ヴァールミーキはどこへ行けばよいのか―現代インドの清掃人カースト差別と公衆衛生の民族誌

ヴァールミーキはどこへ行けばよいのか

現代インドの清掃人カースト差別と公衆衛生の民族誌

  • 増木優衣(著)/2023年2月
  • 4500円(本体)/A5判上製358頁
  • 装丁:矢萩多聞

インド社会の排泄物処理を含むサニテーションをその末端で担ってきた、「清掃人カースト」ヴァールミーキの人びと。
ガーンディーの思想を受け継ぐNGOをはじめ、人道的使命に突き動かされた様々な人びとの闘いにより、排泄物処理人たちは、不潔で不浄な労働や差別から「解放」されていったとされている。
しかしながら実際に、彼らはいかなる労働を行い、そこにどのような意味づけを主体的になしてきたのだろうか。そして彼らの社会的な位置づけはいかに変化し、彼らはどこへ向かっているのだろうか。

(ISBN 9784861108273)

目次|contents

序論
第1章 清掃人カースト研究と本書のねらい
第2章 調査地のヴァールミーキとNGOスラブ
第3章 英領インドにおける乾式トイレ・システムと清掃人
第4章 地域の排泄物処理システムとヴァールミーキ
第5章 不可触民解放運動と水洗トイレ普及運動の歴史
第6章 乾式トイレの廃絶とヴァールミーキの労働実践の変容
第7章 公衆衛生的言説の創造的利用と新たな葛藤
結論 ケガレの積極的受容と差別のはざまで
あとがき
参考文献
索引

著者|author

増木優衣(ますき・ゆい)
日本学術振興会特別研究員(PD)
文化人類学、南アジア地域研究
主な著作に、「サニテーション労働とカースト: インドの事例から」(中尾世治・牛島健編『社会・文化からみたサニテーション』講座サニテーション学 第2巻、北海道大学出版会、2023年春刊行予定)、“Ideas and Practices for Restoring the Humanity of Sanitation Workers in India,” (T. Yamauchi, S. Nakao, and H. Harada eds., The Sanitation Triangle: Socio-Culture, Health and Materials, Singapore, Springer, 2022)、 “Historical Development of Low-Cost Flush Toilets in India: Gandhi, Gandhians, and ‘Liberation of Scavengers’,” (Sanitation Value Chain, 2(1), 2018)など。

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戦間期チェコのモード記者 ミレナ・イェセンスカーの仕事―〈個〉が衣装をつくる

戦間期チェコのモード記者 ミレナ・イェセンスカーの仕事

〈個〉が衣装をつくる

  • 半田幸子(著)/2023年3月
  • 4500円(本体)/A5判上製416頁
  • 装丁:中本那由子

“カフカの恋人”として知られたミレナ・イェセンスカー。その文脈で語られる不遇なイメージからこれまであまり素顔を知られることがなかったが、彼女は激動の戦間期(1920-30年代)に国家アイデンティティの揺らぐ中欧チェコにおいて、生活主体としての女性たちに向けて新しいファッションやライフスタイルを啓蒙した「モード記者」であった。その信条は「シンプル」。多くの新聞や雑誌に載せた翻訳記事、執筆記事の収集・考察を通して、当時のジャーナリズムが人々の意識形成に果たした役割を明らかにするとともに、イェセンスカーとその仕事を、中東欧メディア史におけるモードの担い手として位置づけ直す。巻末にイェセンスカーによる翻訳記事(306本)、執筆記事(1121本)目録を収載。

(ISBN 9784861108655)

目次|contents

はじめに
凡例

序章 今日、イェセンスカーを論じる意義
第1節 本書の目的と意義:新たなミレナ像を求めて
第2節 これまでの研究と問題の所在
1 伝記と「ミレナ神話」
2 著作研究
3 モードおよびメディアに関する研究
第3節 研究の方法
第4節 本書の構成

第1章 活動の背景:民族および女性の解放とそのメディア
第1節 前史:10世紀から第一共和国前まで
第2節 1920年代:国民国家形成期の女性向け雑誌
1 創刊ラッシュと民族意識の高まり
2 誌面に見る民族意識
3 新聞における女性向け紙面
第3節 女性向け紙面の代表的なジャーナリスト
1 オルガ・ファストロヴァー
2 マリエ・ファントヴァー

第2章 イェセンスカーの執筆活動
第1節 記者前史:女子ギムナジウムにて
第2節 翻訳者として
第3節 フェイェトニスト(文芸欄執筆者)として
第4節 モード記者として
1 『論壇』において
2 『国民新聞』において
3 『鮮やかな週』において
4 『人民新聞』において
第5節 1930年代の活動
1 左翼系新聞・雑誌において
2 『現在』において

第3章 1920年代チェコにおけるモードとモード記者の役割
第1節 想定した読者像
1 読者の性別、年齢および社会層
2 中間層に向けた思い
3 小括
第2節 モードとモード記者の意義
1 1920年代初頭の言説
2 ギムナジウム時代の言説
3 時代認識とモード記者の意義
4 小括
第3節 記事の特徴―外見と内面とその調和

第4章 モード・ライフスタイル論(1)理想の追求
第1節 シンプルという理想
1 装飾の排除
2 機能性や合理性の重視
3 精神面におけるシンプル
第2節 女性の生き方
1 男女平等について
2 モダンな女性の理想像
3 仕事と家庭と衣服
4 イヴニングドレスの特権性と価値観
第3節 シンプルが理想とされた時代に―まとめにかえて

第5章 モード・ライフスタイル論(2)時代と流行
第1節 大量生産・大量消費社会における〈個〉のあり方
第2節 身体と衛生
1 身体の手入れと衛生観念
2 スポーツ
第3節 外国イメージとモード・ライフスタイル
1 ドイツ語圏観
2 フランス観
3 イギリス・アメリカ観
4 外国イメージに見る思想
第4節 流行との距離
第5節 イェセンスカーと時代と流行と―まとめにかえて

補章 戦間期チェコのジャーナリズム史
第1節 第一共和国期(1918‐1938):新聞各紙とその特徴
1 主要五政党および共産党と各日刊機関紙
農業党と『田園』
社民党と『人民の権利』
国民社会党と『チェコの言葉』
人民党と『人民新報』
国民民主党と『国民新聞』
共産党と『赤い権利』
2 非政党機関紙
『国民政治』
『人民新聞』
『論壇』
『国民解放』
第2節 第二共和国期(1938・10‐1939・3)

終章

あとがき
参考文献
補遺
索引

著者|author

半田幸子(はんだ・さちこ)
ノースアジア大学法学部専任講師。博士(国際文化)。専門は、中東欧メディア文化史/文化論、国際文化論、比較文化論、外国語教育。
2001年3月、東京外国語大学外国語学部ロシア・東欧課程チェコ語学科卒業。2020年9月、東北大学大学院国際文化研究科博士後期3年の課程修了。
大学卒業後、在チェコ日系企業で通訳、仙台徳洲看護専門学校非常勤講師(比較文化)、東北文化学園大学非常勤講師(英語)、宮城学院女子大学非常勤講師(英語)を経て現職。
著書に、『翻訳文学紀行 Ⅳ』(ことばのたび社、2022年、共著〈担当箇所:「新しい時代を生きる――チェコ語文学(チェコスロヴァキア)ミレナ・イェセンスカー「浴室、身体、そしてエレガンス」[他2編]」37-64頁〉)。

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あいまい化する〈当事者〉たち―韓国セクシュアル・マイノリティ運動から考えるコミュニティの未来

あいまい化する〈当事者〉たち

韓国セクシュアル・マイノリティ運動から考えるコミュニティの未来

  • 柳姃希(著)/2023年3月
  • 3500円(本体)/A5判上製204頁
  • 装丁:中本那由子

見えない声を聴く――

歴史・宗教的にジェンダー格差が根深い韓国において、LGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティたちは如何にして自己のアイデンティティを確立し、社会的立場を獲得していったのか。1990年代以降の韓国の「セクシュアル・マイノリティ運動」の萌芽、変遷の検討から、マイノリティたちが団体や居場所を隠れ蓑として自ら〈当事者〉であることをあいまいにすることで自己を守りながらも、自分たちが抱える問題を可視化し、社会変革を起こしてきた様子を浮かび上がらせる。

(ISBN 9784861108648)

目次|contents

はじめに

序章 エンパワメントの視点からみる韓国のセクシュアル・マイノリティ運動
第1節 研究の背景と問題意識
第2節 当事者性とニーズ論
第3節 エンパワメント過程の分析枠組み
第4節 クィア・スタディーズというアプローチ
第5節 本書の概要

第1章 韓国におけるセクシュアル・マイノリティの差別状況と運動――先行研究から
第1節 韓国におけるセクシュアル・マイノリティ差別
第2節 韓国における国・地方自治体の取り組みと限界
第3節 韓国におけるセクシュアル・マイノリティ運動
第4節 韓国におけるセクシュアル・マイノリティ研究とその分野

第2章 セクシュアル・マイノリティ個人の肯定化――「非認知ニーズ」の当事者性
第1節 セクシュアル・マイノリティに対する社会の無知
第2節 セクシュアル・マイノリティ当事者の無知と不安
第3節 出逢いの場を求めるセクシュアル・マイノリティ
第4節 当事者性にみる問題意識の芽生え――ヨウンヘの誕生

第3章 セクシュアル・マイノリティ当事者の可視化と活動の変容――当事者性の獲得
第1節 軍事政権の終焉とセクシュアル・マイノリティ運動の始まり
第2節 セクシュアル・マイノリティ運動の担い手の登場
第3節 セクシュアル・マイノリティ存在の可視化の下での差別と嫌悪
第4節 セクシュアル・マイノリティ差別への危機感とオンラインコミュニティの急増

第4章 「あいまいな当事者性」戦略――社会変革を目指して
第1節 セクシュアル・マイノリティ芸能人の登場と差別の本格化
第2節 人権問題として取り上げられるセクシュアル・マイノリティ問題
第3節 姿を隠すセクシュアル・マイノリティ運動の担い手――「あいまいな当事者性」戦略
第4節 「あいまいな当事者性」戦略の転換
第5節 セクシュアル・マイノリティ運動にみるニーズの変遷過程――ニーズの発生と充足

第5章 セクシュアル・マイノリティ運動の新たな動き――「あいまいな当事者性」戦略の現状
第1節 セクシュアル・マイノリティをめぐる社会の新たな動き
第2節 セクシュアル・マイノリティ人権運動に反対する近年の動向
第3節 セクシュアル・マイノリティ運動の中で抱える運動団体の課題
第4 節 「あいまいな当事者性」戦略によるセクシュアル・マイノリティの日常的生活課題の潜在化

終章 新たなコミュニティの創造によるエンパワメント
第1節 韓国のセクシュアル・マイノリティ運動におけるコミュニティの機能
第2節 主体化する当事者と新たなコミュニティ
第3節 新たなコミュニティの生成とエンパワメント
第4節 本書の限界と課題

おわりに

引用文献・参考文献リスト

著者|author

柳 姃希(ユウ・ジョンヒ)
1984年 韓国ソウル生まれ
2007年に留学のため来日
2011年 立教大学コミュニティ福祉学部、コミュニティ政策学科 卒業
2013年 立教大学コミュニティ福祉学研究科 コミュニティ福祉学専攻 博士前期課程修了
2019年 立教大学コミュニティ福祉学研究科 コミュニティ福祉学専攻 博士後期課程満期退学
2020年 立教大学で博士の学位授与
2020年10月-2021年3月 立教大学コミュニティ福祉学部 福士実習教育室 教育研究コーディネーター
2021年4月-現在 武蔵野大学 人間科学部 社会福祉学科 助教
2022年4月-現在 西東京市市民協働推進センター運営委員会 委員
社会福祉士、精神保健福祉士

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取るに足らないものたちの民族誌―チリにおける開発支援をめぐる人類学

取るに足らないものたちの民族誌

チリにおける開発支援をめぐる人類学

  • 内藤順子(著)/2023年3月予定
  • 3800円(本体)/四六判上製282頁
  • 装丁:中本那由子

貧困者、支援者、弱者、専門家。彼らは何者なのだろう。
「小さき人びと」はどのように世界を見て、生きているのだろう。

政府開発援助の現場における、人類学者のもがきと葛藤の記録。

支援現場において人類学を志す者が、様ざまな文脈を生きなければならないということ、何事にも生身でむきあう文化人類学の知と営為には可能性があるということを、本書では述べたいと思う。いわゆる社会的弱者とそうではない人びとがいるこの世界で、開発支援はどのように実践されるとよいのか、人類がうまく共生するにはどのような道がありうるのか。 [本文より]

(ISBN 9784861108259)

目次|contents

序章
第1章 チリにおける貧困の諸相
第2章 「貧困空間」の人類学
第3章 「貧困空間」の民族誌
第4章 開発現場の人類学/開発現場で人類学
第5章 専門知のリハビリテーションに向けて
おわりに
参考文献

著者|author

内藤順子(ないとうじゅんこ)
早稲田大学理工学術院・教授。博士(人間科学・早稲田大学)。専門は文化人類学。
主な著作に、『〈境界〉の今を生きる:身体から世界空間へ・若手一五人の視点』(共編、東信堂、2009年)、「痛みと記憶:チリ・軍政下を生き抜く女性たち」(田中雅一・嶺崎寛子編『ジェンダー暴力の文化人類学:家族・国家・ディアスポラ社会』昭和堂、2021年)など。

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フンボルトの陶冶理論と教育改革―学問中心カリキュラムの再考

フンボルトの陶冶理論と教育改革

学問中心カリキュラムの再考

  • 宮本勇一(著)/2023年3月
  • 6000円(本体)/A5判上製552頁
  • 装丁:矢萩多聞

学校教授の最高原理とは何か、
それは世界の見方――世界観――を自らの内より生み出すことである
人間形成と学問を結ぶもの
W・v・フンボルトとは何者だったのか――フンボルト研究史150年の歴史に新たな像をきざむべく、19世紀初頭のプロイセン教育改革において、人間形成思想(陶冶理論) に基づいて学校教授のヴィジョンを示し、教育改革のプロジェクトを展開したフンボルトの思考と活動の足跡をたどる。人間は世界と言語的、美的、歴史的、身体的、数学的側面から方法的に対峙する。その「知の様態」としての学問という思考様式から、学校教育と教育改革を問い直す。
(ISBN 9784861108426)

目次|contents

まえがき
序論 新たなフンボルト像を求めて
第一部 陶冶理論の生成と展開
第一章 世界との方法的対峙としての陶冶理論
第二章 陶冶の政治-社会的次元
第三章 諸学問の探究
第二部 学校教授の構想
第四章 プロイセン教育改革の歴史的背景と学校教育の制度論的規定
第五章 学校教授の「最高原理」
第六章 ツェラー実践とフンボルトの教授学的洞察
第三部 教育改革のプロジェクト
第七章 フンボルトにおける教育を「改革」することの思想と行政改革――独自性・多様性・相互作用
第八章 学術委員会の設置と教育課程の審議過程
第九章 イヴェルドン教員派遣政策
第十章 教育改革論争点としての「教育的教授」
結論 学問中心カリキュラムの再考
引用参考文献
あとがき
初出一覧
資料(1.フンボルトの生涯/2.プロイセン教育改革の重要政策・文書の策定年表)

著者|author

宮本勇一(みやもと・ゆういち)
1991年、東京都大田区生。広島大学大学院人間社会科学研究科助教。広島大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI)教育研究推進員を経て2021年より現職。専門は教授学説史、カリキュラム、教育方法学。著書に Lesson Study-based Teacher Education(共著、Routledge、2021 年)、Unterrichtsforschung und Unterrichtspraxis im Gespräch: Interkulturelle und interprofessionelle Perspektiven auf eine Unterrichtsstunde(共著、Klinkhardt、2022 年)、論文に Wilhelm von Humboldt’s Bildung theory and educational reform: reconstructing Bildung as a pedagogical concept. Journal of Curriculum Studies. 84(1), 1-18(2021-22年)、Intercultural Collaborative Lesson Study between Japan and Germany. International Journal for Lesson and Learning Studies, 10(3), 245-259(共著、2021 年)、「プロイセン教育改革期の教育改革論争点としての「教育的教授」――グラッフとフンボルトの改革案を中心に」『教育学研究』第88 巻、2021 年(日本教育学会研究奨励賞)、「フンボルトの一般陶冶論の教授学的再構成――「学問的な見方」の固有性と相互関連性に着目して」『教育方法学研究』第43 巻、2018 年(日本教育方法学会研究奨励賞)など、訳書に「〔翻訳〕歴史的/体系的――教育史学における方法論争へのコメンタール」(共
訳、『教育科学』第33 巻、2022 年)など。

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『狐物語』とその後継模倣作におけるパロディーと風刺

『狐物語』とその後継模倣作におけるパロディーと風刺

  • 高名康文(著)/2023年3月
  • 4500円(本体)/A5判上製418頁
  • 装丁:矢萩多聞

ルナールよ、もっと礼節を知り、もう少し若く、もっと清潔でいることを知り 繻子や黒貂の着物をまとった恋人を他に作りなさい。
べランの妻のムースは、美しく、若く、たおやかであるぞ。――『狐物語』第VII枝編より
12世紀~13世紀の北フランスで成立した、狡猾な狐「ルナール」の物語群である『狐物語』とその後継作を、同時代の文学作品や宗教儀礼などに対するパロディーに着目しつつ詳解する。
(ISBN 9784861108532)

目次|contents

はじめに
第1部:比較の視点と通時的視点からみた、『狐物語』における12・13世紀の恋愛物語のパロディー
第1章:中世文学におけるパロディーをいかに論じるか
第2章:同時代における他ジャンルの戯作風物語と比較した『狐物語』のパロディーの手続きの特性
第3章:『狐物語』における姦通の言説―曖昧な宣誓の以前と以後
第4章:『狐物語』の初期枝篇における姦通への言及が、写本の伝承過程において増加すること
第2部:『狐物語』における「逆さまの世界」、定型表現のパロディー
第1章:告解するルナール狐とベルナール首席司祭―『狐物語』第XVII枝篇における「逆さまの世界」
第2章:⼈と会話をする動物―『狐物語』第XII枝篇の場合
第3章:『狐物語』第VII枝篇における告解のパロディー
第4章:『狐物語』における武勲詩のパロディー―第I枝篇の鶏たちの告訴のエピソードにおける武勲詩詩節(laisse)の模倣
第5章:『狐物語』における喪の嘆きの表現のパロディー
第3部:『狐物語』のその後
第1章:ルナールと托鉢修道会―リュトブフ、『ルナールの戴冠』、『新版ルナール』
第2章:『新版ルナール』と『アーサー王の死』における運命の女神
第3章:フォヴェール、ルナール、フォルトゥーナ―『狐物語』後継作と『フォヴェール物語』
第4章:『狐物語』と『フォヴェール物語』における人間/動物/仮面
補遺
第1章:『パレルモのギヨーム』と『狐物語』―ジャンルのパロディー
第2章:クレティアン・ド・トロワの喪の嘆きの描写
第3章:『狐物語』における色彩―データと考察
第4章:『狐物語』B写本第5921, 2行を巡る新旧校訂の比較

おわりに
参考文献一覧
索引

著者|author

高名康文(たかな・やすふみ)
成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科教授。専門はフランス語、フランス文学。

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戦前日本における精神衛生相談の成立

戦前日本における精神衛生相談の成立

理念形成から活動の展開まで

  • 末田邦子(著)/2023年3月
  • 5000円(本体)/A5判上製210頁
  • 装丁:長田年伸

日本において精神病者への相談に始まった専門相談は、どのような動きのなかで「精神衛生相談」に変容し、それは誰が担い、どんな機能を持っていたのか――。本書では相談理念形成の母胎となった戦前期に着目し、背景にある社会状況、政策・法制、関連団体の活動実態を歴史的視点から提示。その成立過程をたどり、特徴を明らかにする。

(ISBN 9784861108624)

目次|contents

序 章 日本における精神衛生相談の成立過程への視角

第1部 戦前日本における精神衛生相談の理念の成立
第1章 精神病者への相談から「精神衛生相談」へ 政策動向の検討
第2章 精神衛生相談理念に対する議論と動向(1) 関連三団体機関誌の検討
第3章 精神衛生相談理念に対する議論と動向(2) 社会事業団体機関誌の検討

第2部 戦前日本における精神病者への相談活動および精神衛生相談活動の実態
第4章 精神病者への相談および「精神衛生相談」の活動実態
第5章 方面委員による精神病者への相談活動(1) 東京市の検討
第6章 方面委員による精神病者への相談活動(2) 1935年発表の手記の検討
第7章 村松常雄の精神衛生思想と活動の展開 欧米留学時までの検討

終 章 総括と今後の課題

おわりに
初出一覧
引用文献
索引

著者|author

末田邦子(すえだ・くにこ)
愛知淑徳大学福祉貢献学部准教授。専門は社会福祉学。
1970年生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒、精神科診療所および精神科病院勤務を経て、日本福祉大学大学院社会福祉学研究科博士前記課程、同大学院福祉社会開発研究科博士後期課程修了。博士(社会福祉学)。
2006年、金城学院大学人間科学部助教、2013年より現職。
著書に、『戦後社会福祉の歴史研究と方法:第二巻』(近現代資料刊行会、2022年、共著)など。

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人形とイギリス文学―ブロンテからロレンスまで

人形とイギリス文学

ブロンテからロレンスまで

  • 川崎明子(著)/2023年3月
  • 3400円(本体)/四六判上製270頁
  • 装丁:矢萩多聞

いかにして人形は人間となり、人間は人形となるのか?
19世紀から20世紀のイギリス小説に登場する人形を分析することで、人間と非人間、生物と非生物の境界や関係を吟味し、人間を人間として扱うことの意味を問う。
(ISBN 9784861108457)

目次|contents

序章:人形はどこへ行った
第1章:人形を愛する―シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』―人形ではなく人間として愛し愛されるまで
第2章:人形を埋める―チャールズ・ディケンズ『荒涼館』―鏡/鑑としての人形
第3章:人形を罰する―ジョージ・エリオット『フロス河の水車場』―少女がふるう暴力
第4章:人形に話す―フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』―人形エミリーの退場と女王セーラの入場
第5章:人形で遊ぶ―H・G・ウェルズ『トーノ・バンゲイ』―ドールハウスを出て大海へ
第6章:人形を燃やす―D・H・ロレンス『息子と恋人』―ポール/パウロと〈犠牲〉の終わり
終章:人形はどこへも行かない
参考文献一覧
あとがき
人名索引
事項索引

著者|author

川崎明子(かわさき・あきこ)
駒澤大学文学部英米文学科教授。2005年、東京大学人文社会系研究科英語英文学博士課程単位取得。2005年、University of Hull英文科博士課程修了(PhD)。同人誌『英国小説研究』(英宝社)編集幹事。単著に『ブロンテ小説における病いと看護』(春風社、2015年)、共著に「『デイヴィッド・コパフィールド』海の抑圧―ロビンソン・クルーソー挽歌」『ディケンズ文学における暴力とその変奏―生誕二百年記念―』(大阪教育図書、2012年)、『イギリス文学入門』(三修社、2014年)など。論文に「『不思議の国のアリス』における言語と生物の変身」『人文研紀要』第96号(中央大学人文科学研究所、2020年)、「『サイラス・マーナー』における植物―漸進的発展の跳躍的語り」『英国小説研究』第28冊(英宝社、2021年)など。

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ロマン主義的感性論の展開―ノヴァーリスとその時代、そしてその先へ

ロマン主義的感性論の展開

ノヴァーリスとその時代、そしてその先へ

  • 高橋優(著)/2023年3月
  • 3600円(本体)/四六判上製326頁
  • 装丁:間村俊一

ノヴァーリスを中心とするドイツ・ロマン主義の著作家たちの活動を「感性論」の視点から精読し、現代におけるロマン主義的感性論の意義を捉えなおす。
さらに福島第一原子力発電所事故についての考察を通してロマン主義的感性論への再認識を促し、ロマン主義の時代からの問題意識が現代にも通底していることを示す。

(ISBN 9784861108358)

目次|contents

序:「世界のロマン化」とロマン主義的感性論
第1章:「触覚という活動的感覚―ポエジー」―ノヴァーリスにおける感性論の展開
第2章:ノヴァーリスの自然科学研究における「霊的現在」
第3章:「一冊の本を聖書に高めること」―聖書計画としての『一般草稿』
第4章:「仲介者」としての「詩的国家」―『信仰と愛』における「身体」としての国家
第5章:「第三の要素」としての宗教―『ヨーロッパ』における宗教哲学
第6章:「戦争は地上になくてはならない」―ノヴァーリスの戦争表象
第7章:「小説は生を扱い―生を記述する」―ノヴァーリスの小説理論
第8章:「自然学の根底に真の統一があるかどうか」―『ザイスの学徒たち』における自然学
第9章:「新しい神話」としての『ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン』
第10章:フリードリヒ・シュレーゲル『ルツィンデ』における「世界のための感覚」
第11章:クレメンス・ブレンターノ『ゴドヴィ』における「官能」と「狂気」
第12章:「なんと罪深い狂気だろう」―ボナヴェントゥーラ『夜警』における「狂気」のモチーフ
第13章:「世界のロマン化」から「世界史の最終章」へ―ノヴァーリス、ブレンターノ、クライストにおける「狂気」の表象
終章:ロマン主義的感性論と「フクシマ」
参考文献
主要人物索引

著者|author

高橋優(たかはし・ゆう)
2000年、慶應義塾大学文学部独文学専攻卒業。2002年、同大学院修士課程修了。2008年、トリア大学独文学専攻博士課程修了。博士(文学)。宇都宮大学講師を経て現在福島大学人間発達文化学類准教授。専門はノヴァーリスを中心とするドイツ・ロマン主義の文学と思想。

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討議倫理と教育―アーペル、ヨナス、ハーバーマスのあいだ

討議倫理と教育

アーペル、ヨナス、ハーバーマスのあいだ

  • 丸橋静香(著)/2023年2月
  • 3900円(本体)/四六判上製288頁
  • 装丁:長田年伸

討議という倫理は、どのように自らや互いを支えるか?
意のままにならないものへの応答――
アーペルによって提唱され、ハーバーマスによって定式化された道徳理論である討議倫理学を、言語論的転回の意義を踏まえ、教育実践論的に展開。そのうえで、ヨナスの責任論を契機とするアーペルの共同責任論の批判的検討を基に、討議は論理的思考の外部である〈他者〉によってこそ可能となるという逆説性を指摘することで、教育の倫理を論じる。言語論的転回の徹底に加え、他者論的転回の必要性という視座から、合意を目指すコミュニケーション方略としての討議倫理学の妥当性・可能性を教育学の立場から新たに示す。
(ISBN 9784861107726)

目次|contents

序章 問題関心と研究の課題――討議倫理学と教育学
第一節 問題関心――言語論的転回の徹底と他者論的転回の必要性
第二節 本研究の対象――なぜアーペル討議倫理学か
第三節 研究の課題と方法
第四節 先行研究の検討
第五節 本書の構成
第一章 アーペル討議倫理学の基本枠組――一九七〇年代の議論を中心に
はじめに
第一節 アーペル討議倫理学の背景
第二節 超越論的語用論的討議倫理学
おわりに
第二章 アーペル討議倫理学の責任論――ヨナス責任論との比較
はじめに
第一節 ヨナスの責任論の背景
第二節 ヨナスの責任論
第三節 未来倫理としての討議倫理学の優位――ヨナスに対するアーペルの批判
第四節 アーペルの未来倫理――討議能力を持たないものへの配慮義務の根拠づけ
おわりに
第三章 現代社会における責任性とその形成――アーペルの「共同責任」概念を手がかりに
はじめに――近代的個人主義的責任概念の限界
第一節 教育学における責任性――ドイツ教育学の議論から
第二節 今日的な責任性――アーペルの「共同責任」概念を手がかりに
第三節 責任性の形成可能性
第四節 相互主体的対話実践による責任性の形成
おわりに
第四章 超越論的語用論的な討議倫理学の教育実践への適用――相互主体的対話実践を可能にする手立て(1)
はじめに
第一節 討議実現に関するドイツ批判的教育学議論の問題点
第二節 討議倫理学における「適用問題」
第三節 ニケの「道徳の現実的討議理論」にもとづく教育構想
おわりに――考えられる批判と討議倫理学に関する教育学的研究の課題
第五章 言語能力の発達段階を踏まえた討議主体形成――相互主体的対話実践を可能にする手立て(2)
はじめに
第一節 討議倫理学における討議
第二節 討議能力の発達段階と子どもの区分
第三節 大人-子ども間の討議
おわりに
第六章 ハーバーマス討議倫理学の限界が示唆する道徳教育の構想原理――教育学における討議倫理学研究の他者論的転回(1)
はじめに――ハーバーマス討議倫理学の限界を問うことの教育学的意味
第一節 ハーバーマスにおけるオースティン言語行為論受容の検討
第二節 ハーバーマスの承認論――テイラーの承認論との比較から
第三節 道徳教育の原理――「差異の原理」/「平等の原理」
おわりに
第七章 アーペル討議倫理学の逆説的構造が示唆する教育の倫理――教育学における討議倫理学研究の他者論的転回(2)
はじめに
第一節 対称的関係に立脚する倫理構想としてのアーペル討議倫理学
第二節 「共同責任」概念再論――ロゴスの〈他者〉という観点から
第三節 「共同責任」概念の教育学的意義
おわりに
終章 アーペル討議倫理学の教育学的意義
第一節 本研究のまとめ
第二節 教育学的帰結
第三節 残された課題
参考文献
あとがき
事項/人名索引

著者|author

丸橋静香(まるはし・しずか)
一九七三年長崎県生まれ。広島大学教育学部教科教育学科卒業。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期単位取得退学。島根大学講師、同准教授を経て、現在島根大学大学院教育学研究科教授。博士(教育学)。教育哲学専攻。主な著書・論文に、「K・-O・アーペルの討議倫理学における『共同責任』概念の教育学的意義――H・ヨナスの責任原理への批判的応答の検討をとおして」(『教育哲学研究』第一一三号、二〇一六年)、『教育的関係の解釈学』(共著、東信堂、二〇一九年)ほか。

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