躍動する聖地―マダガスカル・イメリナ地方におけるドゥアニ信仰の生成と発展

躍動する聖地

マダガスカル・イメリナ地方におけるドゥアニ信仰の生成と発展

  • 江端希之(著)/2023年3月
  • 5200円(本体)/A5判上製480頁
  • 装丁:矢萩多聞

宗教専門紙記者を経てアフリカ研究者を志した筆者が、精霊の息づく島国マダガスカルで出会ったのは、国内外から多数の巡礼者を集める聖地ドゥアニ。
どこか日本の神社にも似た雰囲気をもつ精霊祭祀の聖地ドゥアニで繰り広げられる、躍動する祈りの実践を、信仰を形作る様々なモノやイメージに着目し描き出す
(ISBN 9784861108501)

目次|contents

はじめに―マダガスカルに神社の幻影を求めて

序章

第Ⅰ部  ドゥアニ信仰の背景と構成
第1章 イメリナ地方における伝統宗教と社会制度・世界観・人間観
第2章 イメリナ地方におけるドゥアニ信仰の構成要素
第3章 イメリナ地方におけるドゥアニ信仰と他の宗教の関係性

第Ⅱ部  ドゥアニ信仰の生成
第4章 イメリナ地方におけるドゥアニ信仰の生成
第5章 サカラヴァ・ブイナ地方におけるドゥアニ信仰の歴史と変化
第6章 憑依儀礼チュンバの考察
第7章 西インド洋に広がるドゥアニ信仰

第Ⅲ部  ドゥアニ信仰の発展
第8章 イメリナ地方におけるドゥアニ信仰の具象化
第9章 ドゥアニを巡礼する人々
第10章 聖地マンガベの生成と発展
第11章 マンガベにおける日常実践
第12章 ドゥアニにおける権力関係

終章
あとがき
参考文献
索引

著者|author

江端 希之(えばた・まれゆき)
1980年静岡県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。
博士(地域研究)。専門はアフリカ地域研究、宗教研究。
宗教専門新聞『中外日報』記者、日本学術振興会特別研究員DC、京都大学アフリカ地域研究資料センター機関研究員などを経て、現在、和布刈神社(北九州市)に権禰宜として奉職。
また現在、京都大学アフリカ地域研究資料センター特任研究員、大阪大学外国語学部非常勤講師、全国マダガスカル伝統治療師協会(伝統治療師)。

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〈怒り〉の文学化―近現代日本文学から〈沖縄〉を考える

〈怒り〉の文学(テクスト)化

近現代日本文学から〈沖縄〉を考える

  • 栗山雄佑(著)/2023年3月
  • 4200円(本体)/四六判上製444頁
  • 装丁:矢萩多聞

戦後50年の節目の年、1995年。1月17日、阪神・淡路大震災発生。3月20日、地下鉄サリン事件発生。そして9月4日、沖縄県民にとって衝撃の事件が起こる。さまざまな暴力の記憶が甦り、長年押し殺してきた〈怒り〉が噴出する!
〈怒り〉を暴力として放出するのではなく、文学で昇華させることはできるのか。

(ISBN 9784861108587)

目次|contents

序章 今、「沖縄」の文学を読むということ

第1部 〈一九九五年九月四日〉へ至る道―浮上する暴力の記憶
第1章 補填された欲望/裂け目からの〈叫び〉―又吉栄喜「ギンネム屋敷」論
第2章 眼前のフェンスを〈撹乱〉するために―又吉栄喜「ジョージが射殺した猪」論
第3章 テロル・皇族・沖縄を再考するための〈弱さ〉―目取真俊「平和通りと名付けられた街を歩いて」論
第2部 「希望」が提起したもの―〈一九九五年九月四日〉から立ち上がる記憶・抵抗
第4章 浮上する記憶/すれ違う記憶―〈一九九五・九〉以後の文学における初期反応
第5章 〈怒り〉の連環を止める方途―目取真俊「希望」論
第6章 誰がために〈怒り〉を言語化するのか―目取真俊「虹の鳥」論

第7章 語られぬ記憶を〈放出〉する器官―目取真俊「水滴」を読み替える
第3部 他者の声で変容する聞き手―沖縄の声を聞き受けるために
第8章 被害記憶理解への欲望と違和―目取真俊「群蝶の木」論
第9章 〈ノイズ〉混じりの証言を聞き受けること―崎山多美「月や、あらん」論
第10章 沖縄で「そんなにまでして生きないといけない」者に向けて―目取真俊「眼の奥の森」論

終章 「十年後」の「希望」を夢想して

著者|author

栗山雄佑(くりやま・ゆうすけ)
1990年大阪府生まれ。
立命館大学卒業、立命館大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了。現在、立命館大学文学研究科初任研究員。専門は、近現代日本文学・文化、「沖縄」文学。
主な論文に、「癒し得ぬ傷の解消の術を求めて―崎山麻夫「ダバオ巡礼」論」(『立命館言語文化研究』第34巻第1号、2022年)、「〈聞き受け〉つつも〈再生〉できない声―目取真俊「マーの見た空」論」(中川成美、西成彦(編)『旅する日本語―方法としての外地巡礼』松籟社、2022年)など。

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インターフェイス・スピリチュアルケア―永遠と対話の根源へ

インターフェイス・スピリチュアルケア

永遠と対話の根源へ

  • 小西達也(著)/2023年3月
  • 5000円(本体)/四六判並製コデックス456頁
  • 装丁:長田年伸
  • 装画:moineau

「異なる信仰間の」を意味するインターフェイスな関係性において終末期患者への心のケアはいかにして可能か。理論化への真摯な問い。

(ISBN 9784861108662)

目次|contents

はじめに

1.序論
第一部 万人に受容可能な世界観に基づいたスピリチュアルケア理論(第一理論)
2.スピリチュアルケアの定義・理論に求められるもの
3.スピリチュアルケア第一理論
4.スピリチュアルケア第一理論の吟味
第二部 「東洋哲学」的世界観に基づくより統合的なスピリチュアルケア理論(第二理論)の構築
5.第一理論の基盤世界観の限界
6.統合的理論の基盤世界観の候補としての井筒モデル
7.スピリチュアルケア第二理論の基盤世界観―NOTS(ノッツ)デル―
8.スピリチュアルケア第二理論
第三部 まとめ
9.スピリチュアルケア第一理論と第二理論のまとめ
10.NOTSモデルのさらなる可能性に向けて

おわりに――筆者の人生の中での本書の位置づけ
あとがき
基本用語集
参考文献
事項索引/人名索引

著者|author

小西達也(こにし・たつや)
武蔵野大学教授。1967年静岡県生まれ。1992年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。(株)日立総合計画研究所、経営コンサルティング会社取締役を経て米国カリフォルニア州アルタ・ベイツ・サミット医療センター チャプレン、米国ハーバード大学神学大学院修士課程修了。東札幌病院チャプレン、爽秋会岡部医院チャプレンを経て、2013年から現職。博士(京都大学)。
専門はスピリチュアルケア論、スピリチュアリティ論。日本臨床宗教師会理事、日本スピリチュアルケア学会理事、日本臨床死生学会評議員。主な著書(共著)は『仏教とスピリチュアルケア』(東方出版、2008年)、The MASCC Textbook of Cancer Supportive Care and Survivor-ship (Springer、2010年)、『チームがん医療 実践テキスト』(先端医学社、2011年)、『グリーフケア入門』(勁草書房、2012年)、『無心のケア』(晃洋書房、2020年)。

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恵みありて、インジェラに集う―エチオピア正教徒の食をめぐる生活誌

恵みありて、インジェラに集う

エチオピア正教徒の食をめぐる生活誌

  • 上村知春(著)/2023年2月
  • 6000円(本体)/A5判上製540頁
  • 装丁:中本那由子

一年の半分を「断食」して過ごす、エチオピアのキリスト教徒たち。かれらにとって、「食べること」「食べないこと」は、いったいどういうものなのだろうか。主食のクレープ「インジェラ」や、コーヒーをはじめとする食べ物・飲み物の生産-調理-消費からみる、「食と宗教」、そして生活。

(ISBN 9784861108297)

目次|contents

はじめに
序章
第1章 アムハラの地理と人、暮らし
第2章 エチオピア正教徒の食生活を基礎づける暦―よき信徒としての実践
第3章 食事の様式
第4章 食事の基盤「インジェラ」―主食と副食のセット
第5章 日常生活に欠かせない飲み物―穀物からつくる酒
第6章 穀物の栽培―インジェラと酒の原料
第7章 インジェラとはちがうよろこび―主食穀物をもとにつくられる軽食
第8章 「非断食の食べ物」―動物性食品
第9章 コーヒーを淹れて、皆とともに飲む
第10章 食べ物の価値判断―「ふさわしさ」と「おいしさ」、有用性
第11章 食の仕事にたずさわる―食材や料理との向きあい方
第12章 調理の担い手の実践―調理者であること、調理者になること
第13章 飲食をつうじて神の力を享受する
第14章 暦に沿った祝い日
終章

おわりに
参照文献
索引

お詫びと訂正

本文中に編集上の不手際で以下のような誤りが生じました。謹んでお詫びして訂正いたします。

●34ページ(太字下線部が訂正箇所)

(誤)テフの名はアムハラ語で「消える(タッファ)」を意味する単語に由来し、じっさいに、穀粒の大きさは長径一〜二ミリメートル、幅〇・六〜一ミリメートル、千粒あたりの重さは二グラムしかない(写真 序-2)(重田 2003: 220–221; Taylor & Emmambux 2008)。

(正)テフの名はアムハラ語で「消える(タッファ)」を意味する単語に由来し、じっさいに、穀粒の大きさは長径一〜二ミリメートル、幅〇・六〜一ミリメートル、千粒あたりの重さは〇・三~〇・四グラムしかない(重田 2003: 220–221; Simoons 1960: 100も参照)(写真 序-2)。

 

●188ページ(太字下線部が訂正箇所)

(誤)序章では、テフがいかに小さいか(長径一〜二ミリメートル、幅〇・六〜一ミリメートル、千粒重約二グラム)に言及したが、シコクビエも十分に小さい。

(正)序章では、テフがいかに小さいか(長径一〜二ミリメートル、幅〇・六〜一ミリメートル、千粒重約〇・三グラム)に言及したが、シコクビエも十分に小さい。

 

著者|author

上村知春(かみむら・ちはる)
国立民族学博物館外来研究員
アフリカ地域研究、食研究、人類学
主な著作に、「聖日を「祝う」──エチオピア正教会信徒の食の実践に着目して」(『文化人類学』印刷中)、「シコクビエ栽培の民族誌的研究── エチオピア北西部アムハラ州西ゴッジャム県の事例」(『農耕の技術と文化』31、2022年)など

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今に向き合い、次につなぐ―諏訪大社御柱祭の祭礼民俗誌

今に向き合い、次につなぐ

諏訪大社御柱祭の祭礼民俗誌

  • 石川俊介(著)/2023年2月
  • 5000円(本体)/A5判上製406頁
  • 装丁:長田年伸

六年に一度あるが、毎回同じものではない。
「暴力」や「危険」、「伝統」や「素朴」だけではない。

時代とともに移ろい、生身の人間たちが生々しく生きる生活の一部である、諏訪大社御柱祭。この大規模な祭礼の今の姿を、「反復」される中にある「一回性のもの」に着目しながら多角的に描き出す。
(ISBN 9784861108488)

目次|contents

はじめに
序論

第Ⅰ部 御柱祭概説
第1章 御柱祭

第Ⅱ部 御柱の来歴
第2章 樅の木が御柱になる―用材調達
第3章 御柱を曳く―曳き綱はいかに製作されるのか
第4章 御柱を「ご神木」にする―木遣り唄の役割
第5章 欠片を頂く、古い御柱を拝戴する―創造されるモノとしての御柱の価値

第Ⅲ部 祭りをめぐる人々と社会
第6章 行事を生み出す―下社木落しの「発明」
第7章 祭りを規制する―御柱祭と「暴力」
第8章 価値を語る―死傷者の「話」は何を表現するのか
第9章 資源化する―観光イベントで表現される御柱祭

結論 今に向き合うこと、次につなぐこと

おわりに
初出一覧
参考文献
索引

著者|author

石川俊介(いしかわ・しゅんすけ)
追手門学院大学社会学部・講師
文化人類学、民俗学

主な著作に、「歌唱行為によって遂行される「儀礼」――諏訪大社御柱祭の木遣り唄と事例として」(『年報人類学研究』13、2022年)、「御柱祭における曳き綱製作――富士見町富士見地区を事例として」『信濃』74(6)、2022年)、「聞きづらい「話」と調査者――諏訪大社御柱祭における死傷者の「話」を事例として」『日本民俗学』268、2011年)など。

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住宅をめぐる〈欲望〉の都市論―民間都市開発の台頭と住環境の変容

住宅をめぐる〈欲望〉の都市論

民間都市開発の台頭と住環境の変容

  • 吉江俊(著)/2023年2月
  • 3500円(本体)/A5判並製コデックス装384頁
  • 装丁:コバヤシタケシ

都市の住宅は、わたしたちは、いったい何を欲してきたのだろう? 
民間による商品住宅開発が大都市の「普通の暮らし」を再編して30余年。新自由主義の住宅政策への転換・民間住宅開発の台頭・首都の再都市化・人口の都心回帰、これらが混然一体となる「第二の都市化」のなかで進行してきた住宅とまちの変化を眺望する。

序論「「欲望の都市論」序説―大都市と農村の往復から都市論を編む」を公開しています[pdfファイルが開きます]

(ISBN 9784861108280)

目次|contents

序  「欲望の都市論」序説―大都市と農村の往復から都市論を編む

第Ⅰ部  ふたつの都市化
第1章  過渡期の空間―住宅の変容から「第二の都市化」をとらえる
第2章  前史―「マンション」の登場と住宅の商品化

第Ⅱ部  欲望と暮らしのモード
第3章  住環境への欲望と都心回帰
第4章  「第二の都市化」と暮らしのモードの30年史
補論1  都心居住の呪いを解く試み―「戸建て感覚」と「ホテルライク」な住宅の出現

第Ⅲ部  欲求の階層性と住宅選択
第5章  住環境への欲求と居住者像
第6章  「第二の都市化」の時代の住宅選択

第Ⅳ部  遷移する地域とジェントリフィケーション
第7章  マンション開発と地域像
第8章  遷移する地域のフィールドワーク
第9章  東京のみえない格差と息苦しさの地理学
補論2  3つの大都市のジェントリフィケーション

結  「第二の都市化」はどこへ向かうか―都市論と都市計画の円環へ

あとがき
索引

図集  住環境をめぐる「欲望」の地図
写真  「第二の都市化」の風景
年譜  住宅をめぐる「第二の都市化」の展開

著者|author

吉江俊(よしえ・しゅん)
早稲田大学建築学科講師、博士(工学)。専門は都市論・都市計画論。
日本学術振興会特別研究員、ミュンヘン大学訪問研究員を経て現職。自治体・住民と協働した地方市町村のまちづくり、民間企業と協働の都市再生や「迂回する経済」の実践研究まで幅広く行う。近年は早稲田大学キャンパスマスタープラン作成、東京都現代美術館「吉阪隆正展」企画監修など。
著書に『無形学へ かたちになる前の思考――まちづくりを俯瞰する5つの視座』(共著、水曜社、2017年)、『クリティカル・ワード 現代建築―社会を映し出す建築の100年史』(共著、フィルムアート社、2022年)、『コミュニティシップ――下北線路街プロジェクト。挑戦する地域、応援する鉄道会社』(共著、学芸出版社、2022年)、『吉阪隆正 パノラみる』(共著、ECHELLE-1、2022年)。
本書が初の単著となる。継続するテーマを扱った次作として、『迂回する経済の都市論』が近刊予定。

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ヴァールミーキはどこへ行けばよいのか―現代インドの清掃人カースト差別と公衆衛生の民族誌

ヴァールミーキはどこへ行けばよいのか

現代インドの清掃人カースト差別と公衆衛生の民族誌

  • 増木優衣(著)/2023年2月
  • 4500円(本体)/A5判上製358頁
  • 装丁:矢萩多聞

インド社会の排泄物処理を含むサニテーションをその末端で担ってきた、「清掃人カースト」ヴァールミーキの人びと。
ガーンディーの思想を受け継ぐNGOをはじめ、人道的使命に突き動かされた様々な人びとの闘いにより、排泄物処理人たちは、不潔で不浄な労働や差別から「解放」されていったとされている。
しかしながら実際に、彼らはいかなる労働を行い、そこにどのような意味づけを主体的になしてきたのだろうか。そして彼らの社会的な位置づけはいかに変化し、彼らはどこへ向かっているのだろうか。

(ISBN 9784861108273)

目次|contents

序論
第1章 清掃人カースト研究と本書のねらい
第2章 調査地のヴァールミーキとNGOスラブ
第3章 英領インドにおける乾式トイレ・システムと清掃人
第4章 地域の排泄物処理システムとヴァールミーキ
第5章 不可触民解放運動と水洗トイレ普及運動の歴史
第6章 乾式トイレの廃絶とヴァールミーキの労働実践の変容
第7章 公衆衛生的言説の創造的利用と新たな葛藤
結論 ケガレの積極的受容と差別のはざまで
あとがき
参考文献
索引

著者|author

増木優衣(ますき・ゆい)
日本学術振興会特別研究員(PD)
文化人類学、南アジア地域研究
主な著作に、「サニテーション労働とカースト: インドの事例から」(中尾世治・牛島健編『社会・文化からみたサニテーション』講座サニテーション学 第2巻、北海道大学出版会、2023年春刊行予定)、“Ideas and Practices for Restoring the Humanity of Sanitation Workers in India,” (T. Yamauchi, S. Nakao, and H. Harada eds., The Sanitation Triangle: Socio-Culture, Health and Materials, Singapore, Springer, 2022)、 “Historical Development of Low-Cost Flush Toilets in India: Gandhi, Gandhians, and ‘Liberation of Scavengers’,” (Sanitation Value Chain, 2(1), 2018)など。

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戦間期チェコのモード記者 ミレナ・イェセンスカーの仕事―〈個〉が衣装をつくる

戦間期チェコのモード記者 ミレナ・イェセンスカーの仕事

〈個〉が衣装をつくる

  • 半田幸子(著)/2023年3月
  • 4500円(本体)/A5判上製416頁
  • 装丁:中本那由子

“カフカの恋人”として知られたミレナ・イェセンスカー。その文脈で語られる不遇なイメージからこれまであまり素顔を知られることがなかったが、彼女は激動の戦間期(1920-30年代)に国家アイデンティティの揺らぐ中欧チェコにおいて、生活主体としての女性たちに向けて新しいファッションやライフスタイルを啓蒙した「モード記者」であった。その信条は「シンプル」。多くの新聞や雑誌に載せた翻訳記事、執筆記事の収集・考察を通して、当時のジャーナリズムが人々の意識形成に果たした役割を明らかにするとともに、イェセンスカーとその仕事を、中東欧メディア史におけるモードの担い手として位置づけ直す。巻末にイェセンスカーによる翻訳記事(306本)、執筆記事(1121本)目録を収載。

(ISBN 9784861108655)

目次|contents

はじめに
凡例

序章 今日、イェセンスカーを論じる意義
第1節 本書の目的と意義:新たなミレナ像を求めて
第2節 これまでの研究と問題の所在
1 伝記と「ミレナ神話」
2 著作研究
3 モードおよびメディアに関する研究
第3節 研究の方法
第4節 本書の構成

第1章 活動の背景:民族および女性の解放とそのメディア
第1節 前史:10世紀から第一共和国前まで
第2節 1920年代:国民国家形成期の女性向け雑誌
1 創刊ラッシュと民族意識の高まり
2 誌面に見る民族意識
3 新聞における女性向け紙面
第3節 女性向け紙面の代表的なジャーナリスト
1 オルガ・ファストロヴァー
2 マリエ・ファントヴァー

第2章 イェセンスカーの執筆活動
第1節 記者前史:女子ギムナジウムにて
第2節 翻訳者として
第3節 フェイェトニスト(文芸欄執筆者)として
第4節 モード記者として
1 『論壇』において
2 『国民新聞』において
3 『鮮やかな週』において
4 『人民新聞』において
第5節 1930年代の活動
1 左翼系新聞・雑誌において
2 『現在』において

第3章 1920年代チェコにおけるモードとモード記者の役割
第1節 想定した読者像
1 読者の性別、年齢および社会層
2 中間層に向けた思い
3 小括
第2節 モードとモード記者の意義
1 1920年代初頭の言説
2 ギムナジウム時代の言説
3 時代認識とモード記者の意義
4 小括
第3節 記事の特徴―外見と内面とその調和

第4章 モード・ライフスタイル論(1)理想の追求
第1節 シンプルという理想
1 装飾の排除
2 機能性や合理性の重視
3 精神面におけるシンプル
第2節 女性の生き方
1 男女平等について
2 モダンな女性の理想像
3 仕事と家庭と衣服
4 イヴニングドレスの特権性と価値観
第3節 シンプルが理想とされた時代に―まとめにかえて

第5章 モード・ライフスタイル論(2)時代と流行
第1節 大量生産・大量消費社会における〈個〉のあり方
第2節 身体と衛生
1 身体の手入れと衛生観念
2 スポーツ
第3節 外国イメージとモード・ライフスタイル
1 ドイツ語圏観
2 フランス観
3 イギリス・アメリカ観
4 外国イメージに見る思想
第4節 流行との距離
第5節 イェセンスカーと時代と流行と―まとめにかえて

補章 戦間期チェコのジャーナリズム史
第1節 第一共和国期(1918‐1938):新聞各紙とその特徴
1 主要五政党および共産党と各日刊機関紙
農業党と『田園』
社民党と『人民の権利』
国民社会党と『チェコの言葉』
人民党と『人民新報』
国民民主党と『国民新聞』
共産党と『赤い権利』
2 非政党機関紙
『国民政治』
『人民新聞』
『論壇』
『国民解放』
第2節 第二共和国期(1938・10‐1939・3)

終章

あとがき
参考文献
補遺
索引

著者|author

半田幸子(はんだ・さちこ)
ノースアジア大学法学部専任講師。博士(国際文化)。専門は、中東欧メディア文化史/文化論、国際文化論、比較文化論、外国語教育。
2001年3月、東京外国語大学外国語学部ロシア・東欧課程チェコ語学科卒業。2020年9月、東北大学大学院国際文化研究科博士後期3年の課程修了。
大学卒業後、在チェコ日系企業で通訳、仙台徳洲看護専門学校非常勤講師(比較文化)、東北文化学園大学非常勤講師(英語)、宮城学院女子大学非常勤講師(英語)を経て現職。
著書に、『翻訳文学紀行 Ⅳ』(ことばのたび社、2022年、共著〈担当箇所:「新しい時代を生きる――チェコ語文学(チェコスロヴァキア)ミレナ・イェセンスカー「浴室、身体、そしてエレガンス」[他2編]」37-64頁〉)。

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あいまい化する〈当事者〉たち―韓国セクシュアル・マイノリティ運動から考えるコミュニティの未来

あいまい化する〈当事者〉たち

韓国セクシュアル・マイノリティ運動から考えるコミュニティの未来

  • 柳姃希(著)/2023年3月
  • 3500円(本体)/A5判上製204頁
  • 装丁:中本那由子

見えない声を聴く――

歴史・宗教的にジェンダー格差が根深い韓国において、LGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティたちは如何にして自己のアイデンティティを確立し、社会的立場を獲得していったのか。1990年代以降の韓国の「セクシュアル・マイノリティ運動」の萌芽、変遷の検討から、マイノリティたちが団体や居場所を隠れ蓑として自ら〈当事者〉であることをあいまいにすることで自己を守りながらも、自分たちが抱える問題を可視化し、社会変革を起こしてきた様子を浮かび上がらせる。

(ISBN 9784861108648)

目次|contents

はじめに

序章 エンパワメントの視点からみる韓国のセクシュアル・マイノリティ運動
第1節 研究の背景と問題意識
第2節 当事者性とニーズ論
第3節 エンパワメント過程の分析枠組み
第4節 クィア・スタディーズというアプローチ
第5節 本書の概要

第1章 韓国におけるセクシュアル・マイノリティの差別状況と運動――先行研究から
第1節 韓国におけるセクシュアル・マイノリティ差別
第2節 韓国における国・地方自治体の取り組みと限界
第3節 韓国におけるセクシュアル・マイノリティ運動
第4節 韓国におけるセクシュアル・マイノリティ研究とその分野

第2章 セクシュアル・マイノリティ個人の肯定化――「非認知ニーズ」の当事者性
第1節 セクシュアル・マイノリティに対する社会の無知
第2節 セクシュアル・マイノリティ当事者の無知と不安
第3節 出逢いの場を求めるセクシュアル・マイノリティ
第4節 当事者性にみる問題意識の芽生え――ヨウンヘの誕生

第3章 セクシュアル・マイノリティ当事者の可視化と活動の変容――当事者性の獲得
第1節 軍事政権の終焉とセクシュアル・マイノリティ運動の始まり
第2節 セクシュアル・マイノリティ運動の担い手の登場
第3節 セクシュアル・マイノリティ存在の可視化の下での差別と嫌悪
第4節 セクシュアル・マイノリティ差別への危機感とオンラインコミュニティの急増

第4章 「あいまいな当事者性」戦略――社会変革を目指して
第1節 セクシュアル・マイノリティ芸能人の登場と差別の本格化
第2節 人権問題として取り上げられるセクシュアル・マイノリティ問題
第3節 姿を隠すセクシュアル・マイノリティ運動の担い手――「あいまいな当事者性」戦略
第4節 「あいまいな当事者性」戦略の転換
第5節 セクシュアル・マイノリティ運動にみるニーズの変遷過程――ニーズの発生と充足

第5章 セクシュアル・マイノリティ運動の新たな動き――「あいまいな当事者性」戦略の現状
第1節 セクシュアル・マイノリティをめぐる社会の新たな動き
第2節 セクシュアル・マイノリティ人権運動に反対する近年の動向
第3節 セクシュアル・マイノリティ運動の中で抱える運動団体の課題
第4 節 「あいまいな当事者性」戦略によるセクシュアル・マイノリティの日常的生活課題の潜在化

終章 新たなコミュニティの創造によるエンパワメント
第1節 韓国のセクシュアル・マイノリティ運動におけるコミュニティの機能
第2節 主体化する当事者と新たなコミュニティ
第3節 新たなコミュニティの生成とエンパワメント
第4節 本書の限界と課題

おわりに

引用文献・参考文献リスト

著者|author

柳 姃希(ユウ・ジョンヒ)
1984年 韓国ソウル生まれ
2007年に留学のため来日
2011年 立教大学コミュニティ福祉学部、コミュニティ政策学科 卒業
2013年 立教大学コミュニティ福祉学研究科 コミュニティ福祉学専攻 博士前期課程修了
2019年 立教大学コミュニティ福祉学研究科 コミュニティ福祉学専攻 博士後期課程満期退学
2020年 立教大学で博士の学位授与
2020年10月-2021年3月 立教大学コミュニティ福祉学部 福士実習教育室 教育研究コーディネーター
2021年4月-現在 武蔵野大学 人間科学部 社会福祉学科 助教
2022年4月-現在 西東京市市民協働推進センター運営委員会 委員
社会福祉士、精神保健福祉士

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取るに足らないものたちの民族誌―チリにおける開発支援をめぐる人類学

取るに足らないものたちの民族誌

チリにおける開発支援をめぐる人類学

  • 内藤順子(著)/2023年3月予定
  • 3800円(本体)/四六判上製282頁
  • 装丁:中本那由子

貧困者、支援者、弱者、専門家。彼らは何者なのだろう。
「小さき人びと」はどのように世界を見て、生きているのだろう。

政府開発援助の現場における、人類学者のもがきと葛藤の記録。

支援現場において人類学を志す者が、様ざまな文脈を生きなければならないということ、何事にも生身でむきあう文化人類学の知と営為には可能性があるということを、本書では述べたいと思う。いわゆる社会的弱者とそうではない人びとがいるこの世界で、開発支援はどのように実践されるとよいのか、人類がうまく共生するにはどのような道がありうるのか。 [本文より]

(ISBN 9784861108259)

目次|contents

序章
第1章 チリにおける貧困の諸相
第2章 「貧困空間」の人類学
第3章 「貧困空間」の民族誌
第4章 開発現場の人類学/開発現場で人類学
第5章 専門知のリハビリテーションに向けて
おわりに
参考文献

著者|author

内藤順子(ないとうじゅんこ)
早稲田大学理工学術院・教授。博士(人間科学・早稲田大学)。専門は文化人類学。
主な著作に、『〈境界〉の今を生きる:身体から世界空間へ・若手一五人の視点』(共編、東信堂、2009年)、「痛みと記憶:チリ・軍政下を生き抜く女性たち」(田中雅一・嶺崎寛子編『ジェンダー暴力の文化人類学:家族・国家・ディアスポラ社会』昭和堂、2021年)など。

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