「よりどころ」の形成史―アルゼンチンの沖縄移民社会と在亜沖縄県人連合会の設立

「よりどころ」の形成史

アルゼンチンの沖縄移民社会と在亜沖縄県人連合会の設立

  • 月野楓子(著)/2022年10月
  • 4300円(本体)/A5判上製356頁
  • 装丁:中本那由子

つながらなくてもいいのではないか。あるいはつながっていなくても、何かを、どこかを、誰かを、想ったり、頼ったりする、つまり何らかの「よりどころ」があれば、人はなんとか「生きる」を続けられるのではないか。

故郷沖縄での苦しい生活を脱するため20世紀前半に多くの人々がアルゼンチンへ雄飛したが、そこでの暮らしは必ずしも思い描いていた通りのものではなかった。貧困や差別のある厳しい生活の中で培われたアイデンティティや連帯の強さは、しかし、「沖縄」「同郷」というだけで説明できるような、わかりやすいものなのだろうか。
戦後に在亜沖縄県人連合会が結成された経緯と意義を、そして戦争や帰属問題に揺れる遠くの故郷をどのように移民の人々が見ていたのかを、「エスニシティ」や「ナショナリズム」に還元できないものに目を向けながら描きだす。

(ISBN 9784861108303)

目次|contents

はじめに
序章
第一章 アルゼンチンにおける沖縄移民社会の形成
第二章 沖縄移民の団体・仕事・生活
第三章 第二次世界大戦時の在亜邦人社会と沖縄移民
第四章 在亜邦人社会の戦後―アルゼンチン政府要人への接近と移民の再開
第五章 救済活動による戦後組織の展開
第六章 沖縄文化の抑圧とアルゼンチンにおける沖縄文化
第七章 「在亜沖縄県人連合会」の設立
終章

著者|author

月野楓子(つきの・ふうこ)
沖縄国際大学総合文化学部専任講師
沖縄移民研究、ラテンアメリカ研究、国際文化学
主な著作に、「中南米地域の邦字新聞を活用した日本人移住に関する諸研究―『らぷらた報知』の創刊と『在亜沖縄県人連合会』の設立」(『研究紀要』15号、JICA横浜海外移住資料館、2021年)、「Ryukyu Sapukaiにみる沖縄文化の「継承」―アルゼンチンの沖縄系下位世代に関する一考察」(『インターカルチュラル』14号、日本国際文化学会、2015年)など。

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フォビアがいっぱい―多文化共生社会を生きるために

フォビアがいっぱい

多文化共生社会を生きるために

  • 高山陽子(編)/2022年10月
  • 2700円(本体)/A5判並製228頁
  • 装丁:中本那由子

ヘイトやコンプレックスと向き合ってみる

社会の多様性が認められるようになるにつれ、異なる他者への恐怖や嫌悪も生まれていった。
他人や自分に向けられる憎悪=「フォビア」とは何か、それを克服するにはどうすればよいかを考える。

(ISBN 9784861108310)

目次|contents

はじめに(高山陽子)…… 004

第1部 ゼノフォビア
1 ≫ いつの間にかこんなに…!:外国人労働者(大塚直樹)…… 008
2 ≫ やさしい日本語への転換(小竹直子)…… 019
3 ≫ どんなところ?:朝鮮学校(呉永鎬)…… 028
4 ≫ 冷静ではいられない:嫌韓とは何か(金賢貞)…… 037
5 ≫ どうして食べられないの?: 日本に広まるハラール食とイスラモフォビア(澤井充生)…… 046
6 ≫ そんな時代もあったの?:日系移民(今野裕子)…… 054

第2部 ジェンダー・フォビア
7 ≫ ジェンダー・フォビアってどういうこと?(浅野麗)…… 066
8 ≫ おネエの役割:カリスマ?怪物?人生の達人?(黒岩裕市)…… 075
9 ≫ 〇〇女子と〇〇男子:ステレオタイプの崩壊?(竹田志保)…… 084
10 ≫ 「女子ライフ」の闘い方:『女子的生活』を読む(黒岩裕市)…… 093
11 ≫ 死語になればいいのに!:イクメン(竹田志保)…… 103
12 ≫ ガラスの天井:『わたし、定時で帰ります。』に見る女性労働の現在(倉田容子)…… 112

第3部 エゴフォビア
13 ≫ 年齢を重ねることと装うこと:美魔女とBBA(井原あや)…… 124
14 ≫ お告げがほしい!:現代日本のパワースポットと信仰心(高山陽子)…… 134
15 ≫ 英語さえ話せれば!:外国語コンプレックス(小張順弘)…… 143
16 ≫ もしかして自分も?:ホームレス(二文字屋脩)…… 153
17 ≫ 無理な理想からの解放:モテとヤセ(高山陽子)…… 163

第4部 オーバー・フォビアズ
18 ≫ 食べ物からはじめよう:町中華と本格中華(横田浩一)…… 174
19 ≫ とりあえず行ってみます:多文化共生イベント&スポット(小磯千尋)…… 183
20 ≫ 出会いはどこにでもあります:国際結婚(戴寧)…… 193
21 ≫ ハーフと日本人:寛容する人と寛容される人(リーペレス・ファビオ)…… 202
22 ≫ 完璧は目指しません:外国語学習(小張順弘)…… 211

あとがき(高山陽子)…… 221
執筆者紹介…… 223

編者|editor

高山陽子(たかやま・ようこ)
亜細亜大学国際関係学部教授。文化人類学、銅像研究。
主な著作に、『多文化時代の観光学―フィールドワークからのアプローチ』(編著、ミネルヴァ書房、2017年)、
『紅い戦争のメモリースケープ―旧ソ連・東欧・中国・ベトナム』(共編著、北海道大学出版会、2019年)など。

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石敢當の比較研究―中国・沖縄・鹿児島・奄美

石敢當の比較研究

中国・沖縄・鹿児島・奄美

  • 蒋明超(著)/2022年7月
  • 4200円(本体)/A5判上製330頁
  • 装丁:中本那由子

沖縄・鹿児島を中心に日本各地に分布する魔除けの石、石敢當。資料・実物調査を基に、中国からの伝播の経緯や現在の状況を探究する。
(ISBN 9784861107535)

目次|contents

序章 石敢當の比較研究を行う必要性
第1章 「石敢當」誕生推論
第2章 石敢當と泰山石敢當の異同―中国山東省泰安市岱岳区西南望村における石敢當調査の問題解明
第3章 中国北方と南方における石敢當の比較研究―山東省と福建省を例に
第4章 日本における泰山石敢當の受容
第5章 「閩人三十六姓」と琉球の石敢當受容
第6章 物から見る琉球(沖縄)の石敢當受容
第7章 薩摩の石敢當の中国伝来の可能性―倭寇や唐人町を中心に
第8章 物から見る旧薩摩領の石敢當受容
第9章 奄美諸島の石敢當受容―喜界島・奄美大島・徳之島を中心として
終章 結論と今後の課題

著者|author

蒋明超(ショウ・メイチョウ)
1987年生まれ、中国山東省出身。
2021年3月に神奈川大学大学院歴史民俗資料学専攻の博士学位を取得。
現在は中国の泰山学院泰山研究院に勤めている。

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身体を彫る、世界を印す―イレズミ・タトゥーの人類学

身体を彫る、世界を印す

イレズミ・タトゥーの人類学

  • 山本芳美、桑原牧子、津村文彦(編著)/2022年6月
  • 4000円(本体)/A5判並製384頁
  • 装丁:コバヤシタケシ
  • 装画:モノ・ホーミー

皮膚の上でどのような美が展開し、いかなる想いがせめぎ合っているのだろうか。
日本初のイレズミ・タトゥーの学術論集。各地の事例を紹介しながら、それぞれの社会の文化、美学、歴史、政治を考察する。

(ISBN 9784861108037)

目次|contents

まえがき(山本芳美)

第Ⅰ部 世界編
第1章 顔を横切る黒い帯―マルケサス諸島の文様の変容(桑原牧子)
第2章 ニュージーランド・マオリのタトゥー、タ・モコの復興(秦玲子)
第3章 より善い人を生み出すイレズミ―タイのサックヤンにみる宗教性と暴力(津村文彦)
第4章 「今」の楽しさと関係を刻む人々―カメルーン東南部の狩猟採集民バカのテレ(彭宇潔)

コラム
コラム1 インド・バイガのイレズミを振り返って(阿部櫻子)
コラム2 台湾原住民族と植民地時代の記録、そして現在―先住民族の知的財産保護と文化の盗用論をめぐって(山本芳美)
コラム3 どうやって調べるか? ウィリアム・ファーネスとイレズミを例にして―横浜、奄美、沖縄、ボルネオ、ヤップ(山本芳美)

第Ⅱ部 日本編
第5章 ヴィクトリア朝イングランドにおける「芸術的な」日本のイレズミと商業戦略(マット・ロダー[大貫菜穂 訳])
第6章 沖縄のハジチ(針突)とその調査史―資料蓄積を活かすために(山本芳美)
第7章 関係性としてのタトゥー―千葉市でヒップホップファッション・ストアを営む若者たち(山越英嗣)
第8章 「消えるタトゥー」はタトゥーごっこか―らしさとらしくなさをめぐって(松嶋冴衣)

特別寄稿
第9章 イレズミと医学(小野友道)
第10章 私とシヌイェ(マユンキキ)

あとがき
執筆者紹介

お詫びと訂正

本文中に編集上の不手際で以下のような誤りが生じました。謹んでお詫びして訂正いたします。

14頁 「谷崎潤一郎が1911年に」→「谷崎潤一郎が1910年11月に『新思潮』に発表した処女小説」
198頁「雑誌『TATTOO BURST』の元編集長、川崎美穂さんにも伺ったところ、跳ね彫りは体力を消耗させない彫り方で、和彫りをする女性彫師が行うそうである。」→「雑誌『TATTOO BURST』の元編集長、川崎美穂さんにも伺ったところ、三味線彫りは本来の手彫に比べて体力を消耗させない彫り方なので(男女どちらの彫師も行うが)体力的には女性向きである。」

編者|editors

山本芳美(やまもと・よしみ)
都留文科大学・教授。文化人類学・イレズミほか身体文化研究。
主な著作に、『イレズミの世界』(2005年、河出書房新社)、『イレズミと日本人』(2016年、平凡社)、「日本みやげ」としてのイレズミ―十九世紀から二十世紀初頭における外国人観光と彫師」(『日本研究』63集、2021年)。

桑原牧子(くわはら・まきこ)
金城学院大学・教授。文化人類学。
主な著作に、Tattoo: An Anthropology (2005年、Berg)、 “Multiple Skins: Space, Time and Tattooing in Tahiti” (Anna Cole, Bronwen Douglas and Nicholas Thomas (eds.) Tatau/Tattoo: Bodies, Art and Exchange in the Pacific and the West、2005年、Reaktion)、「皮膚をまさぐる視線―18、19世紀タヒチ社会における他者認識にみるフェティシズム」(田中雅一編『フェティシズム研究第3巻 侵犯する身体』、2017年、京都大学学術出版会)。

津村文彦(つむら・ふみひこ)
名城大学・教授。文化人類学・東南アジア地域研究。
主な著作に、『東北タイにおける精霊と呪術師の人類学』(2015年、めこん)、「開放系コミュニケーション―東北タイにおける経産婦の病ピットカブーンの事例研究」(杉島敬志 編『コミュニケーション的存在論の人類学』、2019年、臨川書店)、「不可視を『見る』、不可解を『語る』―東北タイにおける呪術と感覚経験」(川田牧人・白川千尋・飯田卓 編『現代世界の呪術―文化人類学的探究』、2020年、春風社)。

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21世紀型スキルとしての情報社会学―VUCAワールドを生きる人たちのために

21世紀型スキルとしての情報社会学

VUCAワールドを生きる人たちのために

  • 天野徹(著)/2022年3月
  • 2800円(本体)/A5判並製392頁
  • 装丁:長田年伸

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)に満ちたSociety 5.0の時代をいかにサバイブするか?
これから社会に出る学生、そして現役で活躍する社会人に対し、今まさに必要とされる文理融合型のセンスとスキルを提示する。

(ISBN 9784861107818)

目次|contents

第1章 高度情報化とグローバリゼーションの変化
第2章 知識社会と情報社会
第3章 イノベーションと知財活用
第4章 プラットフォーム・レボリューション
第5章 ビジネスモデルイノベーション
第6章 IoTとクラウドコンピューティング
第7章 AIとビッグデータが市場と企業、労働の未来を変える
第8章 現象の本質を突く調査・洞察の方法とは
第9章 文理融合とリベラルアーツ―「AI+ビッグデータ時代」に必要な人間のスキル
第10章 情報システムの構想・構築と社会デザイン
第11章 オープンデータ・ビッグデータとAPI経済
第12章 VUCAワールドとアジャイル型開発
第13章 リベラルアーツとSociety 5.0で実現する人間中心の社会
第14章 危機の時代の情報社会学

著者|author

天野徹(あまの・とおる)
明星大学人文学部人間社会学科教授。
専門・専攻は情報社会学、社会調査法、社会統計学、統計学史、都市社会学。
著書に『大都市高齢者と盛り場―とげぬき地蔵をつくる人びと』(共著、東京都立大学出版会、2001年)、『統計学の想像力―覚束ない未来のために』(ハーベスト社、2002年)、『社会統計学へのアプローチ―思想と方法』(ミネルヴァ書房 、2006年)、『部分を調べて全体を知る―社会統計入門』(学文社、2008年)、『東日本大震災の復旧・復興への提言』(共著、技報堂出版 、2012年)がある。

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アウシュヴィッツへの道―ホロコーストはなぜ、いつから、どこで、どのように【横浜市立大学新叢書13】

アウシュヴィッツへの道

ホロコーストはなぜ、いつから、どこで、どのように

  • 永岑三千輝(著)/2022年3月
  • 2500円(本体)/四六判並製308頁
  • 装丁:矢萩多聞

第三帝国のユダヤ人迫害から大量殺戮に至る過程を、最近の総合的史料集に依拠して再検証を行う。ホロコースト研究における重要書。
【横浜市立大学新叢書13】
◆横浜市立大学新叢書「発刊の辞
(ISBN 9784861108051)

目次|contents

序章  第三帝国のユダヤ人迫害・大量殺戮をいかにとらえるべきか
第1章 「合法的革命」とユダヤ人差別の段階的進展 1933~1937年
第2章 「大ドイツ帝国」建設とユダヤ人迫害・強制移送 1938年
第3章 保護領創設とユダヤ人迫害・強制移送 1938~1939年
第4章 ポーランド侵攻・占領とユダヤ人迫害 1939年9月〜1941年6月
第5章 ソ連征服政策とユダヤ人大量射殺拡大過程―占領初期1941年6月〜9月を中心に
第6章 “ユダヤ人問題の最終解決”―世界大戦・総力戦とラインハルト作戦
結び―ポストコロニアルの忘却の大河に抗して

著者|author

永岑三千輝(みねなが・みちてる)
1946年生まれ。1968年3月横浜国立大学経済学部卒。1974年3月東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。1973年4月〜96年3月、立正大学経済学部助手、専任講師、助教授、教授、この間、75年8月〜77年9月ドイツ留学(立正大学在外研究、ボーフム大学・ドイツ学術交流会DAAD)、85年4月〜86年3月ミュンヘン大学社会経済史研究所(立正大学在外研究)。1995年10月東京大学博士(経済学):学位論文『ドイツ第三帝国のソ連占領政策と民衆 1941-1942』(同文舘、1994)。1996年4月横浜市立大学商学部・大学院経済学研究科教授、2011年3月定年退職、横浜市立大学名誉教授。11年10月より大学院都市社会研究科客員教授。
主な著書:上記学位論文のほか、『独ソ戦とホロコースト』(日本経済評論社、2001)、『ホロコーストの力学―独ソ戦・世界大戦・総力戦の弁証法』(青木書店、2003)。

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「私らしさ」の民族誌―現代エジプトの女性、格差、欲望

「私らしさ」の民族誌

現代エジプトの女性、格差、欲望

  • 鳥山純子(著)/2022年3月
  • 3200円(本体)/四六判上製432頁
  • 装丁・挿画:中本那由子

 

人のことなんてわからない!
ひょんなことからエジプトのアメリカンスクールで教師をすることになった、人類学者の筆者。我が強くて面倒くさく、そして魅力的な3人の仕事仲間にスポットライトを当て、グローバル都市カイロのなかで彼女たちがどのような「私」を目指しながら、どのように「私らしく」振る舞っているのか、理想と現実の狭間で思い悩む「こじらせ女子」たちの生き様を描く。
他者に共感しながら「私」を見つける、人の民族誌。

 

[主要登場人物(全員がアメリカンスクールA校に勤務)]
シャイマ……価値ある大人になることを目指す優等生教員(担当:アラビア語・宗教)
サラ……子育てと仕事の両立を図る、マイペースなマダム(担当:英語)
リハーム……古き良きエジプトの再興を目論む、A校の校長
私……人類学者、リハームに半ば騙されて、A校で働くことに(担当:英語・理科)

 

本書の「はじめに」を公開しています。

 

(ISBN 9784861107863)

目次|contents

はじめに
目次
凡例
地図

 

序章
1 本書の取り組み
2 調査
3 本書の構成

 

第1章 現代エジプトにおけるA校
1 格差社会としての二〇〇〇年代エジプト
2 調査当時のA校
3 A校の人々
4 エジプトにおける学校教育
5 A校における複数の近代

 

第Ⅰ部 シャイマの生き方―学歴至上主義言説に基づく、階層社会の読み替え
第2章 働くシャイマ、富裕層の教育者
1 先行研究におけるエジプトの女性学校教員
2 シャイマという教育者
3 「モダン」な教員としてのシャイマ
4 A校=価値ある人物となるための舞台

 

第3章 〈クバール〉を生きる
1 〈クバール〉な女性になるまで、シャイマの生い立ち
2 〈クバール〉の危機
3 〈クバール〉に見る学歴至上主義
4 〈クバール〉が可能にするメーク
5 〈クバール〉と女性の評判
6 〈クバール〉が開く可能性

 

第4章 〈クバール〉でも、クバールでないシャイマ
1 仲間同士の助け合い
2 主張の足りないシャイマ
3 上司に対する両義的態度
4 使い捨ての待遇
5 何も持たないシャイマ

 

第Ⅱ部 サラの生き方—消費至上社会における家庭と仕事の両立
第5章 子育て優先の就労
1 第二の人生の模索
2 教員を志した理由
3 学校教員としてのサラ やっぱり育児優先?
4 愛情重視か公私混同か
5 職業意識の欠如

 

第6章 〈へルワ〉を生きる
1 人生のハイライトからの転落
2 現在の生活
3 〈ヘルワ〉な私

 

第7章 異物としてのサラ
1 上層中産階級出身者としてのサラ
2 エジプト社会における社会階級
3 職場における社会的帰属
4 二十代女性学校教員の反応
5 日常に遍在する階級

 

第Ⅲ部 リハーム校長の生き方―時空を超えた植民地期エジプトの再興
第8章 天職に生きる
1 リハーム校長の特徴
2 保護者に対する〈シャクセイヤ〉の発揮
3 学校内での彼女の評判
4 〈シャクセイヤ〉を利用する孤独な指導者

 

第9章 〈ソサエティ〉の再興に生きる
1 教育に対する熱意
2 教育への指示
3 校長のルーティーン、傍若無人な振る舞い?
4 最高ランクの人材を生み出す教育の牽引者
5 リハームの生い立ち
6 〈ソサエティ〉の再興に生きる

 

 

終章 「私らしさ」の民族誌、その必要性と可能性
1 「私らしさ」という泥試合から見えるもの
2 多様な職業意識
3 ジェンダー規範をめぐる変化
4 イスラーム教の不可視性
5 ステレオタイプからの脱却を目指して
6 人の民族誌の可能性
7 「こじらせ女子」礼賛
8 「こじらせ女子」としての私

あとがき
参照文献
索引

著者|author

鳥山純子(とりやま・じゅんこ)
立命館大学国際関係学部・国際関係研究科 准教授
専門は文化人類学、ジェンダー論、中東研究
主な著作に 『嗜好品から見える社会』(共著、2022年、春風社)、『フィールド経験からの語り(イスラーム・ジェンダー・スタディーズ4)』(長沢栄治監修、鳥山純子編著、明石書店、2021年)、「ジェンダーから考えるイスラーム」(小杉泰・黒田賢治・二ツ山達朗編『大学生・社会のためのイスラーム講座』ナカニシヤ書店、2018年)、『イスラームのくらし(イスラームってなに?シリーズ2)』(かもがわ出版、2017年)など。

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聖ヤコブ崇敬とサンティアゴ巡礼―中世スペインから植民地期メキシコへの歴史的つながりを求めて

聖ヤコブ崇敬とサンティアゴ巡礼

中世スペインから植民地期メキシコへの歴史的つながりを求めて

  • 田辺加恵、大原志麻、井上幸孝(著)/2022年3月
  • 4000円(本体)/四六判並製360頁
  • 装丁:毛利一枝

聖ヤコブ崇敬はいかに生成され、いかに各地へと伝わったのか
イベリア半島における聖ヤコブ崇敬の始まりとラテンアメリカでの展開について、図像やサンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼も考察しながら歴史的経緯の一端を明らかにするとともに、中世スペインと植民地時代メキシコまでの時間・空間を一つの流れの中で描き出す。

(ISBN 9784861107856)

目次|contents

序章 聖ヤコブ崇敬をめぐる歴史的文脈と本書のアプローチ(田辺加恵・井上幸孝)

第1章 スペインにおける聖ヤコブ崇敬およびサンティアゴ巡礼の始まり(田辺加恵)
第2章 サンティアゴ巡礼の最盛期―聖ヤコブの騎士化とその影響(田辺加恵)

コラム①  聖ヤコブ図像の三類型
コラム②  ラテンアメリカ各地のサンティアゴ表象
コラム③  メキシコの聖ヤコブ表象

第3章 後期中世におけるカスティーリャ王権と「サンティアゴ政策」の衰退(大原志麻)
第4章 ヌエバ・エスパーニャのサンティアゴ崇敬におけるカスティーリャ貴族同盟の役割(大原志麻)

コラム④  現代のサンティアゴ巡礼
コラム⑤  サンティアゴ巡礼路と熊野古道

第5章 メキシコ征服と聖ヤコブ―クロニカにおける聖ヤコブ出現の記述を中心に(井上幸孝)
第6章 メキシコ先住民にとっての聖ヤコブ崇敬―征服以降の受容の実態をめぐって(井上幸孝)

著者|authors

田辺加恵(たなべ かえ)
立命館大学経済学部教授。スペイン中世史。
主な著作に、「13世紀の史料にみる聖ヤコブ崇敬の変容」(『スペイン史研究』第33号、2019年)、「『世界年代記』における「マタモロス」聖ヤコブと「ヒスパニア」」(『東海大学国際教育センター紀要』第38輯、2018年)、「「マタモロス聖ヤコブ」像の形成とその戦略的利用」(『スペイン史研究』第30号、2016年)。

大原志麻(おおはら しま)
静岡大学人文社会科学部教授。西洋中世史。
主な著作に、Expresiones del poder en la Edad Media. Homenaje al profesor Juan Antonio Bonachía Hernando(共著、Universidad de Valladolid、2019年)、『翻訳とアダプテーションの倫理―ジャンルとメディアを越えて』(共著、春風社、2019年)、Castilla y el mundo feudal. Homenaje al profesor Julio Valdeón(共著、Junta de Castilla y León, Consejería de Cultura y Turismo 、2009年)。

井上幸孝(いのうえ ゆきたか)
専修大学国際コミュニケーション学部教授。メキシコ史・メソアメリカ史。
主な著作に、『ビジュアル図解 マヤ・アステカ文化事典』(日本語版監修、柊風舎、2020年)、『人間と自然環境の世界誌―知の融合への試み』(共編著、専修大学出版局、2017年)、『メソアメリカを知るための58章』(編著、明石書店、2014年)。

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嗜好品から見える社会

嗜好品から見える社会

  • 大坪玲子、谷憲一(編)/2022年3月
  • 4500円(本体)/A5判並製426頁
  • 装丁:コバヤシタケシ

長年の呪いから解放されよう、嗜好品は我々の生活に必要不可欠なものである――

人類学者たちが現地で嗜好品を見て、体験し、語り合った、その集大成としての論集。嗜好品の紹介だけにとどまらず、生産・流通・消費における国家や政治との関係も考察しながら、その社会を見る。

――嗜好品というプリズムを通すと、社会は少し違って見えてくる

(ISBN 9784861108020)

目次|contents

序論(大坪玲子)

第一部 つながる
第1章 笑いはメディスンである―ペヨーテ・ミーティングにおける笑いと癒やし(渡辺浩平)
第2章 反響の語り―観光プロジェクト「キューバ国際音楽祭」をめぐる社会と個人に関する試論(田中理恵子)
第3章 「楽しみ」を分かち合う―ペルー都市と山村のチーズに対する価値観の違いから(古川勇気)
第4章 「あるけれど無い」リッブ―エジプト都市部のユビキタスな「ローカルフード」(鳥山純子)

第二部 こだわる
第5章 「良い酒」とはいかなるものか―つくり手の仕事からみたシミンアルヒとモンゴルの乳文化(寺尾萌)
第6章 においと「共犯性」―ネパールのキナーマー(工藤さくら)
第7章 今日のため、明日のため―イエメンのカート商人と消費者(大坪玲子)

第三部 つづける
第8章 水タバコをめぐるポリティクス―現代イランにおける喫煙の作法と法規制の行方(谷憲一)
第9章 アレヴィーと酒の切れない関係―翻弄されるトルコの少数派(今城尚彦)
第10章 「伝統」からビジネスへ―インドにおけるパーン文化の変容とジェンダー(小牧幸代)
第11章 蒸留酒をつくり、ふるまい、嗜む―ブルガリア村落部における体制転換、EU加盟と自家製ラキヤ(松前もゆる)

第四部 こえる
第12章 ほろ苦さを求めて―インドネシア西スマトラ州のガンビール・ブームから読み解くビンロウのグローバリゼーションズ(西川慧)
第13章 カヴァ飲みのゆくえ―オセアニア島嶼内外における人と在来作物の多義的な関わり合い(河野正治・大島崇彰)
第14章 近世以降韓国における薬用人蔘製品の流通と消費(辻大和)

あとがき 宴とともに(大坪玲子)

執筆者紹介

コラム(各章末)  
ナット・アンド・シガレット/キューバ・レコード―市場・商品・消費のはざまで/ペルーのインカ・コーラ/エジプトの男女別喫茶空間、アホワとカフェ/モンゴルの酒をめぐるこぼればなし/海外進出したチュルピー/イエメン飲み物事情/トフメあれこれ/「これは酒ではない」―ベクタシー教団のソフラとデム/インドの炭酸飲料水/タバコとコーヒーの香りの向こうに見えるもの/ヤシ酒飲むムスリムたち/海を越えた宴/『人蔘史』とその著者今村鞆

お詫びと訂正

本文中に編集上の不手際で以下のような誤りが生じました。謹んでお詫びして訂正いたします。
177頁
(誤)ネパール連邦民主共和国(以下、ネパール)
(正)ネパール
※2020年に国名変更

編者|editors

大坪玲子(おおつぼ・れいこ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー。文化人類学、イエメン研究、嗜好品研究。
主な著作に、『嗜好品カートとイエメン社会』(法政大学出版局、2017年)、「カート・オントロジー構築の試み」(『人工知能学会第2種研究会ことば工学研究会資料集』、共著、2021年)、「カートを噛みながら―人類学とインタビューと嗜好品」(『嗜好品文化研究』6、2021年)。
恋しい嗜好品 アハジュル地方で噛んだ摘みたてのカートと、一緒に飲んだ湧き水

谷憲一(たに・けんいち)
上智大学アジア文化研究所・共同研究所員。文化人類学、イラン研究。
主な著作に、 「タァズィエ」(鈴木董・近藤二郎・赤堀雅幸編集代表『中東・オリエント文化事典』、丸善出版、2020年)、Realizing the Existence of Blind Spots in the ‘West’: A Systems-theoretical Perspective(Anthropological Theory 20(4)、共著、2020年)、「現代イランにおける国家とホセイン追悼儀礼―道具主義と言説的伝統の間で」(博士論文、一橋大学、2022年)。
恋しい嗜好品 イランのどこでも売っている、果物を煮詰めて乾かしたラヴァーシャク

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女子サッカー選手のエスノグラフィー―不安定な競技実践形態を生きる

女子サッカー選手のエスノグラフィー

不安定な競技実践形態を生きる

  • 申恩真(著)/2022年3月
  • 4000円(本体)/A5判上製248頁
  • 装丁:中本那由子

女性がサッカー選手として生きることは、どのような生活を選択することになるのか? 彼女たちはどのような困難を抱えながら競技を実践しているのか?
自身も競技経験をもつ著者が、女子サッカーチーム内部でのフィールドワークを通して、選手たちのリアリティを描き出す。

(ISBN 9784861107955)

目次|contents

はじめに
序 章 女子サッカー選手として生きることとは

■第Ⅰ部 日本における女子サッカーの位置づけ
第1章 女子サッカーという競技種目とその固有性
第2章 日本女子サッカーリーグの発足とその変遷過程
第3章 チーム運営の実態と選手の競技実践形態

■第Ⅱ部 女子サッカーチーム内部の実態と女子サッカー選手化――Kチームのフィールドワークから
第4章 女子サッカーチームの運営と秩序
第5章 地域社会とKチームの関係性
第6章 Kチームの選手間における相互関係

■第Ⅲ部 選手の労働とジェンダーをめぐる経験
第7章 プロ選手の労働環境
第8章 支援企業の社員選手の労働環境
第9章 女子サッカー選手におけるジェンダーとアスリート・アイデンティティの探求

終 章 女子サッカー選手の生活世界を記録する
あとがき
参考文献/参考資料
索引

著者|author

申 恩真(シン・ウンジン)
1988年大韓民国・ソウル特別市生まれ。北海道大学大学院教育学院教育学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(課程)現在、北星学園大学経済学部専任講師。専攻はスポーツ社会学。
主な論文に「日本女子サッカー選手の生活形態に関する研究―支援の質的位相をめぐって」(『スポーツ社会学研究』第25巻第2号、2017年)、「女性アスリートの痛みをめぐるエスノグラフィー―サッカー選手の月経をめぐる対応から」(『スポーツとジェンダー研究』(16)、2018年)など。

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