終わりの風景―英語圏文学における終末表象

終わりの風景

英語圏文学における終末表象

  • 辻󠄀和彦・平塚博子・岸野英美(編)/2022年11月
  • 3100円(本体)/A5判並製240頁
  • 装丁:矢萩多聞

仮に何かが始まる、あるいは何かを新しく私たちが始めるとしても、その起点は「終わりの風景」からになるのではないか――

文学作品において描かれる環境問題、自然災害、社会変動などのさまざまな終末表象に着目し、ものごとの「終わり」を新たな可能性として捉え、読み解く10の論考。

(ISBN 9784861108235)

目次|contents

はじめに【辻󠄀和彦】
序章 リタ・ウォン作品にみる水の詩学―「借用された水」、「水の旅からの急報」、「グレゴワール湖のために」【岸野英美】
第1章 終末世界を救済するための小説のデザイン―カズオ・イシグロの内的持続の文学と『クララとお日さま』【田中ちはる】
第2章 コロナ禍の時代を生きる命と想像力―アリ・スミス『夏』における「終わりの風景」と希望の可能性【霜鳥慶邦】
第3章 家族の終わりとナクサライト―ジュンパ・ラヒリ『低地』とアルンダティ・ロイ『小さきものたちの神』をとおしてみる二つの「応答責任」【加瀬佳代子】
第4章 アジア系アメリカ文学における〈天災〉と〈人災〉―ヒサエ・ヤマモトとルース・オゼキの作品を中心に【松本ユキ】
第5章 「終わり」の見えない不安―イアン・マキューアンの『土曜日』試論【高橋路子】
第6章 ゾラ・ニール・ハーストンの『彼らの目は神を見ていた』における災害とレジリアンス→レジリエンス【平塚博子】
第7章 荒野の王が見た風景―シェイクスピア悲劇『リア王』における飢饉、大嵐、疫病【高橋実紗子】
第8章 〈終わりの風景〉の向こう側―インドラ・シンハの『アニマルズ・ピープル』とボパール、水俣、太平洋核実験【小杉世】
終章 災害と感染症時代の恐怖―エドガー・アラン・ポー作品を辿る【辻󠄀和彦】
終わりの風景の終わりに【辻󠄀和彦】

編者|editors

辻󠄀和彦(つじ・かずひこ) 近畿大学文芸学部教授
平塚博子(ひらつか・ひろこ) 日本大学生産工学部准教授
岸野英美(きしの・ひでみ) 近畿大学経営学部准教授

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果樹園の守り手

果樹園の守り手

  • コーマック・マッカーシー(著)、山口和彦(訳)/2022年9月
  • 2500円(本体)/四六判並製326頁
  • 装丁:斉藤啓

現代アメリカ文学を代表する作家のデビュー作初訳
権力や法の支配を避け、社会の末端で暴力に晒されながらも生きる者たちの姿を描き出す。
1930年代のテネシー州、アパラチア山脈南部を舞台とした、交差する三人の物語。

(ISBN 9784861108327)

目次|contents




訳者あとがき・解説

著者|author

コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)
1933年、ロードアイランド州プロヴィデンス生まれ。 現代アメリカ文学を代表する作家のひとり。代表作に『すべての美しい馬』『越境』『平原の町』から成る「国境三部作」、『ブラッド・メリディアン』、『ザ・ロード』、『チャイルド・オブ・ゴッド』(いずれも早川書房より黒原敏行訳で刊行)など。

訳者|translator

山口和彦(やまぐち・かずひこ)
上智大学文学部英文学科教授。 1971年山梨県生まれ。ペンシルヴァニア州立大学院博士課程修了(Ph. D.)。 著書に『コーマック・マッカーシー―錯綜する暴力と倫理』(三修社、2020年)、共編著に『揺れ動く〈保守〉―現代アメリカ文学と社会』(春風社、2018年)、『アメリカ文学入門』(三修社、2013年)、『アメリカン・ロマンスの系譜形成』(金星堂、2012年)など。

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戯作者の命脈―坂口安吾の文学精神

戯作者の命脈

坂口安吾の文学精神

  • 大原祐治(著)/2022年5月
  • 4000円(本体)/四六判上製392頁
  • 装丁:毛利一枝

無数/無名の「ラムネ氏」たちが「自らの生を尊びバトンを渡」す反復に歴史の実相を見る戯作者の魂。安吾もまた一人の「ラムネ氏」だ。

(ISBN 9784861108112)

目次|contents

序 章 作家・坂口安吾の登場
第1章 アテネ・フランセという磁場
第2章 長篇小説への野心
第3章 墓標としての物語
第4章 戦時下の「常人」として
第5章 歴史と自伝、あるいは歴史としての自伝
第6章 戦後社会と所有の政治学
第7章 古代史への旅
第8章 社会批評と(しての)文学
あとがき

著者|author

大原祐治(おおはら・ゆうじ)
1972年千葉県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程修了。博士(日本語日本文学)。学習院高等科教諭を経て、現在、千葉大学大学院人文科学研究院教授。専攻は日本近現代文学、出版文化論。著書『文学的記憶・一九四〇年前後――昭和期文学と戦争の記憶』(翰林書房、2006年)、編著『コレクション・モダン都市文化 第一〇〇巻 防空と空襲』(ゆまに書房、2014年)『「月刊にひがた」復刻版別冊解題・総目次・執筆者索引』(三人社、2016年)、共編著『「私」から考える文学史――私小説という視座』(勉誠出版、2018年)『占領期 地方総合文芸雑誌事典』(金沢文圃閣、2022年)など。

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〈線〉で読むディケンズ―速記術と想像力

〈線〉で読むディケンズ

速記術と想像力

  • 松本靖彦(著)/2021年5月
  • 3600円(本体)/四六判上製300頁
  • 装丁:矢萩多聞

賑やかな作品世界を生み出したディケンズ。その人物造形の秘密は、若き日に身につけた速記術にあった?!
『骨董屋』『クリスマス・キャロル』『大いなる遺産』などの作品を、〈線〉にまつわる問題に着目して読み直し、「自己と他者」「生と死」「子どもと大人」などの境界線をめぐる想像力の働きを明らかにする。

(ISBN 9784861107474)

目次|contents

序章
第一部:ディケンズの速記と想像力
第一章:ディケンズの速記と人物造形
第二章:ディケンズとホガースの速記術
第二部:境界線をめぐるドラマ
第三章:大人と子どもの境界線―大人の中に子どもはいるのか
第四章:自他を隔てる境界線 (一)『大いなる遺産』―ピップは自分の人生の主人公になれるのか
第五章:自他を隔てる境界線 (二)『ドンビー父子』―フローレンス・ドンビーは父親の宝となれるのか
第三部:境目の想像力
第六章:生きているのか死んでいるのか―見世物小屋としての『骨董屋』と人形の死に様
第七章:いずれは死なねばならぬから―ディケンズの『骨董屋』『互いの友』とフロイトの『快原理の彼岸』
終章:結論―越境するディケンズ(の想像力)

著者|author

松本靖彦(まつもと・やすひこ)
東京理科大学理工学部〔教養〕教授。専門分野は19世紀英米小説、ヴィクトリア朝文化、剣戟映画。

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書きかえる女たち―初期近代英国の女性による聖書および古典の援用

書きかえる女たち

初期近代英国の女性による聖書および古典の援用

  • 竹山友子(著)/2022年3月
  • 3900円(本体)/四六判上製346頁
  • 装丁:長田年伸

聖書や古典作品などの権威ある書物を巧みに書きかえ、キリスト教にもとづく男女の規範に挑んだ女性たちの執筆活動を明らかにする。メアリー・シドニー、エミリア・ラニヤー、アフラ・ベーンらの訳詩選も収録。

(ISBN 9784861107801)

目次|contents

第一章 初期近代英国の女性と書き物
第二章 メアリー・シドニー訳『ダビデの詩編』における罪と女性―第五八編と第八二編の考察より
第三章 メアリー・シドニー訳『ダビデの詩編』からの「子宮」の消滅
第四章 罪なきイヴの救済―エミリア・ラニヤーにおける女性擁護の言説とその源泉
第五章 ペンによるジェンダー革命―エミリア・ラニヤーの詩集に見られるメアリー・シドニー訳『ダビデの詩編』の影響
第六章 斬首の王妃マリアムの救済―エリザベス・ケアリー作『マリアムの悲劇』に表出される新ストア主義思想
第七章 太陽に挑む‘Youth’と太陽を超越する‘Lady’―ジョン・ダンとキャサリン・フィリップスの詩における太陽の表象
第八章 性別を与えられた樹木とその背景―ラニヤー、カウリー、キャヴェンディッシュの選択
第九章 樹木を介した欲望の表出と変身願望―ロバート・ヘリックとアフラ・ベーン
終章 パラテクストから見る「書きかえる女たち」の知恵
訳詩選

著者|author

竹山友子(たけやま・ともこ)
1967年生まれ。関西学院大学文学部教授。専門は初期近代イギリス詩。広島大学大学院文学研究科博士課程前期、サセックス大学大学院修士課程、広島大学大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。主な著書・論文:「罪なきイヴの救済―エミリア・ラニヤーにおける女性擁護の言説とその源泉―」『英文学研究』84巻(2007)、“Eliminating Womb in the Countess of Pembroke’s Psalmes” Notes and Queries 63巻3号(2016)、『十七世紀英文学における生と死』(共著・金星堂・2019)など。

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もうひとつの風景 フアン・ルルフォの創作と技法

もうひとつの風景 フアン・ルルフォの創作と技法

  • 仁平ふくみ(著)/2022年3月
  • 4500円(本体)/A5判上製432頁
  • 装丁:中本那由子

誰も意識したことのない世界を、文学において立ち上げる――
「メキシコの寂れた農村を複雑でユニークな仕方で描いた作家」として文学史に名を残したフアン・ルルフォ。現実の土地にまつわる声と記録を重ね合わせて物語を紡ぎ出した彼の創作法の鍵を、「権力」「場所の表象」「出来事のフィクション化」「語りの技法」という切り口で読み解く。

本書の「はじめに」を公開しています。

(ISBN 9784861107849)

目次|contents

はじめに

序章
1.作品と生涯
2.批評・先行研究
3.日本での受容
4.語りと場所
5.本書の構成

第Ⅰ部 権力とラテンアメリカ小説
第1章 記録とルルフォの創作
1.年代記に関するテクスト
2.空間的・時間的よそもの
3.文学としての記録、記録としての文学
4.史料収集と国立先住民庁(INI)での活動
5.記録する行為と権力

第2章 国民的作家の創造
1.『燃える平原』の文壇での位置づけ
2.「我々」を描いた作品
3.「メキシコらしさ」によって世界へ
4.攻撃と擁護
5.ルルフォと比較された作家アレオラ

第3章 『ペドロ・パラモ』における声の力
1.暴力による書類の無効化
2.権力と声
3.権力のほころびを示す三人の登場人物

第Ⅱ部 場所・記録・創作
第4章 初期の紀行文
1.雑誌『地図』
2.「メツティトラン」:文学的操作の片鱗
3.「カスティージョ・デ・テアヨ」:紀行文か、創作か

第5章 都市の孤独
1.初期作品「夜のかけら」
2.メキシコシティと創作
3.娼婦からなにものでもない者へ
4.語りの洗練

第6章 村を描くという挑戦――『嵐がやってくる』と『ペドロ・パラモ』
1.ハリスコ州出身の作家たち
2.新しい題材としての田舎
3.共同体の声を描く試み
4.変容する価値観
5.象徴としての鐘の音
6.変化の予兆

第7章 物語を内包する場所
1.実在の場所から架空の場所へ
2.場所にイメージを還す
3.小説『山脈』の構想
4.個々の場所から世界とつながる

第Ⅲ部 出来事をフィクション化するための試み
第8章 革命を書く――短篇「燃える平原」
1.登場人物の造形
2.耳で聞く風景、目で見る風景
3.削除された箇所
4.一兵士の視点からの革命

第9章 自伝的要素とフィクション
1.父親の死のフィクション化
2.「殺さないよう言ってくれ!」:事件との相違
3.逃亡者というオブセッション

第10章 作品の構造とモチーフ
1.境界としての空間の創造
2.『ペドロ・パラモ』における糸のモチーフ
3.ありえたはずの時間と赤ん坊
4.左右非対称な身体と時間

第Ⅳ部 語りを用いた手法の確立
第11章 主観と場所
1.さまよう人々
2.移動のプロセスと登場人物の関係
3.風景と主観の同調
4.思い出の中の場所
5.「ルビーナ」:感覚で場所を描写する
6.音の描写と断片化:場所と時間を描くための手法

第12章 声の操作
1.記述のための「話しことば」の創造
2.「アナクレト・モローネス」:声の持ち主の力の喪失
3.『ペドロ・パラモ』:三人称の罠
4.「その男」:対立するものの融和

おわりに


あとがき
参考文献
索引

著者|author

仁平ふくみ(にひら・ふくみ)
京都産業大学外国語学部准教授。文学博士(東京大学)。
専門はスペイン語圏文学。
主な著作に、 “Visions of Place: Yeats, Rulfo and the Noh Play” (Rethinking Juan Rulfo’s Creative World, (eds.) Nuala Finnegan and Dylan Brennan, Legenda, 2016) 、“Lo fantástico en ‘Música concreta’, de Amparo Dávila” (Entre lo insólito y lo extraño, (ed.) Alejandra Giovanna Amatto Cuña, UNAM, 2019) 、「メキシコ北部に生まれる幻想――エドゥアルド・アントニオ・パラの三短篇」(『Hispánica』63号、2020年)、「瓦礫と音楽とアルコール――ダビー・トスカーナ『消え失せた町』」(『れにくさ』10号2020年)、“Voz, historia y lugar: una comparación de los textos de Rulfo y el teatro japonés noh” (La contemporaneidad de Rulfo, (eds.) Vittoria Borsò y Friedhelm Schmidt-Welle, Iberoamericana-Vervuert, 2021)など。

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フォークナーの『サンクチュアリ』再読/改稿―語り手の再編成

フォークナーの『サンクチュアリ』再読/改稿リヴィジョン

語り手の再編成モンタージュ

  • 岡田大樹(著)/2022年3月
  • 3500円(本体)/四六判上製254頁
  • 装丁:長田年伸

問題作『サンクチュアリ』は、鋏と糊によるゲラの切り貼りによって誕生した。初稿と出版稿のテクスト配置順序を比較検討することにより、作家が初稿の語り手と格闘し、新たな語り手のかたちを模索した痕跡をたどる。
再創造の瞬間へ

(ISBN 9784861107795)

目次|contents

序章 改稿に伴う偶然性と編集性
第1章 再帰的な語りの解体―再配置以前の作品冒頭部
第2章 並置的な語りの構築―テンプルの挿話の再配置
第3章 ホレスの経験の変貌―出来事の時系列の再配置
第4章 ホレスの観察の棄却―登場人物の呼称と再配置
第5章 遡及的記述の尾骶骨―成就しない予示と再配置
終章 再読に伴う断片化と未完化
補章1 時系列の指標の加筆
補章2 サートリス家の変貌
補章3 ふたりの母親の変貌

著者|author

岡田大樹(おかだ・ひろき)
1991年、神奈川県生まれ。2018年、専修大学大学院文学研究科博士後期課程を修了。2022年3月まで同大文学部助教、2022年4月から同大ほか非常勤講師。英米ゴシック小説の周辺を中心に活動中。主な論文に「「グロテスク」から「捻じれた林檎」へ―Winesburg, Ohioの中心概念の変化」『文研論集』56号(2017年)。

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ビュッシイ・ダンボア

ビュッシイ・ダンボア

  • ジョージ・チャップマン(作)、川井万里子(訳)/2022年3月
  • 3100円(本体)/四六判上製320頁
  • 装丁:中島衣美

シェイクスピアのライヴァル劇詩人の最高傑作
十六世紀フランス・ヴァロア王朝末期、爛熟、頽廃、閉塞のアンリ三世の宮廷に実在した美貌の剣士、ビュッシイ・ダンボアの愛と死の悲劇に、宇宙における人間の地位とその運命の行方を問う。

「美徳によって宮廷で出世したい」というビュッシイの高邁な志を裏切るモンシュリ伯爵夫人タミラとの密通。宮廷一の貞淑な月処女神と謳われる清らかな表情にふと蠱惑的な微笑を浮かべるタミラ。
王弟の内奥にわだかまる王位簒奪の野望、妻タミラの背信に「嫉妬の溶鉱炉」を開け放つモンシュリ伯の狂気。敬虔な告解僧でありながら女衒でもある怪僧コモレット。
理性と情熱の狂気、貞淑と淫蕩、忠誠と背信、高貴と卑俗。
「自分の敵を自分の腕の中にひしと抱きしめている」近代人の矛盾心理の表出が、現代の不条理演劇を先取りする。

(ISBN 9784861107771)

目次|contents

はじめに―シェイクスピアの好敵手劇詩人チャップマンの最高傑作『ビュッシイ・ダンボア』について

悲劇『ビュッシイ・ダンボア』

ヒッチンの丘の家―チャップマンの生家を訪ねて

G.チャップマンの『ビュッシイ・ダンボア』―緑陰から地下世界へ

あとがき

主要参考文献

訳者|translator

川井万里子(かわい・まりこ) 
一九三八年生。東京女子大学英文科卒、東京都立大学大学院英文科修士課程修了。現在東京経済大学名誉教授。
主な著作に、『「空間」のエリザベス朝演劇―劇作家たちの初期近代』(九州大学出版会、二〇一三)、『トロイア戦争の三人の英雄たち―アキレウスとアイアスとオデッセウス』(春風社、二〇一八)、『十七世紀英文学を歴史的に読む』(十七世紀英文学研究会編、金星堂、二〇一五)、『甦るシェイクスピア―没後四〇〇周年記念論集』(日本シェイクスピア協会編、研究社、二〇一六)、「盛期英国ルネサンス・牧歌文学の最高峰―サー・フィリップ・シドニー『アーケイディア』について」(『ペディラヴィウム』七六、二〇二一)。
主な訳書に、ジョージ・チャップマン『みんな愚か者』(成美堂、一九九三)、『フェヴァシャムのアーデン』(成美堂、二〇〇四)、サー・フィリップ・シドニー『アーケイディア』(九州大学出版会、一九九九、共訳)、カール・J.ヘルトゲン『英国におけるエンブレムの伝統―ルネサンスの視覚文化の一面』(慶應義塾大学出版会、二〇〇五、共訳)、キャサリン・ダンカン・ジョーンズ『廷臣詩人サー・フィリップ・シドニー』(九州大学出版会、二〇一〇、共訳)、サー・フィリップ・シドニー『アーケイディア[新装版]』(九州大学出版会、二〇二一、共訳)。

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ジャコモ・レオパルディ―ロマン主義的自然観と〈無限〉の詩学

ジャコモ・レオパルディ

ロマン主義的自然観と〈無限〉の詩学

  • 古田耕史(著)/2022年3月
  • 6000円(本体)/A5判上製358頁
  • 装丁:毛利一枝

近代イタリア最大の抒情詩人とされるジャコモ・レオパルディ(1798-1837)の、日本で2冊目となる本格的研究書。詩集『カンティ』を中心に、表現内容ならびに語彙・文体・音声などの側面から詩を丹念に読み解き、散文作品『オペレッテ・モラーリ』『省察集』などとの比較検討を通じて、その詩想と詩作法の本質に迫る。またペシミズムの哲学者として、ショーペンハウアーやニーチェ、夏目漱石らに深い影響を与えたレオパルディの、世界観と思想の本源を明らかにする。

(ISBN 9784861108013)

目次|contents

緒言
第1部 詩と自然
序章

第1章 詩的霊感――レオパルディの詩論と詩作の方法

1. 初期の古典主義
2. 詩論の変化
3. 一瞥と熱狂の神性
4. 詩的霊感の条件
結論

第2章 レオパルディのロマン主義的自然観――スタール夫人との関係を中心に

1. ロマン主義の新しい自然観―生きた有機体としての自然
2. ドイツ思想とレオパルディの自然認識
3. スタール夫人の著作との出会い
4. レオパルディとスタール夫人の自然哲学
5. 反分析、反解剖
6. 自然と詩人
7. 自然の2つの相貌
結論

第3章 レオパルディにおける2つの〈自然〉

1. ペシミズムの拡大
2. 善としての自然観
3. 人間の運命と摂理的な自然
4. 悪としての自然観(『省察集』)
5. 悪としての自然(詩作品)
6. 自然にたいする2つの視点
7. 自死をめぐって
8. アーリマン
結論

第4章 詩論と自然観の平行性

1. “ロマン主義論争”への参加
2. 想定される論敵
3. 詩論の修正と自然観
4. 後期の詩論と詩作
結論

第2部 〈無限〉の詩学
序章

第1章 無限
1. 《無限》
1. 1. テクストの読解
1. 2. «vago e indefinito» ――漠としたものへの志向
2. 「無限」の標示
3. 「無限」に関わる諸概念
3. 1. 遠さ
3. 2. 夜
3. 3. 死
3. 4. 幸福
3. 5. 愛
3. 6. 無
4. 想像世界への越境
4. 1. «vo comparando» ―境界の消失
4. 2. 無感覚状態、エクスタシスの快楽
5. 音と聴覚
5. 1. 詩における聴覚の重要性
5. 2. 音楽と天上の観照
6. 二重の世界―《無限》の意味
結論

第2章 追憶
1. 《シルヴィアに》と過去の哀惜
2. 二世界説と想起説
3. 経験と記憶
4. 追憶と詩作
5. 追憶・夢と詩的霊感
結論

第3章 回帰と永遠
1. 双子のような詩
2. 《嵐の後の静けさ》の言語・文体
3. 《村の土曜日》の言語・文体
4. 追憶・回帰・永遠
5. レオパルディの詩とニーチェの〈永遠回帰〉
結論 追憶と生への意志

第4章 死
1. 死の瞑想
2. 死の永遠性と無限性
3. 死者の視点からの「死」
4. 「擬似的な」死
結論

第5章 愛
1. 「真の生」と愛
2. 《支配的思考》
3. 愛の永遠性と無限性
4. 愛の作用とその唯一性
結論 愛か死か

結語 詩と生の意義

補遺:Il sognoを読む
はじめに
1. 眠り
2. 夢
3. 「夢」の詩作
4. 《夢》における諸テーマ
5. 生と死のコントラスト
おわりに

あとがき
文献案内

著者|author

古田耕史(ふるた・やすし)
愛知県名古屋市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。イタリア政府奨学生としてパドヴァ大学に留学。専門はイタリア文学、比較文学。現在、早稲田大学グローバルエデュケーションセンター准教授。

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森鴎外、創造への道程

森鷗外、創造への道程みち

  • 小倉斉(著)/2022年1月
  • 5364円(本体)/四六判上製528頁
  • 装丁:毛利一枝

創造の現在へ
多種多様な人物との出会いから生まれた交響、共鳴、あるいは摩擦が、やがて鴎外の豊かな創造への道程みちを切り開くことになる。

(ISBN 9784861107894)

目次|contents

凡例
一 愕堂・魯庵・紅葉と鷗外の交響――鷗外宛書簡に見る出会いのドラマ
二 文学者鷗外の出発
三 鷗外、初期文学評論活動の一側面
四 「文学と自然」論争における鷗外――「「文学ト自然」ヲ読ム」の残した課題
五 「明治二十二年批評家の詩眼」における鷗外と忍月
六 鷗外・逍遙対立の淵源
七 鷗外と廃娼問題
八 森鷗外と久米桂一郎――学問と芸術の交響
九 森鷗外初期の文体意識
十 「舞姫」における文語文体再生の背景
十一 〈合評〉という名のドラマ――「三人冗語」「雲中語」の鷗外
十二 小倉時代、鷗外の一面
十三 明治文学における〈浦島説話〉の再生――露伴、鷗外、逍遙を中心に
十四 明治四十二年、鷗外の一面――小説の方法への模索
十五 金井湛の〈詞〉意識――「ヰタ・セクスアリス」論のために
十六 「青年」論――構造上の破綻をめぐって
十七 「高瀬舟」を読む――庄兵衛の眼差しが捉えたもの
十八 翻刻「護持院原の敵討」森鷗外自筆原稿

原題・初出一覧
あとがき
索引

著者|author

小倉斉(おぐら・ひとし)
日本文学研究者。愛知淑徳大学文学部国文学科教授。1951年岐阜県生まれ。1977年3月早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に、高柴慎治との共訳書『夜窓鬼談』(春風社、2003年)、酒井敏・林正子・増田裕希との共編著『森鷗外書簡集3〈う-お〉編』(文京区立森鷗外記念館、2021年)等があり、論文に、「『夜窓鬼談』物語世界」(『新日本古典文学大系明治編3・漢文小説集』「月報」、2005年8月)、「澁澤龍彥、没後二〇年目の再生」(『日本近代文学』78集2008年5月)、「世界が眠ると言葉が眼を覚ます―詩人・寺山修司の〈言葉〉」(『愛知淑徳大学大学院文化創造研究科紀要』1、2014年3月)、「龍膽寺雄の挑戦―「放浪時代」を中心に―」(『愛知淑徳大学大学院文化創造研究科紀要』8、2021年3月)、「『高丘親王航海記』を読む―澁澤龍彥の最後の旅を追って―」(『愛知淑徳大学論集―文学部篇―』第46号別冊、2021年3月)等がある。

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