教養としての日本語教育学への招待
多文化共生社会の担い手を育てる
- 志賀玲子(著)/2025年11月
- 3500円(本体)/A5判並製208頁
- 装丁:横須賀 拓
日本語教育は誰のためのものか?
はたして日本社会は安心して自己表現できる環境を外国人に対して提供できているだろうか。大学において「日本語教育学」を受講する学生および担当教員の意識とその変容について、質的・量的双方からアプローチ。日本語教育がもたらす知見や資質が、広く他者や異文化を受容し、多文化社会を共につくる力を育むことを明らかにする。一般教養としての「日本語教育学」の提案。
(ISBN9784868160892)
目次|Contents
はじめに
序章 なぜ「教養としての日本語教育学」なのか
1. 日本語教育は誰のために、何のためにあるのか
2. 「教養としての日本語教育学」について
第1章 本書の概要
1. 本書の対象
1.1 「教養としての日本語教育学」授業実践について
2. 本書の構成
3. 研究方法
3.1 PAC分析
3.2 ライフストーリー
第2章 「多文化共生」をときほぐす
1. 「多文化共生」という言葉
1.1 新聞で振り返る「共生」「共生社会」の出現
1.2 「共生」という言葉の誕生背景とその言葉のもつ意味
1.3 「共生」をめぐる論者たちの言葉
1.4 「多文化共生」という言葉の誕生
1.5 「多文化共生」という言葉の問題点
2. 「多文化共生」の推進力
2.1 「多文化共生」推進における日本語教育をめぐる問題点
2.2 目指すべき「多文化共生」の模索
2.3 「多文化共生」に必要な力
第3章 外国人にとっての日本社会―海外ルーツ大学生の語りから
1. 海外ルーツ大学生への対応の必要性
1.1 海外ルーツ大学生の増加状況
1.2 教育現場に求められる多様性受容
2. 「移動する子ども」による語りの意義
3. Gさん(日本生まれ日本育ち)の語り
3.1 Gさんの歩んできた道
3.2 Gさんへの調査
3.3 Gさんのライフストーリー①:記述
3.4 Gさんのライフストーリー②:語り
3.5 Gさんから受け取った課題
4. Yさん(日本生まれ→帰国→高校時に再来日)の語り
4.1 Yさんの歩んできた道
4.2 日本を生まれ故郷と考えるYさんへのPAC分析
4.3 デンドログラムを見てのYさんの語り
4.4 Yさんから受け取った課題
5. 「多文化共生社会」推進に向けた受け入れ側の準備と覚悟
第4章 日本語教育における「文化」の居場所―日本語教師の語りから
1. 日本語教師としての立ち位置
2. 日本語教育における「文化」の捉え方
3. 日本語教師養成関連授業を担う教師たちへのPAC分析
4. デンドログラムを見ての4名の教師たちの語り
4.1 「自分自身の考えも変えてかなきゃいけない」Qさん
4.2 「何か気づきが得られるようなものを提供したい」Rさん
4.3 「考えていくこと…話し合っていくこと自体が大切」Sさん
4.4 「ステレオタイプをもっているんじゃないか…常に自覚」Tさん
5. 「文化多様性を理解し尊重する態度」についての4名の教師たちの捉え方
5.1 Qさんの捉え方
5.2 Rさんの捉え方
5.3 Sさんの捉え方
5.4 Tさんの捉え方
5.5 共通する捉え方
6. 「文化多様性を理解し尊重する態度」の育成方法についての糸口
第5章 日本語教師の意味世界変容
1. 広がる日本語教師のフィールド
2. ライフストーリーによる意味世界変容の描写
2.1 Mさんへの調査
2.2 Mさんの意味世界変容を読み解くためのアプローチ
2.3 Mさんの語りから
3. フィールドの広がりにともなう意味世界変容
第6章 日本語母語話者の意識変容
1. 「教養としての日本語教育学」の授業実践を通して
1.1 2020年度第2期の授業実践
1.2 振り返りシートでの質問による調査
1.3 コーディングによる分析
1.4 理論記述の創出
1.5 教養としての日本語教育学を受けることの効果の兆候
2. 日本語母語話者大学生の意識変容
2.1 2021年度第1期の授業実践
2.2 異文化受容に関するアンケート
2.3 大学生に起きた変容の兆し
終章 「教養としての日本語教育学」の意義と今後の課題
1. 「教養としての日本語」の意義と提案
2. 今後の課題と展望
あとがき
初出一覧
参考文献
参考資料
著者|Author
志賀玲子(しが・れいこ)
武蔵野大学グローバル学部教授。博士(学術/一橋大学)。
専門は日本語教育学、日本語教員養成、多文化共生論。
家族の赴任に伴い海外在住、帰国後日本語教育の道へ。
都内日本語学校での勤務の傍ら大学院へ進学。
修士課程修了後、大学での日本語教育、日本語教員養成に携わる。
一橋大学、東京経済大学、明海大学を経て現職。
