一編 東京から上海へ
第1章 旅立ちまで―中国への思い
第2章 上海到着の前後―東亜新聞記者大会
第3章 著名人との会談―鄭孝胥、章炳麒、李人傑
第4章 上海の名所探訪―芝居と歓楽街、芸妓
第二編 長江流域の周遊
第5章 杭州と蘇州の衝撃―排日運動の底流
第6章 蘇州、鎮江、揚州の周遊―江南の風景と情感
第7章 上海の別れ、蕪湖の再会―亡き母への思い
第8章 九江と廬山、漢口の旅―在留日本人の特徴
第9章 漢口から長沙へ―古典研究の隘路
第三編 北京から東京へ
第10章 京漢鉄道の旅―上海の極東オリンピック大会
第11章 洛陽から北京へ―文化の重さ
第12章 天津への嫌悪感―北京郊外の旅
第13章 田端の自宅への帰還―奉天、京城から東京へ
結論

著者|Author

藤谷浩悦 (ふじや・こうえつ)
1957年、秋田県に生まれる。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科(東洋史専攻)単位取得満期退学。博士(文学)。人文学研究者
著書:『湖南省近代政治史研究』(汲古書院、2013年)、『戊戌政変の衝撃と日本―日中聯盟論の模索と展開』(研文出版、2015年)、『井上雅二と秀の青春(一八九四-一九〇三)―明治時代のアジア主義と女子教育』(集広舎、2019年)
編著書:(饒懐民との共編)『長沙搶米風潮匯編』(岳麓書社、2001年)、『良き師と友、塾生に支えられて―藤谷正治郎(薫水)とその時代』(非売品、2017年)

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イギリス湖水地方―ピーターラビットのガーデンフラワー日記

イギリス湖水地方

ピーターラビットのガーデンフラワー日記

  • 臼井雅美(著)/2024年6月
  • 2200円(本体)/四六判並製162頁
  • 装丁・レイアウト:矢萩多聞

イギリス湖水地方で出会った、個性豊かな花々の共演――
季節の移ろいにそってトレッキングした際に出会った、カントリー・ハウスやコテージなどのガーデンとそこに植えられた草木をカラー写真とともに紹介するエッセイ。『イギリス湖水地方―ピーターラビットの野の花めぐり』(2023年)の続編。
(ISBN 9784861109485)

目次|contents

プロローグ
Ⅰ 春の囁きに誘われて
春雨のしずくの精たち クロッカス(Crocus)
パレットから飛び出した黄色いブーケ スイセン(Narcissus)
小さな星たちの願い ヒヤシンス(Common Hyacinth)
陽光に向けて、満面の笑顔 パンジー(Pansy)
大切な宝物を守っているよ チューリップ(Tulip)
秘境からやってきた客人 ブルーポピー(Blue Poppy)
にっこり赤ちゃんのほっぺ ナデシコ(Pink)
みんなで集まって大合奏 ベルフラワー(Bell Flower)
黄色のショールがふんわりと レンギョウ(Golden Bells)
ハンカチを振ってごあいさつ モクレン(Mulan Magnolia)
両手からこぼれそうな幸せの束 シャクナゲ(Rhododendron)
秘密の誓いの証 バラ(Rose)
Ⅱ 初夏から夏へ、光との共演
小さな森から顔を出した子供たち ベゴニア(Begonia)
溢れ出る思いを込めて ペチュニア(Petunia)
窓辺のささやき声 ゼラニウム(Garden Geranium)
耳元で揺れるイヤリング フクシヤ(Fuchsia)
小さな蝶たちのピクニック ロベリア(Edging Lobelia)
葉っぱのお皿に添えられて ナスタチウム(Nasturtium)
香りのメッセンジャー ラヴェンダー(Lavender)
虹色のキャンドルが放つ光 アイリス(Iris)
手のひらいっぱいの喜び クレマチス(Clematis)
色と水の魔術師 アジサイ(Japanese Hydrangea)
黄緑のクッションにもたれて ギボウシ(Plaintain Lily)
庭で踊るボールたち アリウム(Allium)
雨上がりに灯った小さな炎 アザレア(Azalea)
天から降り注いだ金の鎖 ラバーナム(Laburnum)
紫のドレスに包まれて フジ(Japanese Wisteria)
揺れる赤いビーズの房 セイヨウスグリ(Gooseberry)
Ⅲ 秋のそよ風に揺れて

星たちの静かな願い アスター(Aster)
宇宙からの使者 コスモス(Common Cosmos)
秋風に向かって、Shall we dance? シュウメイギク(Japanese Anemone)
黄色いコスチュームでイナバウワー イエローコーンフラワー(Yellow Coneflower)
庭を跳ね回る子供たち エキノプス(Echinops)
荒れ地から噴き出した恵み エリカ(Erica)
背伸びをして何を見ているの? ユリ(Lily)
秋を守るガードマン パンパスグラス(Pampas Grass)
恥ずかしがり屋さんのシルエット シクラメン(Cyclamen)
魔女が吹きかけた息の跡 ウィッチヘーゼル(Witch Hazel)
Ⅳ 冬から春に向けて
雪の精からの贈り物 クリスマスローズ(Christmas Rose)
暖かなケープをまとって ツバキ(Camellia Japonica)
寒風からしっかりと身を守って ボケ(Flowering Quince)
お祝いの時がやってきたよ セイヨウヒイラギ(European Holly)
春へのプレリュード セイヨウサンシュユ(Cornelian Cheery Dogwood)
赤と緑のネックレス コトネアスター(Cotoneaster)
ほのかな灯りのシンフォニー ロウバイ(Chimonanthus)
エピローグ
参考文献

著者|author

臼井雅美(うすい・まさみ)
1959年神戸市生まれ。同志社大学文学部・文学研究科教授。神戸女学院大学卒業後、同大学院修士課程修了(文学修士)、1987年ミシガン州立大学修士課程修了(M.A.)、1989年博士課程修了(Ph.D.)。ミシガン州立大学客員研究員を経て、1990年広島大学総合科学部に専任講師として赴任。同大学助教授、同志社大学文学部助教授を経て、2002年より現職。著書に、『記憶と共生するボーダレス文学―9・11プレリュードから3・11プロローグへ』(2018年)、『カズオ・イシグロに恋して』(2019年)、『赤バラの街ランカスター便り』(2019年)、『ビアトリクス・ポターの謎を解く』(2019年)、『不思議の国のロンドン』(2020年)、『ボーダーを超えることばたち―21世紀イギリス詩人の群像』(2020年)、『記憶と対峙する世界文学』(2021年)、『ふだん着のオックスフォード』(2021年)、『イギリス湖水地方アンブルサイドの女神たち』(2021年)、『イギリス湖水地方モアカム湾の光と影』(2022年)、『ブラック・ブリティッシュ・カルチャー―英国に挑んだ黒人表現者たちの声』(2022年)、『イギリス湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツ運動』(2023年)、『イギリス湖水地方―ピーターラビットの野の花めぐり』(2023年)などがある。

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ホダセヴィチ詩集―ロシア詩篇・亡命詩篇

ホダセヴィチ詩集

ロシア詩篇・亡命詩篇

  • 三好俊介(編訳)/2024年6月
  • 3100円(本体)/四六判上製224頁
  • 装丁:矢萩多聞

本邦初の本格的紹介。
革命の戦乱と言論弾圧のもと、詩人の尊厳と自由への希望をうたった言葉の魔術師ホダセヴィチ。ナボコフは彼を「20世紀最大のロシア詩人」と呼んだ。(『賜物』英語版序文)。
(ISBN 9784861109638)

目次|contents

Ⅰ モスクワ詩篇
受動態
欠落
愛しき友に
夕べ
祈り

小川
ペトロフスキー公園で
穀粒の道を
〈雨あがりの夜は暖かく、甘い香りがする……〉
音楽

Ⅱ ペテルブルク詩篇
曲芸師

〈哀れなわがプシュケー!……〉
〈たとえ過去など惜しくなく……〉
日記から
客に
あらし
〈私は人も自然も好きなのだが……〉
窓の外(第一)
窓の外(第二)
コルク栓
たそがれ
バッコス
バラード(〈上から明かりを浴びて、丸い自室に……〉)
〈貴婦人は長いこと手を洗った……〉
〈踏み越えよ、跳ね越えよ……〉
〈母ではなく、トゥーラの農婦の……〉
証拠
〈地上の美を私は信じない……〉
三月
〈秘められた幻力の覆いを……〉

Ⅲ 亡命詩篇
〈粗野な生業を眺めていても……〉
ベルリン的
〈疲れ果てて私は寝床から起き上がる……〉
水車小屋
〈春の無駄口で緩みはしないのだ……〉
盲人
〈神は在られる! 知を尊び不可解を嫌う私は……〉
〈すべてが石造り。石造の吹き抜けの中へと……〉
鏡の前で
バラード(〈私は自分を抑えられない……〉)
ペテルブルク
ソレントの写真
〈悪天候の冬の日を突き抜けて……〉
記念碑

【補遺】ホダセヴィチによる回想(抄)
1.帝政末期とロシア象徴派
2.革命下のモスクワ
3.革命下のペテルブルクと「芸術会館」
————————————————

・作品注解
・解説 ヴラジスラフ・ホダセヴィチ―人と作品
・ホダセヴィチ年譜
・訳者あとがき

著者|author

ヴラジスラフ・ホダセヴィチ(Владислав Ходасевич)
(1886-1939)モスクワ生まれ。父親はポーランド士族の末裔で、母親はユダヤ人だが、執筆言語はロシア語。象徴派詩人の一員として出発するが、ロシア革命前後の戦火と窮乏、言論弾圧のなかで、生への希望をうたって独自の詩風を確立。自由の希求と、暴力の嫌悪ゆえ、革命賛美の立場はとらなかった。後に亡命して、パリで没す。文芸評論の仕事も多い。ソ連では禁書とされたが、文学への愛情にあふれる知的な詩風は、ナボコフら高名な文学者にも高く評価された。

編訳者|editor and translator

三好俊介(みよし・しゅんすけ)
駒澤大学教授。博士(文学・東京大学)。東京大学教養学科卒業、同大学院人文社会系研究科修了。専攻は19~20世紀ロシア詩。

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挨拶の哲学

挨拶の哲学

  • 鳥越覚生(著)/2024年5月
  • 3500円(本体)/四六判上製240頁
  • 装丁:矢萩多聞

挨拶に関し様々な角度から思索を重ね、挨拶という現象の意義を解明する。

「挨拶は大文字の理念ではない。挨拶は頭や理性からの指令ではなくて、我が身からあふれてくる幽かな宇宙ことばである。これはまた、人間に残された最後の小さな「やさしさ」と言ってもよい。と言うのも、真正の挨拶はわが身、それもその底辺である足裏から湧き上がってくるものだからである。」(本文より)

(ISBN 9784861109270)

目次|contents

はじめの挨拶
第一部 思想史篇 ショーペンハウアーからレヴィナスへ
佇む傍観者からの挨拶
第一章 無責任の散歩
第二章 暗がりの色彩論
第三章 色彩の挨拶
第四章 世界を映す一つの眼と巨人
第五章 立ち上がって、祈っていなさい
第二部 教示篇 挨拶の哲学 よく生きるために
はじめの挨拶
第一章 人間の無関心
第二章 共生共苦の宇宙ことば
第三章 挨拶と祈り
おわりの挨拶 人間のやさしさに賭ける
あとがき
初出一覧
索引

著者|author

鳥越覚生 (とりごえ・かくせい)
1984年石川県金沢市生まれ
博士(文学・京都大学)
主要著作
『佇む傍観者の哲学 ショーペンハウアー救済論における無関心の研究』晃洋書房、2022年

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月印釈譜

月印釈譜

  • 河瀬幸夫(訳)/2024年5月
  • 6000円(本体)/A5判1162頁 ※本書は固定レイアウト型の電子書籍です。

15世紀に創製された当時のハングルで書かれた、釈迦の生涯と教えを伝える『釈譜詳節』・『月印千江之曲』・『月印釈譜』三書の日本語訳。『月印千江之曲』は中世韓国語の原文を掲載。
(ISBN 9784861109645)

目次|contents

月印釈譜 上
口絵
凡例
はじめに
月印釈譜第一
月印釈譜第二
釈譜詳節第三
月印釈譜第四
月印千江之曲第五
釈譜詳節第六
月印釈譜第七
月印釈譜第八
釈譜詳節第九
月印釈譜第九
月印釈譜第十
釈譜詳節第十一
月印釈譜 中
釈譜詳節第十三
釈譜詳節第十九
釈譜詳節第二十
釈譜詳節第二十一
月印釈譜
月印釈譜第十一
月印釈譜第十二
月印釈譜第十三
月印釈譜第十四
月印釈譜第十五
月印釈譜第十七
月印釈譜第十八
月印釈譜第十九
月印釈譜 下
月印釈譜第二十
月印釈譜第二十一
月印釈譜第二十二
月印釈譜第二十三
釈譜詳節第二十三
釈譜詳節第二十四
月印釈譜第二十五
付録

訳者|translator

河瀬幸夫(かわせゆきお) 
1945年、東京都大田区に生まれる。1973年、早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻修士課程を修了し、私立横須賀学院高校の国語教員となる。1979年、韓国を旅行したことが契機となり、韓国語の学習を始める。2003年、横須賀学院を退職して、ソウルの東国大学校大学院仏教学科(仏教史学専攻)に入学。在学中、高麗大蔵経について学ぶ中で、15世紀に創制された当時のハングルを使い韓国語に翻訳された多数の仏典があることを知る。2007年に大学院の課程を終えた後、横浜の自宅で韓国語仏典の日本語訳に専念する。訳書に『釈譜詳節』(上・中・下、2010~2013年、春風社)、『法華経諺解』(上・下、金星周との共訳、2017~2018年、春風社)がある。

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産後の〈風〉―病いの語りからみる韓国社会とジェンダー

産後の〈風〉

病いの語りからみる韓国社会とジェンダー

  • 諸 昭喜(著)/2024年5月
  • 3600円(本体)/A5判並製272頁
  • 装丁:苑田菊見

文化的表象としての「苦しみのイディオム」
韓国の民俗病「産後風(サヌプン)」をめぐる人びとの語りから、その病いが1980年以前、女性たちが置かれた劣等な地位、経済的貧困と過度な労動による心理的、肉体的苦痛という社会・文化的背景から構築され、いまなお〈風〉は、弱者として生きてきた韓国女性全体に「苦しみのイディオム」として共有され続けていることを、人類学的に論究する。

(ISBN 9784861109577)

目次|contents

はじめに――「声なき声」をすくい上げる

序 章 病いからみる社会
1. 民俗病の研究と歴史
2. 産後の病い
3. 本書の構成

第1章 韓国の医療環境と出産
1. 韓国の医療体系
2. 韓方医学の社会的位置づけ
3. 出産の慣習と文化――産室から病院の分娩室へ
4. 出産の医療化と背景

第2章 「産後風」という病い
1. 産後をめぐる観念
2. 産後風の歴史的由来と定義
3. 産後風の症状
4. 治療と健康管理行為

第3章 患う女性――病いの語りとジェンダー
1. 「女性のオーラル・ヒストリー」と「病いの語り」の間

2. 産後風の語りにみられる韓国女性の生活
3. 「ないはずがない身体」の意味づけ

第4章 治療する側――韓方医学における疾病の社会的構築
1. 韓方医学における産後風の持続、変化、拡大
2. 韓方医による病理化
3. メディアによる知識の流通

第5章 ケアする人――産後調理院と産後調理士の登場と発達
1. ケアされなかったお母さんたち
2. 産後ヘルパーから健康管理士へ
3. 「産後調理院」のケアと儀礼の変容
4. 強化されていく産後ケア

終 章 消えゆく病名――「産後風」とはなにか
1. 文化的表象としての「苦しみのイディオム」
2. 産後風からみる女性の望み
3. 西洋医学のパラダイムにおける民俗的な病い
4. 産後風の治療に関わる課題

おわりに
初出一覧
参考文献

著者|author

諸 昭喜(チェ・ソヒ)

奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。
国立民族学博物館グローバル現象研究部助教。
韓国、台湾、バングラデシュでの妊娠中と出産時の女性の疾病と治療について研究を行っている。
主な著作に、共著『痛みからみえてくること』(韓国語、Humanitas, 2021年)や『尊厳と生存』(法政大学出版局、2022年)、論文「韓国女性のソーシャル・サファリングの身体化―「産後風」の語りを中心に」(『日本ジェンダー研究』、2018年)、「東洋医学における疾患の社会的構築―韓国の産後風を事例として」(『人体科学』、2018年)ほか。

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アンリ・ワロンの精神発生学と人間発達研究―その思想と理論の現代的意義を探って

アンリ・ワロンの精神発生学と人間発達研究

その思想と理論の現代的意義を探って

  • 亀谷和史(著)/2024年3月
  • 4200円(本体)/四六判上製304頁
  • 装丁:長田年伸

20世紀初頭から半ばにかけて心理学研究に携わったアンリ・ワロンの人間発達思想を、〈精神発生学〉の構想という観点からひもとく。現代の発達心理学の領域に収まらないその哲学的・ 発達思想的な理論の到達点や展望、意義を検討し、〈精神〉の発生・発達過程の本質と、これまで見逃されてきた心身の相互関係を探る。
(ISBN 9784861109331)

目次|Contents

凡例
はじめに
序章 アンリ・ワロンが生きた時代と今日のワロン研究の到達点
第1章 アンリ・ワロンの〈精神発生学〉の構想と人間発達研究
第2章 アンリ・ワロンの発達研究の先駆性と〈意識〉の発生的研究
第3章 アンリ・ワロンの発達理論における〈姿勢機能(システム)〉概念と模倣発達論
第4章 アンリ・ワロンの発達理論と乳児保育――〈こころ〉と〈からだ〉の発達の統一的理解をめざして
第5章 アンリ・ワロンの発達理論における〈機能〉把握と機能連関
第6章 アンリ・ワロンの精神病理学研究と『病理心理学』――その認識論的立場をめぐって
第7章 アンリ・ワロンの人格発達研究における〈指向性〉の機能
補章 アンリ・ワロン著『行為から思考へ――比較心理学試論』序論
あとがき
主な参考文献

著者|Author

亀谷和史(かめたに・かずふみ)
日本福祉大学教育・心理学部教授。専門は、発達思想、教育哲学、保育学。主要著書に『ピアジェ×ワロン論争――発達するとはどういうことか』(編訳著、ミネルヴァ書房、一九九六年)、『現代保育と子育て支援――保育学入門』(編著、八千代出版、二〇〇六年)、『「知的な育ち」を形成する保育実践Ⅰ・Ⅱ』(編著、新読書社、二〇一三年、二〇一六年)ほか。

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発達支援、その先へ―自閉スペクトラム症児の早期社会コミュニケーション行動に着目して

発達支援、その先へ

自閉スペクトラム症児の早期社会コミュニケーション行動に着目して

  • 永井祐也(著)/2024年4月
  • 3900円(本体)/A5判上製276頁
  • 装丁:中本那由子

発達障害のある子どもたちをいかに支援するか?
近年、発達障害のある児童生徒にとって、より早い段階における適切な支援が、社会適応や二次障害予防に有効であることが分かってきた。本書ではその一例として、自閉スペクトラム症(ASD)児の「共同注意」をはじめとする早期社会コミュニケーション行動の発達に着目。PECS等の支援法の有用性、母親のストレスとの相関性、インクルーシブ教育システム、さらにその先の共生社会への接続性などの観点から検証し、児の将来の自立と社会参加に向けて、「いま」できる発達支援を考える。
(ISBN 9784861109508)

目次|contents

はじめに
第0章 序論
第1章 日本の特別支援教育・インクルーシブ教育システムの動向
第2章 自閉スペクトラム症(ASD)の理解と発達支援
第3章 アイトラッカーによるASD児の共同注意の測定とその臨床的有用性
第4章 ASD児の早期社会コミュニケーション行動が不適応行動に及ぼす影響
第5章 PECSがASD児の早期社会コミュニケーション行動に及ぼす効果
第6章 母親の育児ストレス軽減に果たすASD児の共同注意の役割
第7章 個別発達支援におけるASD児の母親の育児ストレス軽減効果
第8章 総合考察
あとがき
図表一覧
初出一覧
文献一覧
索引

著者|author

永井祐也(ながい・ゆうや)
岐阜聖徳学園大学教育学部 専任講師
1988年 大阪府生まれ
大阪大学大学院人間科学研究科 修了 (博士(人間科学))
日本学術振興会特別研究員 (DC2)、くらしき作陽大学子ども教育学部専任講師、大阪大学大学院人間科学研究科助教を経て、2022年4月より現職。

主要論文
・標準「病弱児の教育」テキスト【改訂版】(ジアース教育新社, 分担執筆, 2022)
・母親の育児ストレス軽減に果たす自閉スペクトラム症児の共同注意の役割(発達心理学研究, 34(1), 11-18, 2023)
・Effects of the Picture Exchange Communication System on early social-communication behaviors in children with autism spectrum disorders.(Journal of Special Education Research, 10(2), 69-81, 2022)
・小児がん啓発人形劇が小学校教員に復学支援を想像させる効果(小児保健研究, 80(6), 782-787, 2021)
・ムコ多糖症のある幼児児童生徒への教育的支援に関する保護者の認識(特殊教育学研究, 53(3), 175-183, 2015)

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