英語のルーツ

英語のルーツ

  • 唐澤一友(著)/2011年9月
  • 2000円(本体)/四六判並製・262頁
  • 装丁:矢萩多聞/装画:たけなみゆうこ

「AnneのニックネームがなぜNancy?」「every dayは名詞が並んでいるのになぜ副詞扱い?」英語の歴史的な発展をたどり、他の言語と比較。英語が深く理解できるようになる、英語学のユニークな入門書。
(ISBN 9784861102837)

目次|indexes

はじめに

序章│英語発達史概観
英語史の時代区分
古英語とは
中英語とは
豊かな英語語彙
近代英語とは
まとめ

第1章│インド・ヨーロッパ祖語民族の言語・文化・神話
インド・ヨーロッパ祖語民族の世界
インド・ヨーロッパ祖語から各言語へ
印欧語比較言語学の始まり
有史以前の世界への扉としての言語
太古の人的交流の痕跡としての言語
車輪の発明とインド・ヨーロッパ祖語民族
印欧語アナトリア起源説
トロイ出身の王侯貴族?
羊と馬とインド・ヨーロッパ祖語民族
印欧諸語の単語の構造
インド・ヨーロッパ祖語民族の神々
「父なる天の神」
母音交替(ablaut, gradation)
ボキャブラリー・ビルディングへの応用

第2章│英語の語源と印欧語比較言語学
印欧語の語源学を支える印欧語比較言語学
ゲルマン語派に起きた音韻変化1 ― グリムの法則
意外な同語源語1 ― headとchief
意外な同語源語2 ― guestとhost
言葉を通じて見る古代社会
ゲルマン語派に起きた音韻変化2 ― ヴェルネルの法則
wasとwereの関係 ― r音化(rhotacism)
参考―第二次子音推移
ゲルマン祖語におけるアクセント位置の固定
参考―頭韻詩の発達

第3章│印欧諸語の中の英語
インド・ヨーロッパ祖語の文法的特徴
名詞の文法性(grammatical gender)
文法性から自然性へ
北から南へ波及した文法性の消失
インド・ヨーロッパ祖語における名詞の数(number)
インド・ヨーロッパ祖語における名詞の格(case)
インド・ヨーロッパ祖語の8つの格
主な印欧諸語における格変化
格変化の用法
主格(nominative)、呼格(vocative)
属格(genitive)
days and nightsの起源 ― 副詞的属格(adverbial genitive)1
与格(dative)
対格(accusative)
副詞的対格(adverbial accusative)
副詞的目的格(adverbial objective)
奪格(ablative)
具格(instrumental)
位格(locative)
格変化と語順の関係
格の統合(case syncretism)
some dayの起源 ― 副詞的与格(adverbial dative)
sinceの起源 ― 副詞的属格2
格変化の衰退と前置詞の用法の発達
前置詞の起源
前置詞の格支配
英語における前置詞の用法の発達
英語の難しさ
今なお失われつつある格の感覚
格の感覚の喪失を反映した言葉遣いと過剰訂正
形容詞
動詞
「三単現の -s」の起源―動詞の人称変化
保守的なbe動詞
動詞の活用変化と主語の省略
動詞の数(number)
主な印欧諸語における動詞の語形変化
動詞の時制
印欧諸語における動詞の単純時制
ゲルマン語における動詞の時制
2種類の完了形
I am finished.の起源 ― 自動詞の完了形
haveを用いた完了形の起源
現在完了の感覚
進行形の起源と発達
I’m lovin’ it の謎 ― 進行形で使われる状態動詞
印欧諸語における動詞の態
英語における受け身構文の起源と発達
英語における紆言的表現のさらなる発達
動詞の法(mood)
叙想法(仮定法)の感覚
仮定法現在の感覚
仮定法過去の感覚
劇的現在(dramatic present)

第4章│古英語から現代英語まで
古英語の名詞
複数語尾 -s, 所有格語尾 -’sの祖先 ― 古英語の名詞1
単複同形の名詞の起源 ― 古英語の名詞2
複数語尾 -en の祖先 ― 古英語の名詞3
foot-feetタイプの不規則変化名詞の起源 ― 古英語の名詞4
on footの謎?
FranceとFrenchの関係 ― i-mutationの影響
曖昧母音の出現と格変化崩壊の始まり
北から南へ伝わった名詞語形変化の単純化
中英語の南部方言における名詞の語形変化
なぜ -s複数、-’s属格が優勢になったのか ― 類推作用(analogy)
英語における形容詞語形変化の衰退
英語における指示詞語形変化の衰退
保守的な人称代名詞
なぜ借用語they-their-themが本来語に取って代わったのか?
なぜAnneのニックネームはNancyなのか?
古英語の動詞
drive-drove-drivenタイプの不規則変化動詞の起源
規則変化動詞の起源
think-thought-thoughtタイプの不規則変化動詞の起源
類推による強変化動詞の衰退
welcomeの過去形はなぜwelcameでないのか? ― 弱変化動詞台頭の背景
古英語動詞の人称変化
中英語動詞の人称変化
近代英語~現代英語における人称変化
まとめ

第5章│文字と綴りのルーツ
文字使用の始まり
文字の起源と発達
ラテン文字の起源
ゲルマン人のルーン文字
ルーン文字のその後
西ヨーロッパのキリスト教化とラテン文字の普及
古英語期の綴り
中英語期の綴り
印刷技術の導入、標準語の確立、大母音推移と英語の綴り字
発音の変化に由来する黙字
綴りの改変に由来する黙字
外国語の綴りの影響
/s/音を表す綴り
さまざまな綴りのルーツ
大文字、小文字の名称の由来
綴り字改革は必要か?
非民主的な言語としての英語と綴りの問題

あとがき
参考文献
索引

著者|author

唐澤一友(からさわ・かずとも)
1973年、東京生まれ。1997年、上智大学文学部英米文学科卒業。
2001年、オクスフォード大学(Campion Hall)留学。同年、日本中世英語英文学会松浪奨励賞佳作。
2002年、上智大学大学院文学研究科英米文学専攻博士後期課程満期退学。同年、横浜市立大学国際文化学部欧米文化学科専任講師。
2007年、日本英文学会第30回新人賞受賞。
2008年、博士(文学)(上智大学)。学位論文 “The Verse Menologium, the Prose Menologium, and Some Aspects of Computistical Education in Late Anglo-Saxon England – A New Edition.”
2009年、駒澤大学文学部英米文学科准教授。
2010年、福原英米文学研究助成基金 第18回福原賞(研究助成)受賞。
2011年より駒澤大学文学部英米文学科教授。著書に『アングロ・サクソン文学史:韻文編』、『アングロ・サクソン文学史:散文編』(東信堂)、『多民族の国イギリス―4つの切り口から英国史を知る』(春風社)、翻訳に『中英語ロマンス イポミドン伝』(専修大学出版局)、共著書に『アイスランドの言語、神話、歴史』(麻生出版)、『「ベーオウルフ」とその周辺―忍足欣四郎先生追悼論文集』(春風社)、Multiple Perspectives on English Philology and History of Linguistics (Peter Lang)、From Beowulf to Caxton: Studies in Medieval Languages and Literature, Texts and Manuscripts (Peter Lang)他がある。

 

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イギリス イメージ横断―表象と文学

イギリス イメージ横断

表象と文学

  • 要田圭治・田原光広・吉本和弘(編)/2011年8月
  • 3333円(本体)/四六判上製・284頁
  • 装丁:矢萩多聞

ヴィクトリア朝時代の弁護士アーサー・マンビーは,下層階級の女性労働者の写真を収集しつづけた。彼はそこに何を求めたのか…。
他に,ジョージ・オーウェル,ウィリアム・ブレイクなど,18世紀から20世紀までの多彩なイギリス文化・文学を取り上げ,その諸相に分け入る。
(ISBN 9784861102783)

目次|indexs

Ⅰ 文化論
第1章:アーサー・マンビーの写真コレクション―女性労働者の表象と脱階級のストラテジー〔吉本和弘〕
第2章:クリスマス・ママーズのポリティクス―トルコの騎士という表象〔潟山健一〕
第3章:描かれた女たち―フロイト的ナルシシズムと近代資本主義〔本田蘭子〕
Ⅱ 小説
第4章:ジェイン・オースティン―女性たちの「もう一つの選択肢」〔名原千絵〕
第5章:解剖学の怪物―『フランケンシュタイン』の身体と家族〔徳田加奈〕
第6章:『ダロウェイ夫人』の地下水脈〔伊東保〕
第7章:『ダロウェイ夫人』とトランセンデンタリズム〔土井悠子〕
第8章:『動物農場』と庶民の夢〔鷲野博文〕
Ⅲ 詩・戯曲・散文
第9章:輪郭とぼかしの間―ブレイクの『フランス革命』前夜〔中山文〕
第10章:ハーンの「焼津にて」に見る海体験と霊的世界の深淵〔横山純子〕
第11章:眠らないロミオが見た「夢」と「幻覚」に凝らされた意匠―バズ・ラーマンの映画William Shakespeare’s Romeo + Juliet(一九九六)考〔住田光子〕
あとがき〔要田圭治〕

編者|editors

要田圭治(かなめだ・けいじ)
広島大学
主な業績:
「一八三〇年代の小説―新しい警察、そして群衆の誕生」『ヴィクトリア朝小説と犯罪』西條隆雄編、音羽書房鶴見書店、2002年
『ヴィクトリア朝の生権力と都市』音羽書房鶴見書店、2009年
田原光広(たはら・みつひろ)
広島大学
主な業績:
「イギリスのナショナル・アイデンティティーとフランス革命―エドマンド・バークの『フランス革命の省察』を中心に」『地域文化研究』第29巻、2003年
「自国意識をめぐるバイロンの葛藤―The Island を中心に」『英詩評論』第26号、中国四国イギリス・ロマン派学会、2010年
吉本和弘(よしもと・かずひろ)
県立広島大学
主な業績:
「ジョウゼフ・コンラッド―『闇の奥』に交錯する二つの声」他二編『英文学の内なる外部―ポストコロニアリズムと文化の混交』山崎弘行編、松柏社、2003年
「成長しない少年と冒険物語の終焉―J・M・バリーの『ピーター・パン』について」姫路獨協大学外国語学部紀要第18号、2005年
「マザーグースと『アリス』―ノンセンスを生みだす音の構造」『英詩評論』第27号、2011年

 

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ヒトから人へ―“一人前”への民俗学

ヒトから人へ

“一人前”への民俗学

  • 佐野賢治(著)/2011年8月
  • 2381円(本体)/四六判並製・224頁
  • 装丁:長田年伸

ヒトが人になるためには幾つもの越えなければならない節目がある。そこに民俗の知恵が籠められている。産育儀礼に見るいのちの受け渡し。
(ISBN 9784861102813)
日本図書館協会選定図書
●「神奈川新聞」(10月9日)に紹介されました。

目次|indexs

人とは/子供はどこから/天菩薩/仮親/義理と人情/福子・福助/胞衣/まなざし/犬卒塔婆/嬰児籠/一姫二太郎/名付け/産屋/尻餅/七五三/チャンバラ/児やらい/隠れ鬼/こけし/子守唄/疱瘡神/山びこ学校/七つ前は神のうち/十三七つ/御行屋/ユースホステル/お年玉/十三参り/入れ墨/お歯黒/山の郵便配達/勉強/しつけ/勤工倹学/徴兵検査/若者たち/森の学校/新羅花郎/世代/東巴文字/おねしょ人形/山姥/ふるさと/暦/鰻の道/青年と学問/三丁目の夕日/人生の階段/人を育む農/人と家畜/人に成る/常民

著者|author

佐野賢治(さの・けんじ)
1950年寅年、静岡県生まれ。筑波大学大学院歴史人類学研究科修了後、愛知大学・筑波大学教員を経て、現在、神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科教授、日本常民文化研究所所長、国際常民文化研究機構運営委員長。編著書に『虚空蔵菩薩信仰の研究』、『星の信仰』、『現代民俗学入門』『西南中国納西族・彝族の民俗文化』など。比較民俗研究会を主宰するほか日本民具学会長、野外文化教育学会副会長などを務め、地域振興、野外文化教育活動の実践に取り組む。文学博士。

 

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釈譜詳節(下)

釈譜詳節(下)

  • 朝鮮世祖(纂述)/河瀬幸夫(訳)/2011年6月
  • 6500円(本体)/A5判・上製・414頁

韓国文学史上最高傑作とされる『釈譜詳節』は、一五世紀に発明されたばかりのハングルで記された韓国独自の釈迦伝である。全巻が残されておらず、同時期に著された『月印千江之曲』『月印釈譜』をも訳し、その全体像に迫る。
下巻では「忍辱太子」「須大拏太子」「善友太子」など、一五世紀にハングルに翻訳され韓国の人々を感動させた漢訳仏典中の物語を収録。
(ISBN 9784861102714)

上巻解題より

『釈譜詳節』『月印千江之曲』『月印釈譜』の三書に記録された仏教世界は単に一五世紀の朝鮮半島における仏教理解ということに限定されるものではな く、三国時代から高麗時代を経て朝鮮時代に伝えられた仏教の朝鮮半島における理解の全体像を総合的に示すものであり、その大部分は、一五世紀の東アジア全 域に共通する仏教理解であった可能性が高い。それを一二世紀の『今昔物語集』などと読み合わせることで、東アジアにおける仏教理解の共通性と多様性を知る ことができるようになるのではないかと考えられる。以上の事柄を確認する意味においても、この三書は一連のものとして通読できるような形にすることが必要 であろうと考えたのである。

目次│indexs

月印釈譜 第二十/月印千江之曲 第二十 釈譜詳節 第二十/月印釈譜 第二十一/月印千江之曲 第二十一 釈譜詳節 第二十一/月印釈譜 第二十二/月印千江之曲 第二十二 釈譜詳節 第二十二/月印釈譜 第二十三/月印千江之曲 第二十三 釈譜詳節 第二十三/釈譜詳節 第二十三/釈譜詳節 第廿三/釈譜詳節 第二十四・月印釈譜 第二十五/釈譜詳節 第廿四/月印千江之曲 第二十五 釈譜詳節 第二十五
付録
江田俊雄と東国大学 ―校友会誌『一光』の記載を中心に―/『釈譜詳節』各巻の内容(修正版)/『月印釈譜』各巻の内容(修正版)『釈譜詳節』関連年表

訳者│translator

河瀬幸夫(かわせ・ゆきお)
1945年、東京都大田区に生まれる。早稲田大学第二文学部と文学研究科で日本文学(上代文学)を専攻。1973年、横須賀学院高等学 校の国語教員となる。2003年に早期退職し、韓国ソウルの東国大学大学院仏教学科仏教史学科に入学し、2007年に博士課程修了。東国大学では日本にお ける高麗大蔵経の受容の歴史について学び、修士論文では江戸時代の僧忍澂の大蔵経対校に関してまとめる。2007年以降『釈譜詳節』の翻訳に専念。2010年に春風社より『釈譜詳節』(上)を刊行。

 

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邦訳「ガリヴァー旅行記」書誌目録

邦訳「ガリヴァー旅行記」書誌目録

  • 松菱多津男/2011年6月
  • 4600円(本体)/B5判・並製・184頁
  • 装丁:矢萩多聞

明治13年刊行の初邦訳本から平成22年刊行物まで、書籍、漫画、紙芝居、LPレコード、カセットテープ、ビデオテープ、DVDなど500点以上を網羅。出版形態の変遷がわかるカラー口絵8頁。人名索引付き。人間の奥深を描き、愛され続ける『ガリヴァー旅行記』出版の全貌がここに。
(ISBN 9784861102769)

第7回ゲスナー賞「目録・索引」部門の銀賞を受賞しました。

著者|author

松菱多津男(まつびし・たづお)
昭和4年島根県生まれ。
昭和20年4月、日本石油株式会社関西製油所入社。
昭和38年7月、開発化学工業株式会社 代表取締役。
昭和35年頃より『ガリヴァー旅行記』を収集しはじめる。

 

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河合榮治郎の社会思想体系―マルクス主義とファシズムを超えて

河合榮治郎の社会思想体系

マルクス主義とファシズムを超えて

  • 青木育志/2011年6月
  • 3800円(本体)/A5判・上製・370頁
  • 装丁:矢萩多聞

「思想というのは季節が変わって取り替えるような衣服とは違う」
戦前・戦中に左右両翼からの批判と攻撃を受けながらも,人格主義と理想主義にもとづく「第三期自由主義」を唱えつづけた思想家の再評価をうながす。
(ISBN 9784861102721)

目次│indexs

第1章 人格主義哲学の提唱
第1節 河合榮治郎と哲学
第2節 人格主義の提唱
第3節 哲学体系論の提唱
第2章 自由主義の研究
第1節 社会思想史の研究(Ⅰ)
第2節 社会思想史の研究(Ⅱ)
第3節 自由主義段階論
第4節 自由主義の理論
第5節 大学の自由・転落論争
第3章 「第三期自由主義」の提唱
第1節 社会政策学の研究
第2節 イギリス社会主義の研究
第3節 民主的社会主義の提唱
第4節 「第三期自由主義」の提唱
第5節 多元的国家論の研究と提唱
第4章 マルクス主義の批判
第1節 マルクス主義の研究
第2節 マルクス主義理論の批判―マルクス主義の内在的批判―
第3節 マルクス主義行動の批判―マルクス主義の外在的批判―
第4節 学生の左翼思想問題
第5節 日本自由主義論争
第5章 ファシズムの批判
第1節 ファシズムの分析
第2節 ファシズムの批判
第3節 五・一五事件の批判
第4節 二・二六事件の批判(Ⅰ)
第5節 二・二六事件の批判(Ⅱ)
第6節 大学の自治の擁護
第6章 国際時局の評論
第1節 河合榮治郎と戦争論
第2節 満洲事変の評論
第3節 日中戦争の評論
第4節 太平洋戦争の評論
第7章 河合思想の意義
第1節 河合思想の形式的意義(Ⅰ)
第2節 河合思想の形式的意義(Ⅱ)
第3節 河合思想の内容的意義

著者│author

青木育志(あおき・いくし)
青木育志(あおき・いくし)
1947年 大阪に生まれる
1971年 大阪市立大学法学部卒業
1971年 株式会社大丸に入社
1999年 亜細亜証券印刷株式会社(現株式会社プロネクサス)に入社
2009年 同社を退社
著書
『客観主義と主観主義―哲学の根本問題』(自費出版1989年)
『河合栄治郎文献目録』(河合栄治郎研究会1994年)
『自由主義とは何か―その政治的、経済的、哲学的原理』(新風舎2004年)
『弁論術の復興―欧米的議論術の修得と教育の必要性について』(青木嵩山堂2008年)
「新自由主義」をぶっ壊す』(春風社2010年)
主要論文
「新渡戸稲造と河合栄治郎」『新渡戸稲造研究』第5号(1996年9月発行)
「青木嵩山堂の出版活動」吉川登編『近代大阪の出版』(創元社2010年)
所属学会
イギリス理想主義研究会、河合栄治郎研究会、日本出版学会

著者サイト 「青木育志の書斎」

著者からのコメント│author’s comments

戦前の社会思想史学者、社会思想家、教養主義教育家の河合榮治郎(東京帝大経済学部教授、1891-1944)が今脚光を浴びつつある。大正デモクラシーの後、学界、思想界に入った河合はイギリス流の「第三期自由主義」を唱え、マルクス主義とファシズムに反対した。マルクス主義全盛期にマルクス主義を批判し、ファシズム全盛期にファシズムを批判した。それがために両勢力から批判された。

河合生前には河合思想は世に受け入れられなかったが、その後はどうなったであろうか。第二次世界大戦後はファシズムは姿を消し、二十世紀最後にはソ連・東欧の崩壊によって、マルクス主義も勢いを削がれることになった。そして二十一世紀初頭には自由主義の一分派でありリバータリアニズムも崩壊した。そして残るのは自由主義の主流たるヨーロッパの福祉国家、アメリカのリベラリズムであった。これは河合が唱えた「第三期自由主義」の現代版であった。永遠の歴史の観点からは、河合の先見性が際立つのである。

本書で河合の社会思想を読み解く角度としては七つを用意している。それは本書の構成にもなっていて、第1章「人格主義哲学の提唱」、第2章「自由主義の研究」、第3章「“第三期自由主義”の提唱」、第4章「マルクス主義の批判」、第5章「ファシズムの批判」、第6章「国際時局の評論」、第7章「河合思想の意義」がそれである。

その河合思想の特徴で本書が強調したことは次のとおりである。第一に、従来は河合の哲学的側面は重視されてこなかったが、本書ではその哲学的側面を重視する。河合思想の特徴は「哲学に裏づけられた思想」「体系的であること」である。河合は専門の哲学者ではないが、「独自の哲学体系」を持っており、それをもとに各領域の問題解決を唱えたのである。本書ではその思想体系を図解し、それを体系的に把握できるようにしている。日本に哲学者は多いが、哲学を自己のものとして思索した者は少ない。河合はその数少ない思想家である。

第二に、従来は「戦闘的自由主義」のみが強調されていたが、本書では「借り着でない思想」「主義に命を賭する」「信念の思想家」「知的勇気の持ち主」を強調する。それであるからこそ、二・二六事件を批判した唯一の知識人となりえたのである。その姿勢はラムゼー・マクドナルド、バートランド・ラッセルや大塩平八郎、吉田松陰などと相通じるところがある。

第三は、従来は自由主義の「三段階論」を唱えたことが強調されていたが、本書ではそれに関しては河合は二説を唱えていて、河合の真意からすれば「四段階説」が正しかったのではないか、と提示する。河合の自由主義段階論の解釈は修正を要する、とする。

第四は、従来は平常時の「自由主義」と戦争時の「戦争追従主義」の矛盾が指摘されていたが、本書においては「多元的国家論」の自然な解釈として、戦争時における国家への協力(「愛国主義」)が出てくる、とする。太平洋戦争時の河合の評論は愛国主義的なものとして再評価が必要である。

閉塞感が漂う今日の日本では、未来を切り開く新機軸の思想が今こそ必要である。河合榮治郎の思想はそれに応えてくれるであろう。

 

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犠牲と身代わり―記憶できないものをめぐって

犠牲と身代わり

記憶できないものをめぐって

  • 長田陽一/2011年6月
  • 2200円(本体)/四六判・上製・240頁
  • 装丁:矢萩多聞

思い出すことは記憶を喪失することである。死の代理不可能性をめぐるハイデガーとレヴィナスの議論,フロイトの原父殺害説,デリダによる反復と応答の可能性,アウシュヴィッツとパウル・ツェランの詩作などを補助線として,記憶を成り立たせている外部性(=記憶の他者)へと迫る。
(ISBN 9784861102752)

目次│indexs

はじめに
第1章 おののきにおける応答
1 死の代理不可能性
2 犠牲の法外さ
3 「私はここにいます」
4 おののきについて
5 世界の遠ざかり
第2章 物語の結び目
1 アイデンティティの複数化
2 出来事なき出来事
3 伝承と反復
4 コミュニカシオン
5 物語の秘密
第3章 証言の代替可能性
1 アウシュヴィッツの〈以後〉
2 証言の不可能性について
3 秘密の言葉
4 言語の純血(=純潔)という悪
5 薔薇の九月
第4章 《静けさ》の騒乱―パウル・ツェラン『山中の対話』に寄せて
1 口にできない名前
2 静けさの響き
3 レンツのように・・・
4 吃音としての語り
5 名前の割礼
第5章 燔祭/ホロコーストと原爆―応答可能性に関する試論
1 ホロコーストと表象の問い
2 世界の沈黙
3 燔祭としての原爆
4 ホロコーストのホロコースト
おわりに

著者|author

長田陽一(ながた・よういち)
1971年、長崎に生まれる。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(教育学)。
専攻は臨床心理学および精神分析。現在は京都光華女子大学人文学部心理学科准教授。
主要研究業績
「テクストと未知なるもの」『心理臨床学研究』第22巻,第6号,2005年
「他者の記憶―喪と幽霊をめぐる試論」(共著)京都光華女子大学人間関係学部人間関係学科編『ひと・社会・未来―ライフサイクルの人間科学』ナカニシヤ出版,2006年
「テクストと臨床経験」(共著)『新・臨床心理学入門』(『こころの科学』増刊)日本評論社,2006年
「(脱)遠隔化する身体―心理療法の応答可能性について」(共著)『身体の病と心理臨床―遺伝子の次元から考える』創元社,2009年

 

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ショートカットの女たち

ショートカットの女たち

  • パトリス・ルコント(著)/桑原隆行(訳)/2011年6月
  • 2000円(本体)/四六判・上製・270頁
  • 装丁:矢萩多聞

ぼくはトマ、いい奴。今から三年以内に花嫁を探す。条件は、ショートカットであること・・・。名匠ルコント監督が描く、映画のようなおかしな婚活小説! ルコント氏本人による「日本語版のためのまえがき」付き。
(ISBN 9784861102776)
日本図書館協会選定図書

著者|auteur

パトリス・ルコント(Patrice Leconte)
1947年、パリ生まれのフランスの映画監督。『タンデム』(87年)や『仕立屋の恋』(89年)で高い評価を受ける。主な作品に、『髪結いの亭主』(90年)、『イヴォンヌの香り』(94年)、『橋の上の娘』(98年)、『列車に乗った男』(2003年)、『ぼくの大切なともだち』(06年)等。本書『ショートカットの女たち』は彼のはじめての小説作品。

訳者|traducteur

桑原隆行(くわはら・りゅうこう)
福岡大学人文学部フランス語学科教授。

 

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こんにちはチェホフ!―三つの短編を訪ねる

こんにちはチェホフ!

三つの短編を訪ねる

  • 村手義治(編訳)/2011年6月
  • 2000円(本体)/四六判・上製クロス装・212頁
  • 装丁・装画:山本美智代

スノビズムに埋もれた青年、男の出世社会を蹴散らす若き人妻……。ユーモアとやさしい人間観察に富んだチェホフの『犬を連れた奥さん』『イオーヌィチ』『首に掛ったアンナ』を段落ごとに解説をまじえながら読みすすむ新しいスタイルの翻訳&作品論。
(ISBN 9784861102790)
日本図書館協会選定図書

編訳者│editor/translator

村手義治(むらて・よしはる)
早稲田大学文学部露文学専修卒業。元創価大学文学部ロシア語専攻教授。訳書に、ゴーゴリ『検察官』、ゴーリキー『私の大学』、レム『宇宙創世期ロボットの旅』、ギリャロフスキー『帝政末期のモスクワ』『わが放浪 わが出会い』などがある。

 

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〈写真集〉クジラ解体

〈写真集〉クジラ解体

  • 小関与四郎/2011年6月
  • 15000円(本体)/A4判上製美麗函入・208頁
  • 装丁・レイアウト:和田誠

出港を待つ漁師、巨体を切り崩す男たち、古式捕鯨の史跡、クジラ料理、浜で息絶えるクジラ…。クジラを食べ、クジラと共に生きる日本の人々。大好評を博した『九十九里浜』の写真家による迫真のドキュメンタリー!和田浦・九十九里浜(千葉)、太地(和歌山)、鮎川(宮城)で24年にわたり撮影。モノクロ写真121点。
(ISBN9784861102615)
日本図書館協会選定図書

推薦者|recommenders

安西水丸、池内紀、海老沢勝二、加藤郁乎、金子兜太、紀田順一郎、五味太郎、佐々木幹郎、佐野賢治、須藤健一、谷川健一、地井武男、中条省平、長谷川宏、道場六三郎、山本一力(五十音順・敬称略)

●刊行にあたりお寄せいただいた推薦文

●共同通信社の配信により,「信濃毎日新聞」「東奥日報」「愛媛新聞」「高知新聞」「熊本日日新聞」「新潟日報」「神奈川新聞」「産経新聞」に紹介されました。

●「読売新聞」(千葉版:7月21日)に紹介されました。

●「北國新聞」(7月13日)「東京新聞」(7月13日)「千葉日報」(8月23日)に紹介されました。

●「水産経済新聞」(7月27日)に紹介されました。

●「新文化」(8月4日号)に紹介されました。

●「読売新聞」(8月28日)に紹介されました。

●「東京新聞」(9月11日)に紹介されました。

●「週刊読書人」(9月16日号)に紹介されました。

著者|author

小関与四郎(こせき・よしろう)
1935年、千葉県匝瑳郡栄村川辺(現匝瑳市)の農家に生れる。1973年、『写真集 九十九里浜』(木耳社)で、日本写真協会新人賞受賞。
著書に『九十九里浜』(春風社)、『成田国際空港』(木耳社・絶版)、『九十九里有情』(東京新聞出版局、1993年)など。

 

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